ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う?   作:新月

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遅くなってすみません……
まだ仕事との両立が上手く慣れていません。

沢山の評価、感想ありがとうございます!!


めっちゃ本気で脅威認定され始めたんだけど、どうすればいいと思う?

「“セレクト・エッジィッ!!”」

 

 彼の一閃が放たれる。

 私はそれを、ギリギリまで見極めて最小限の動きで回避した。

 放たれた一閃の斬撃は、そのまま先ほどと同様に背後の岩壁に吸い込まれる。

 跡が残らず、ただただ斬られたという事実を受け入れたように、岩壁がスライドしてずり落ちた。

 

「ック!! 余計バカげた火力になりましたね!! ですがもうそう簡単には当たら……」

「“セレクト・エッジィィッ!!”」

「な、ッええ!?」

 

 すかさず、二本目!? 

 それを不格好になりながらも、私は上半身を逸らして何がなんでも回避した。

 同様に、背後の岩壁が滑り落ち始める音が聞こえてくる。

 

「“セレクト・エッジィッ!!”」

「こ、の!! そのバカげた連打を止めなさい!!」

 

 私はその場から、“ライトニング・スティング”を使用して一旦離脱した。

 しかし、逃げた先に対しても必殺技を放ってくる始末!! 

 私は一度も立ち止まらず、動き続けるしかなかった。

 

 私は回避し続けながら、思考を回す。

 

 彼の新技、“セレクト・エッジ”。あの馬鹿げた威力は勿論ですが、連打性が高すぎる! 

 私が必殺技を通常攻撃レベルで放つように、彼もまた既にその域に達している!! 

 と言うか必殺技と言うより、常時バフ技として使用している、と言われた方が納得がいきますね。

 

 先ほどまででも要警戒の威力だったのに、いよいよ全力で回避せざるを得ない威力になりました。

 と言うか、2度目を受けたらガチで気絶します。

 一度受けたとは言え、あの斬撃が本当に私自身を斬らないという事実が信じられない程。

 無機物に対する威力なら、斬撃に限定すれば私の知る限り最高峰と言えるでしょう。

 

 間違いなく、並の組織の幹部級に留まらない……!! 上位組織のボスクラス、あるいは最高峰のヴィラン組織のネームドと同等!! 

 それも、【カオス・ワールド】の関係者と言えるのなら納得がいきます……あそこの隠しメンバー、あるいは新幹部と言えるのなら、このバカげた強さも納得出来る……!! 

 

 問題は、何故こんな強力なヴィランがここまで野放しにされていたのか、と言う点ですが……

 彼の言った通り、本当につい最近ヴィランとして活動し始めたのなら、先程まで“強さにムラ”があったのは納得出来ます。

 ですが本当に未熟者で、それなのにここまでの威力を短期間で得られるのかと言えば、疑問が残ります。

 

「──あれは、私を斬らない舐めプと言うより、“生身の人間を斬らないと言う縛り”で威力を上げていると言った方が納得出来ますね」

 

 先ほどの直撃した一撃、あれが本当に私を斬り捨てる事が出来ていたのなら、変身で強化中とは言え真っ二つになっていたのは間違い無いです。ですが、実際私は斬られていません。

 その縛りによってあれだけの威力を上げていると言うのであれば、あれほどの威力も納得出来ます。

 

 ……いえ、まあ。“そんな縛りで威力が上昇するような現象、聞いた事は無い”ですが。

 漫画の呪術とかハンターとかでよくある、制約とか縛りとか、“そんなルールはこの世界にはありません

 いえ、能力によってはあり得るかもしれませんが……汎用的な技術では無いでしょう。

 つまり、彼がその珍しい例に該当するか、もしくは……“彼自身がガチで素であの威力を出して、かつ人を斬らない”と言う意思で技を放ってるだけです。

 はは、後者ならふざけてますね。

 

 いえ、彼の精神性で、“人殺しをガチで嫌悪して結果的にセルフ縛りしている状態”、と言うなら納得出来ますが。

 結局のところ彼の真意がどうあれ、“あの人を斬らない技があれほどの威力をしている”と言う事実だけを受け止める方が思考として今後は楽でしょう。

 

「──と言うか、本質はそこじゃないです」

 

 敵を倒せない、見掛け倒しの技? 馬鹿ですか私は。

 確かに、現状のままだとその通りの技と言えるでしょう。

 現に、先ほど私が斬られた時。斬撃は私の胴体の部分だけ貫通せず、その他部分だけ岩壁を切り裂いた。つまりは、“私を素通りしていない”。これだけなら問題は無い……

 

「……ですが。もしもこれが、“私をすり抜けて岩壁だけを切り裂ける”ようになったらどうする?」

 

 そう。“セレクト・エッジ”。現状のあの技の本質は、“斬るものを選択する技”。つまり、斬りたく無い物を斬らない。

 

 その本質の捉え方を変えてみろ。

 “斬るもの以外を斬らない技”。これなら、まだ良い。

 問題は、これが進化した場合。例えば……

 

 ──“斬るもの以外を無視する”ようになった場合!! 

 

 つまりは、“斬るもの以外を素通り”する斬撃!! 

 それに至る可能性が、この技にはある!! 

 そんなものが本当に完成されてみろ!! 

 

 “ありとあらゆる防御と鎧が意味を為さず、あの岩壁を斬り落とす斬撃が威力減衰無く当たってしまう!!

 要は、“あの威力が実質ガード不可!!!” ふざけてるにも程がある!! 

 

 もしそれが、“生身の人間だけ”を斬ることに設定したとしたら……? 

 考えただけで恐ろしい!! 

 今は彼自身がそうならないように設定しているからまだマシですが、それが彼の気分次第でしか無いのが恐ろしすぎる!! 

 

「──正直、当初は悪のつぼみを摘む程度の想定でしか無かったのですが……」

 

 事、ここに到れば最早そんな程度の話では無い。

 彼は確実にこの場で始末しなければ、間違いなく我々への。──人類への強敵となり得る!! 

 

「もはや、多少の躊躇はありません。──全力で、あなたをここで葬り去る」

 

 私はそう決意し、彼の命を奪う事を改めて覚悟した。

 

「“ライトニング・スティングッ!!”」

 

 回避に使用している技を、接近へと切り替える。

 逃走から、攻撃へ。

 

「“ライトニング、ライトニング、ライトニング、ライトニング──”」

 

 そして、加速し続ける。

 私の姿を、閃光の跡しか残さない速度へ。

 確実に、彼の命を奪う文字通りの必殺へと!! 

 

 彼の背後を、取った!! 

 

「──“ライトニング・スティングぅぅぅッ!!”」

 

 2度目の攻撃。狙いは、心臓。これを食らえば、流石に彼も死ぬだろう。

 こうして、私の渾身の一撃を持って放たれたそれは──

 

 

「──み、い、つ、け、た♪」

 

 

 その耳に入った、絶望の音と共に破られる。

 

「──はッ?」

「“セレクト・エッジィッ!!”」

 

 一瞬真っ白になった頭に、視界から来る警告の情報。

 斬撃が、目の前に。

 私は無理やり飛び上がり、方向転──間に合わない!? 

 

「──ッが、あ、アアアアアッ??!!!」

 

 あし、が……足、がぁ……ッ!! 

 私の片足に、直撃した。鈍い音が、響く。

 人を斬らない斬撃と言えど、その衝撃は凄まじく。

 良くて、ヒビ。悪くて、折れただろう。

 

 私は採石場の凸凹した地面に、高速で落下してズシャァァアッと転がった。

 

「く、……そ、……おおおっ!!」

 

 私は、痛む足を無視しながら、無理やり立ち上がった。

 片足は、残ってる。まだ、立てる。

 もう片方の足は駄目だ。寄りかかろうとしただけで激痛が走る。力を込めようにも込められない。

 目の前には、彼が刀を肩に掛けながら、こちらの様子を見ている。

 

「やって、くれました、ね……!! どうやって、私の動きを見切って……!?」

「ああ。これは、俺もさっき気づいた事なんだが。【ダーク・ガジェット】って、“3つ目の効果”がある事を知ってるか?」

「3つ目の、効果……?」

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 曰く、

 ・人の心に合わせた武器の形態変化

 ・人の感情を出力に変える効果

 ・持ち主の肉体強化

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「この、“持ち主の肉体強化”だが……これがちょっと嬉しい予想外でな。確かに変身した時点で、ある程度の肉体強化は既にされている。この肉体強化は、“テンションが上がってもそれほど差は無かった”。おそらく、飛ぶ斬撃の威力アップに殆ど注ぎ込まれてるんだろうな」

「だったら、何が言いたい……! それなら、意味がないだろう……!!」

「まあ待て。それでも、全く影響が無いわけじゃ無いらしい。例えば……“動体視力”とか」

「──っ!?」

 

 そう言って、彼は欠けた頭部の隙間から、わずかに見える彼自身の“”を指差した。

 トントンと、分かりやすいように。

 

「この状態で、お前のあの高速移動技を何度も見続けたからな。流石に目が慣れたみたいだ。“しっかり見えたよ”、お前の動き」

「くそ……! だったら、それ以上の加速で今度こそお前の」

「いや、もう無理だろ」

 

 は? 

 そう問いかける前に、彼は私の片足に刀を向けて……

 

「──“片足が折れてる状態じゃ、あの高速移動はもう使えない”。お前の加速は封じられた。違う?」

 

 ──────。

 なん、で。バレ、て……? 

 

 私が頭が真っ白になり、動揺している中。彼はなんて事はないように話し始める。

 

「“ライトニング・スティング”だっけ? あの技、“片足で踏み出して、もう片方の足でブレーキ掛けてるだろ?” おそらく、踏み込みに使った足を、そのまま停止用に踏み出す暇が無い。反復横跳びが、片足で出来ないのと一緒だ」

 

 で、だ……と、彼は続ける。

 

「あの連続発動は、ブレーキ用の足で止まるんじゃ無く、そのまま次の踏み込みに使ってるからなんだろ? つまり、どうあがいても両足は必須。片足を怪我したお前じゃもうあの加速は出せない」

 

 当たってるだろ? と。

 彼は得意げな視線を、砕けた頭部の隙間から向けて来ていた。

 

 ────っ!! 

 その視線が、苛立たしくて……!! 

 

「ついでに言うと……」

「“ボルテージ・スナイプッ!!”」

 

 彼の言葉を遮るように、電気のトゲの弾丸を放つ。

 10発、20発!! 

 

 それが……当たら、ない。

 簡単に、回避された。

 

「よくよく考えると。お前の基本戦術は、あの高速移動を中心として組み立てられているだろう」

「“ジャッジメント・サンダーッ!!”」

 

 雷を、落とす。

 4度、5度……当たら、ない。

 

「多分、お前と同じ実力者に当たった場合。高速移動を中心で撹乱しながら戦うのが基本的な戦法。つまり……」

 

 彼は、刀の先を私に向けて……

 

「──“足を削った今。お前に勝ち目は無い”」

 

 その、絶望的な事実を言い放った。

 

 …………は。…………はは。

 

 ……ええ。言われずとも。

 当たっています。当たっていますとも。

 “ボルテージ・スナイプ”も“ジャッジメント・サンダー”も。……“サンダーフォール・スピア”も。

 結局は、“ライトニング・スティング”がある事前提の技。

 どの技も、並の相手には必殺にはなるだろうけど……上位の相手には、単独では決め手にはならない。

 

 そして目の前の彼は。間違いなく、上位の相手だ。

 

 ──ああ。私の必殺技は、全て破られた

 

 なら……

 

 

 

 ──ここからは。“奥の手”の出番だ。

 

 

「──? おい待て、何を……!?」

 

 私は“レイピア”を掲げ、空に向ける。

 レイピアの切っ先の空に、ゴロゴロと雷雲が立ち込める。

 

「“ジャッジメント・サンダー”か……?」

「──違う。これは余波だ。私の放つ“”に引かれて、雷雲が自然と集まって来ているだけ……」

「ちょ、ちょっとあれ!?」

「ほう? 初めてみるが、あれは中々の……」

「ボーッと眺めている場合じゃ無いわ!? 一旦距離を取るわよ!?」

 そう。必要なのは、自然の雷では無い。

 この特別な【ライト・ガジェット】から発せられる、純粋な電気のエネルギー。

 それを、このレイピアの切っ先に集中させる。

 

 集中。集中。集中。

 充電。充電。充電。

 放出。放出。放出……! 

 

「──形成せよ。雷神の槌」

 

「────ッ?!」

 

 着火剤のように、まるで雷が一つ、レイピアの先に落ちる。

 それをきっかけに、“ソレ”は姿を表した。

 

 ──それは、“雷で出来た槌”だった。巨大な電気で出来たハンマーだった。

 レイピアなど、ほんの持ち手の下側の部分でしかない。

 そもそも、これは“レイピア”では無い。これは、雷を集める為の“避雷針”のようなもの。

 

 全長およそ15m。

 5階建マンション相当の高さ。

 鉄の部分に該当する筈のそこは、直径7mの円を見せていた。

 

「不味──っ?!」

 

 

「打ち砕け!! 雷神の槌/ミョルニル────ッ!!」

 

 

 こうして、巨大な槌は振り下ろされ。

 あたりは、雷に包まれた──

 

 


 

 ★佐藤聖夜(さとうせいや)

 

 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 男

 

 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。

 

 上位ヴィランに間違えられる程の実力者となった。

 新たに手に入れたセレクト・エッジだが、既に通常技のように使いこなしていてテンションバク上がり中。

 

 ちなみにお腹に空いた傷跡も勿論出血中。

 テンション上がりながらも冷静な判断が出来てるのは、そのせいで物理的に頭が冷えてるからだったりする。

 それでも、今回実は判断をちょくちょくミスっている。

 そう言う意味では、まだまだヴィランとしては未熟者。

 

 追い詰め過ぎたヒーローの恐怖を、彼はヴィランとして初めて味わう事になる。

 

 

 ★トール

 

 ──歳

 ──cm

 ──髪

 秩序・善

 女

 

【ジャッジメント】の一人。電気使い

 雷神の槌。これこそ、彼女の切り札。

 この技を見せたのは、彼以外だと最近ではコバルト・ティアーくらい。

 

 無論、これだけで倒し切れると思ってはいない。

 最低でも、彼女と同等と判断する。

 例え、この手足がもげようとも、目の前のヴィランだけは始末する──

 

★??? &??? 

 

 危うく見学中に致命傷を負う所だった。まあ回避したけれど。そろそろ止めるか検討中




次回更新は、来週土曜日の予定です。
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