ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
振り下ろされる巨大な雷の槌。
それが目前に迫ってくる!
「うぉおああアアァァァッ?!!」
俺はとっさに変な叫び声になりながらも、全力でその場から離脱した。
【ダーク・ガジェット】の身体強化、あれのおかげで反射速度と脚力もある程度強化されている。
流石にトールの“ライトニング・スティング”並の速度は出せないが、それでも十分な速度で踏み込みを行うことが出来た。
俺の元いた場所から数十メートル離れた位置に移動する。
ドゴオオォォォォオンッ!! バリバリバリッ!!! と、巨大な衝撃と放電の音があたりに響く。
「あ、危なかった……今のクリーンヒットしてたら流石にヤバかったぞ……」
俺は冷や汗を掻きながら、今し方トールが発動した切り札に思考を回していた。
巨大な雷の槌による一撃必殺技……まだこんな技を持っていたなんて。
あの攻撃のサイズ、ビル5階建相当はあるぞ!? 並のヒーローでも滅多に出せないサイズじゃねーか!?
直撃したら流石に俺でも立ってられるか分からねーぞ!?
「けど、今のを避けられたのは大きい! ここからなんとか……」
初見を回避出来たおかげで、技の特徴を掴むことが出来た。
しかも、相手は大技を使った直後。相応の隙が出来てる筈。反撃するなら今。
そう思って、行動を起こそうと──“あれ、なんかハンマー持ち上がってない?”
“というかトール、飛び上がってない?”
「ハアアアアアアアァァァッ!!!!」
「はああああああああああッ??!!」
掛け声と驚愕。両者の大声が響き渡る中で、トールの雷の槌が再度振り下ろされた!!
しまった!? トールのやつ、片足でもジャンプ位は出来るのか!?
というかおい待て!? それ単発型の必殺技じゃねーのかよ!? そのサイズで常時展開型!?
驚きながらも、俺は全力で横に回避。再度躱したと思ったら……
「逃す、かぁあああああッ!!!」
「おわああああああああッ?!!」
今度は、そのハンマーを横なぎに振るって来やがった!?
全力のバックステップで、なんとか回避する!!
そのサイズで、それほどの振り上げ速度!? なんつー取り回しの良さだよ!?
やべえ、このままじゃいつかクリーンヒットする!?
「この、止まれ!! “セレクト・エッジィッ!!”」
俺は全力の“セレクト・エッジ”を、その雷の槌に対して放った。
雷で出来てると言えど、ある程度物理的な判定はある筈。
さっき振り下ろした時、当たった地面に巨大な凹みが出来たのがその証拠。
つまり、物理的接触判定が起こってる筈だから、斬り落とす事も可能な筈……!!
その思考で放った斬撃の衝撃波は、雷の槌の頭部分に直撃──“切断した”。
「よっしゃ!! 斬り落とせ……ッ?!!」
「無駄です!!」
が、“直ぐにくっついた”。
切り離した部分が、また再度くっつき、何事もなかったかのように戻った。
いや、あれはくっついたというより、再構築か……!?
「やべえ、思った以上に厄介かもしれねえ……!?」
俺はトールのハンマー、ミョルニルと言っていたそれに対して追加で考察する。
あのハンマー、全体が雷で出来ているからおそらく物理的な質量が殆ど無い。
トールが簡単に振り回している事が出来るのも、それが理由だろう。
しかも、斬り落としても直ぐに再構築するのは、おそらく常時電力の供給を行ってるから。
常に瞬間瞬間ハンマーの形状構築を行っているから、欠けたとしても直ぐに元どおりになる。
それに伴い、ある程度形状変化も出来そうだ。所詮雷だからな、決まった実体がない。じゃなきゃ、横なぎをした時に、地面に大きく接触して止まる筈だ。
技の威力はまだ当たってないから想像でしかないが、俺が喰らって立ち上がれるかどうかは不明な程度はありそうだ。地面普通に抉れてる上に電気で焦げてるし。
そんなハンマーが、常時展開で気軽にブン回されて来る……やべえ、“取り回しの良さと威力の両立が半端じゃねえ”。
流石ヒーロー連合の隠し組織を自称するだけあるな……! ランキング外の特殊戦隊、カイザーが言っていただけはある。
さて、どうする。どうやって勝てばいい。
いや、“セレクト・エッジ”が一発はトールに直撃してるんだ。二発目を直撃させれば流石に戦闘不能になる筈。これくらいは相手の様子と俺のこれまでの戦闘経験の“勘”で分かる。
巨大なハンマーに目を取られすぎるな。あくまで生身のトールを倒せば勝ちだ。
相手の片足は封じてる。距離を取って、“セレクト・エッジ”を連発するだけで勝てる。
冷静に、対処を。そう思って、更に距離を取ろうとバックステップをして──
目の前に、雷の槌が迫る。────は?
「“ライトニング・スティングゥ──ッ!!”」
遅れて、その叫び声が聞こえて来た。
お前、まさか片足で──ッ!?
「ぐ、が、ツゥゥウッ!!」
高速で、通り過ぎる雷の槌。
直撃は、回避出来た。
が、左腕が避けきれなかった。
ほんの端っこ、ハンマーの端に掠っただけで、左腕がマヒしている。
この状態じゃ、握力のほとんどは期待出来ないだろう。
トールのやつ、雷の槌を展開したまま“ライトニング・スティング”を発動して来やがった……!!
さっき俺は、トールの戦闘構成は“ライトニング・スティング”を中心に構築していると言ったけど……まさか、“ミョルニル”もそうだってのか!?
確かに、あの見た目より遥かに取り回しのいいハンマーならそれが実現出来る!!
“あの高速移動で、巨大な雷の槌を振るいまくる!!” それこそがトールの本当の戦闘方法!?
いや、でも今だと……?!
直後、ズゴオオオオオオンッ!! と、何かがぶつかる音。
雷の槌がぶつかった……いや、“トールが採石場の壁にぶつかった音!?”
「が、は……っ、ぐ、うううぅうううううッ!!」
トールが壁にぶつかり、潰れたカエルのような悲鳴を上げていた。
“ミョルニル”が、今のダメージで解除されたらしい。雷が霧散して元のレイピアに戻っている。
彼女は呻き声を上げながらも、なんとか立ち上がろうとしていた。
「お前、片足使えないのにあの突進技を……!? それじゃあブレーキが出来ねえ、止まるのがただの衝突事故じゃねーか!?」
確かに、“ライトニング・スティング”の性質上、片足でも移動だけなら出来る。
けど、ブレーキ用に踏み出す足はどうしてももう片方の足に依存する。
片方の足が使えない以上、ブレーキ一切無しの暴走トラック……いや、レーシングカー状態。
雷に見違う速度の移動で壁にぶつかったら、自傷ダメージが半端じゃない筈だ!?
「そ、れ、でも……! あなたを倒すには、必要な技だった……!! 現に、少しだけでもようやく当たったでしょう……?」
「っ、なんでそこまで……そこまでして俺を殺したいのか!? 何故俺にそこまで殺意を向ける!?」
俺は疑問に思った事をそのままトールにぶつける。
この殺意は異常だ。
俺が言うのもなんだが、今の俺はただ人気の無い場所で技の試し打ちをしていた完全初見のヴィラン。
技の威力に脅威を持つのは理解出来るが、まだ大きな悪事を働いたわけでは無い相手に対して、そこまで殺意を出せられるものなのか……!?
そう思うと、トールに一部否定される。
「別に、あなたに限った話では、ありません……っ、“ヴィランは全て殺す”。それが私の、信条です……っ」
息も絶え絶えながら、トールははっきりとそう言った。
「っ、何故そこまでしてヴィランを憎む!! たまたま見つけた相手にまで……お前に何があった!!」
「“私の両親は、ヴィランに殺されたッ!!”」
俺の問いかけに。
トールはシンプルに、そう答えた。
「────。────」
「……私の家庭は、ただの一般家庭だった。ただ普通に暮らしていて、ただ毎日穏やかに過ごしていただけだった……」
トールは、レイピアを杖代わりに支えにしながら、ポツリポツリと話しだす。
「悪い事なんて、何もしていない。ただの普通の家族。それなのに……それなのに、壊された。ヴィランの手で」
「…………」
「貴様に想像出来るか? ただ道を歩いていただけで────“胴体を切り落とされ、全身の血を奪われて行った両親の姿がッ!!”」
「────っ!?」
それは、悲痛な叫びだった。それは、憤怒の大声だった。それは、無力の嘆きだった。
彼女の言葉には、その全てが含まれていた。
両親が、殺された。それは、あるいはありふれた悲劇の一つでしか無いとも言えるだろう。
けれど、彼女に取っては。当事者にとっては。それは間違いなく、深い悲劇なのだ。
「……私の両親だけでは無かった。あの場、あの場所にいた道ゆく人たち……その全てが、一閃によって斬り捨てられた。当時、子供だった……私のような小さな子供は、たまたま身長の差で、生き残っただけ……」
片腕を、だらりと力なく垂らしながら、トールはそう話す。
顔を俯かせ、当時の無念を振り返るように。
「……パパとママとの最後の言葉が、“逃げろ”だった。……私は、恐怖に怯えながら、その場から逃げた。逃げ出した……戻って来たときには、二人は既に事きれていた」
「…………」
「孤児になった私は、そのまま孤児院で暮らしていました。……そんな時でした。この【トール・ガジェット】の適性が見つかったのは」
そう言って、トールはレイピアを見えるように見せてくる。
ダメージを受けている中、ギュッとしっかり握り締めた手で。
「それからです。私がヴィランを倒すようになったのは。私と同じ存在を作らないように戦い始めたのは。……それでも、最初の頃は命を奪う覚悟が無かった」
トールは息を吸って、深い深呼吸をした。これから話す言葉を落ち着かせるように。
「……未熟者だった頃、あなたのような人に出会いました。“まだ悪い事をしていない、見逃してくれ”、と言ってきた人を。愚かな私は、その時は見逃しました。────“結果、罪のない一般人の命がソイツの手によって奪われました”」
「…………っ」
「この事は、一度や二度じゃありませんでした。この人こそは違う、今度こそ……そんな期待は、その度に裏切られました。どうやら、私はよくそんな人に出遭いやすいみたいです。“私は、多くの人を見殺しにしてしまったのです”。……その時、悟りました。“ヴィランに良いも悪いも無いと”。そんなものを名乗るものに、ロクな物はいないと」
そうして、トールは顔を上げた。
自分の誓いを、叫ぶように。
「私は、ヴィランの存在を絶対に許さない……!! 両親を奪ったあいつらも!! 罪の無い一般人を殺しまくった奴らも!! 私のせいで死んでしまった、無辜の人達の為にも!!」
直後、トールはレイピアの先を向けて来た。
俺に向けて、宣言するように。
「あなた、先程言ってましたね。法律がどうたらとか。──そんな物、知った事かッ!! 法の為に見逃して、無辜の一般人が死んでいくのを見逃せとでも!? 出来るわけないでしょう!!」
それは、トールの誓いだった。
トールの決意だった。
「私はヴィランという存在を、絶対許さない!! 一人残らず!! 全てを葬り去る!! 出なければ、何もかも奪われる!!」
「“例え法が! ──例え神が、許したとしてもッ!! 私が許さないッ!!”」
「────────」
「トール、あなたは……」
「街中でのそのような目立つ暴挙……まさか、旧世代被害者か?」
──ああ。これは、確かに許せなくなるか。
トールは叫んだせいか、荒い息を吐いて呼吸を整えている。
ゼー、ハー、と暫くして、ようやく頭が冷えて来たのか、改めて声を掛けて来た。
「……どうせ、納得出来ないと言うのでしょう? 別にいいです。あなたに理解されるなど思っていませんから。あなたはここで……」
「──いや。納得出来る理由だったけどな」
「──え」
俺の言葉が予想外だったのか、トールがそう聞き返してくる。
そう俺はトールの言葉に納得していた。
彼女が両親を奪われた復讐、並びに見逃した悪人による被害の罪悪感。
特に後者の方が、今回の俺の状況に根深いな。
それなら、俺を殺そうとするのも納得か。
「あんたがヴィランを憎む理由は、十分過ぎると思う。そして、見つけたヴィランを見逃さない理由も。あんた、よっぽど運が無いらしいな。そんなやつばっかり会うなんて。それじゃあ、俺を警戒するのも納得だ」
「な、何をそんな急に物わかりが良いように……そんな私を肯定するような事を言っても、あなたに容赦するわけではありませんから!! 似た状況など以前にもあったのです! 同じ轍は踏みません!!」
「ああ、それで良いと思うよ。あんたは」
そう、彼女の言い分は、“俺は”間違ってるとは思えない。
例え、“法”で許されていない私刑だとしても、それをやる理由は十分ある筈だ。
だから……
「てっきり、神様の言いなりになってるか。もしくは、神の名の下にと言う言い訳で好き勝手やる奴だと思ったけど……いい信念持ってるんだな」
例え、法や神が許さなくても、か……ああ、そう言う考え方なら大好きだ。
自分の信念を、貫き通す覚悟を持っている。
さっきまでの、トールへの敵対心は減っていた。代わりに、新しい衝動が湧き上がる。
「何を呑気な……分かっているのですか!? 私は、あなたを見逃す理由など無いと!! このまま私に殺されると言うことが分かっているのですか!?」
「ああ、充分分かった」
「っ、なら……」
「──その上で言ってやる。“やれるもんならやってみろ”」
「────ッ?!」
俺は、黒刀を構え直して、改めてトールと向き合った。
目の前の敵──いや、“対戦相手”へと。
「お前の信念も、行動理由もよく分かった。だが、だからと言ってはい殺されます、なんて出来ねーんだよこっちは。……一応聞くけど、今でも俺を殺さずに警察とかに突き出すとかはするつもりはねーんだよな? もしあるなら俺は割と大人しく捕まろうと思うんだが」
「……当然です。以前にも警察に突き出して、失敗した経験があるのですから。あなたを見逃す理由はありません」
「だよな」
一応の確認だったが、やっぱりダメだったか。俺はふー……っとため息を吐いた。
なら、しょうがない。
「……だったら。俺も殺される訳にはいかねえ。法に照らし合わせないなら、俺も言う事聞く気はねえ」
「さっきから法と法と……そんなにあなたに取って法が大事ですか!! ヴィランの癖に!!」
「人として、守るべきルールであるとは思っているよ。けど……信念によっては、破る時もあると思っている」
俺はトールに向き合って、敢えて軽口で言い放つ。
「気付いてるかトール? 俺もお前も、現時点ではどっちも法を破っている者同士。俺は【ダーク・ガジェット】使用を。お前は私刑を。──“法に従えず自分の意思を貫きたい者同士だ”」
「────。おい、その言葉。まさか……」
「あれ、どうしたの?」
「……それが、なんだと言うのです?」
「そう言う奴、なんて言うか知ってるか
────“ヴィラン、って言うんだぜ?”」
「─────。───────は?」
これは、俺の理論。俺のヴィラン感。
それに則るなら、俺もトールも、今の状況はどちらもヴィランだ。
つまり、俺達は同じ立場。
「さあ! 同じヴィラン同士、どっちがよりヴィランらしいか競争しようじゃねーか!! クゥー、楽しくなって来やがったなぁっ!!」
「……実際、どっちがよりヴィランらしいと言える? 私はあの黒い鎧の彼に高得点上げたいのだが」
「うーん。どっちも65点。強さは申し分ないんだけど、引き際が見誤ってる。そこを見極めてこそのヴィランよ」
「手厳しいな、貴様は」
俺は高揚して来た感情のまま、そう叫び出した。
思いがけない競争相手の登場に、すっかり舞い上がっていた。
一方、トールはと言えば。
俺の言葉を聞いて、最初は呆け。次第に……
「────ふざ……けるな。ふざ、けるな。──ふざけるなぁッ!!」
憤怒に、変わっていった。
「ふざけるな、ふざけるなよ……! お前と、私が、同じヴィランだって!? 世迷言にも程がある!!!」
トールは、片腕をバッと横に広げて反論してくる。
その声は、怒りで震えが感じ取れた。
「ヴィランとは!! “無辜の民から大事なものを奪っていく者!!” それがヴィランだ!! 断じて、私などでは無い!!」
そうして、トールのレイピアからバチバチと放電の音が放ち始めた。
おそらく“ミョルニル”の発動前兆動作だ。
「その世迷言ごと、貴様を葬り去ってくれるッ!!!」
「やれるもんならやって見ろ!! 復讐者ァッ!!」
そうして、俺達は再度、互いに攻防を開始する。
どちらがより、自分の信念を貫けるのかと……
★佐藤聖夜(さとうせいや)
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
自分のやった事を他責にする奴は大っ嫌いだが、信念を持って貫く人は大好きなタイプ。
トールの言い分も納得し、否定しない。
ただ自分として抵抗すべき部分があるから相対しているだけ。
彼に取って、トールはもはや“敵”ではなく“好敵手”の一人となった。
テンション上がりすぎたせいで、更に出力アップ。
……そろそろお腹の出血がやばくなって来た。
トールの片足奪った時点で逃げなかったのが以前言った致命的な失敗。
この戦いの終わりも、そろそろ近い。
★トール
──歳
──cm
──髪
秩序・善
女
【ジャッジメント】の一人。電気使い
神の言う通りに動くだけの女では無かった。
場合によっては神に背いてでも、自分の信念を貫く女だった。
両親の命を奪ったとある組織のヴィランが許せない。
悪人との遭遇運が本気で悪く、彼女と関わるヴィランはよりにもよって本当に凶悪な奴らばかり。運が、無さ過ぎた。
それを自覚せず、見逃してしまって出した被害に対して深い後悔がある。
それに伴い、ヴィランと言う存在全てを許せなくなっていった。
片足を奪われた時点で戦闘力が大幅に下がっている為、その時点で逃げるべきだった。頭が熱くなり過ぎている。
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ヴィラン度合の採点基準は、実はボスより幹部の方が厳しめ。良くも悪くもボスは器がデカすぎるのが原因。そもそも黒い鎧の彼とトールに対して、どっちも致命傷負ってるんだから互いにさっさと逃げろよが本音。認識阻害を超えて、黒い彼の正体に心当たりが湧いて来た……
この小説が面白いと思ってくれたなら、
評価10、高評価を沢山くれると、作者は凄く喜びます!