ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う?   作:新月
発熱と締め切りと体調不良とスランプが重なって、かなり遅れました。
更新再開です。感想の返信は少し待ってください。
「オオオぉぉぉ────ッ!!!」
黒刀を振り上げ、斬撃を飛ばす。
それを2度、3度連続で繰り返して、複数の斬撃を同時に放つ。
仮名、ショックウェーブ……ッチ!!
「ッく!? “ライトニング・スティングッ!!”」
それに対し、トールは必殺技を放つ。
しかしそれは俺を狙った訳ではなく、寧ろ距離を取る、回避への使用だった。
俺の放った飛ぶ斬撃複数を、連続必殺技で回避していく。
「全く、嫌になりますね!! この斬撃が別に“必殺技”という訳では無いというのが、酷い話で──」
「次いッ!!!」
「っ!?」
トールが何かゴチャゴチャ言っていたような気がしたが、俺は一切気にせず次の行動に移っていた。
さっきのショックウェーブは駄目だ!! しっくりこない!!
……今度は黒刀を、キッチリ3度振る。刃の軌跡を、目の前で三角形を描くように!
仮名、デルタトライエッジ!! ──ッ。
「っらあ!!」
「“ライトニング・スティングッ!!” ッ痛ぅ!?」
三角形の斬撃が飛んでいき、それもトールが回避しようとするが、肩辺りが掠ったらしい。
これは、手応えがあったか……? いや違う、ただ自分の刀の振りの精度が高まっただけ。
この必殺技だからじゃ無い!! これも違う!!
「今度は、こう!!」
「何を、して────何!?」
俺は、その場でスピンを連続でする。
その際、刀を横に構え、刃の軌跡が連続で追いてくるように!
飛ぶ斬撃を、連続で回転して発射する!!
仮名、サイクロンウェーブ!!
「おおお、オオオ、オオオオオオオぉぉぉぉ────ッッ!!!!」
上から見て、螺旋状に渦巻いた斬撃が周囲に放たれる!!
一度斬撃が通った箇所も、また再度次の斬撃が襲いかかる!!
普通のジャンプだけじゃ回避不可、長広範囲攻撃!!
「ふざけた、真似を──!! “ライトニング・スティングッ!!” 真上!!」
この攻撃に対し、トールは例の高速必殺技を、真上に放つ事で回避しようとしていた。
普通じゃない大ジャンプ。対空時間ももっと長くなるだろう。
おそらく回転が止まるまで空中にいようとする算段だろうが──甘い!!
「オオオ、ラアアアぁぁぁ──────ッ!!!!」
螺旋の斬撃を、真横だけじゃなく──斜め上にも放つ!!
空中の、トールに届くように!!
「何ッ?!」
追ってくる斬撃を見て、トールが驚きの声を上げる。
空中じゃ、例の高速移動も出来ない! クリーンヒット……っ
っ!? “トールの体に電気が纏って”……!?
「っくう!! “サンダーフォール・スピア!!”」
直後、ピシャァァァーン!! と、雷が落ちるような音と共に、トールがその場から消えた……いや、急速に落ちていた。
空中にいた筈のトールが、いつの間にか地上に戻っていた!
「雷と共に、急速落下する技です! 本来、この勢いで空中から地上の相手を攻撃する技でしたが……まさかこれも、回避に使う事になるとは!!」
「くっそ!! だがまだ回転は終わってねえ……」
「終わりなさい!! “ジャッジメント・サンダーッ!!”」
「うおあっ!?」
そのまま地上に螺旋の斬撃を放とうとしたら、トールに雷を落とされたので緊急回避する羽目になった。
回転が止められ、飛ぶ斬撃が止まってしまった。
くそう、くそう、……くそうっ!!
「さっきから、どれもふざけた威力の斬撃ですね……やはり放ってはおけま」
「クッッソオオオオオオオオがああアアアァァァぁ──────ッッッ!!!!」
「ッッ?!!」
俺は思わず、悪態を大声で放ってしまっていた。
駄目だ、上手くいかない! どうしても、どうしても────
「そ、そこまで悔しいですか? 私に大してダメージを与えられない事が。しかし、これが実際の実力差。大いに分かったで──」
「どうしても、しっくり来る技が出来ねええええええええええええ────ッ!!!!」
「…………は?」
俺のその心からの声に、トールは疑問の声を上げていたが、俺には関係無かった。
駄目だ!!
ショックウェーブも、デルタトライエッジも、サイクロンウェーブも!!
どれもしっくり来ねええええ!!!
なんか、斬撃の軌跡の問題じゃない気がしてきた!? もっと根本的な部分で違う気がする!!
「この状態の……【ダークガジェット】を使った時の必殺技が、どうしても見つからねええええ!! なんか……なんかある筈なんだよ!! なあ!?」
「は、はあ!? 急に、何を……?!」
そうだ、ある筈なんだよ!!
レッドの状態の時の、“レッド・エッジ”か“レッド・フレイム”のように!
その状態の時の代表技と言えるようなものが! 全ての基礎となるような型が!!
絶対、ある筈なんだ! なんとなく、感覚で分かる!
【ダークガジェット】を使ったこの姿用の型が……確かにある筈なんだ!!
さっきから飛ぶ斬撃を常時使っているけれど、それは最早ただ無意識に飛ばしているだけで、どちらかというと通常技みたいな感覚だし!!
それを探すために色々試したけど、どれもしっくり来なかった!
根本的に、何かが違う! 求める効果が違う!
「なんだ、何が足りない!! 何を間違えている!! 何が引っかかってる!? 思い出せ、思い出せ!! ティアーは何を言っていた!? 【ダーク・ガジェット】にどんな効果があった!?」
「っ!? ティアー、ですって!? あなた、彼女と関わりがあるのですか!?」
「何それ知らない? え? 私彼に会った事あるっけ!?」
「貴様の配信の視聴者ではないか?」
「あ!? それよ!!」
思い出せ、思い出せ、思い出せ!!
“人の感情を出力に変える効果”、それはさっき分かった!
他には、他には──
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『“コアパーツ”。私はそう呼んでいるわ。これこそが、【ダーク・ガジェット】たらしめる心臓部……』
曰く、
・人の心に合わせた武器の形態変化
・人の感情を出力に変える効果
・持ち主の肉体強化
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
──ッ!!
“人の心に合わせた武器の形態変化”!!
これだ、これが引っかかっていた部分だ!!
俺は、自分の黒刀を見つめ直す。
あの説明通りならこの黒刀は、俺自身の心を反映させて作られた武器だ!
人の心に合わせて武器が作られるなら────“必殺技も、人の心に合わせて出来る”んじゃ無いのか?
その可能性は、大いに高い!!
だとすれば、俺の心!!
俺の心の形が、そのままそれ専用の必殺技に繋がる筈!!
心の形? どうすればいい!!
考えろ、考えろ!!
人の感情を出力に変える効果があって、人の心に合わせて武器が変化するならば──
方向性は、その人の心の向きに従う筈だ!!
俺の心はなんだ!?
俺の心──根本的な根元はなんだ!!
そうだ、何を求めて────何がしたくて、【ダークガジェット】なんかに手を出した!?
【ダークガジェット】を求めた俺の心は、何がしたかった!?
考えろ、考えろ、考えろ!! その理由こそが俺自身!! それこそが俺の心の方向性!!
「【カオスワールド】の幹部と繋がりがあるのならば、尚更放ってはおけません!! 何としても、この場で始末します!! “ボルテージ・スナイプッ!!”」
「邪魔だあッ!! 今いい所なんだよ!!」
「っなあ!?」
飛んでくる刺の弾丸のような電気の塊達を、飛ぶ斬撃で相殺していく。
正直今のはガチでイラッとして思わず放ってしまった。
そうだ、感情──
聞いた事がある。怒りがその人にとって、怒る理由が大事なものに関わっているって。
俺が、怒る時。怒る、理由。それは──
夢中になっているから。これはある。
集中したいから。これはある。
けれど、ちょっと今はこれじゃ無い気がする。
【ダークガジェット】に手を出した理由。
法律に逆らってまで、手を出したその理由は──
「この──っ! “ヴィラン”の癖に、しつこいですね!!」
──ふと。俺がヴィランと言われた事が、心に染み込んで。
──ふと。目の前に。トール/ヒーローが見えた。
──あ。
「……? 止まった……?」
俺は思わず、手を止めてしまう。
両手が下がってしまう。
空を見上げてしまう。
──そっか。そうだった。
「……俺が、【ダークガジェット】に手を出した、理由──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……やってやるよ。
もしかしたら、本当に法を変えることが出来るかもしれない。
ヒーロー側にとって、頼れる新たな味方を増やせるチャンスかもしれない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……そうだ。
“ヒーロー側にとって、頼れる新たな味方を増やせるチャンスかもしれない。”
すなわち──
「──“神に選ばれていない者も、ヒーローになれる可能性があるかもしれない”」
「……なんですって?」
そうだ。その可能性、そのチャンスを広げて──いや、ちょっと違うな。俺の本音は──
「──“神に選ばれなかったら、ヒーローになる資格は無いのか?”」
「……? さっきから何を……そんなの、当然でしょう? ヒーローになれる資格は、【ライトガジェット】の適性があるかどうかなのですから」
「……ああ、そっか」
「──“それが、俺が嫌いだった部分だ”」
「……何、を?」
だって、そうだろう?
神に選ばれなかっただけで、ヒーローになれないのか?
自分の意思だけで、ヒーローになる事を選んじゃいけないのか?
確かに強さは必要かもしれない、素質は必要かもしれない。
けれど、挑戦を“選ぶ権利”すら与えられないなんて、おかしいじゃないか?
もちろん、神に選ばれなかった奴らが全員ヒーローになりたい訳じゃない。
だから、“選ばせたい”。
神に選ばれたからどうとか、じゃなく。“自分の意思で、進む道を選ばせたい”。
ヒーローになりたいか。あるいは……最悪、ヴィランになりたいのか。
“選択の権利を、作りたい”
──“選択”
「……そっか。これが……」
これが、俺の心の本質。
“選択”
この言葉こそが、俺が求める物。自分の意思で、決められる事。
──その事に気づいた瞬間、黒刀が黒く輝き出す。
「──!? なんですか、それは?!」
「……はは。そっか、そうなんだ」
“選択”こそが俺の本質。俺の心。
それを反映したのが、この黒刀。この姿。
そうだ、俺は……俺の意思で、【ダークガジェット】を使う事を“選択”した。これも、“選択”の一つだ。
ようやく分かった。俺のこの姿の必殺技が。方向性が。
しっくりくる物が、出来上がった。
技名は、とてもシンプルで。長官の事を悪く言えないかもしれないけれど。
けどまあ、これしか無いか。
俺は、剣を横に構えて、なぎ払いの準備をする。
「──っ! “ライトニング──”」
遅い。俺は、過去最速の振りで、トールを狙う。
放つは、俺の中でようやく見つけた、心の形。
「──“セレクト・エッジ”」
それが俺の、新しい必殺技だった。
☆★☆
──それは、今までで一番大きい斬撃だった。一番早い斬撃だった。
私の必殺技で回避する暇もないくらい最速、最大の威力で放たれたそれは、私に直撃した。
そのまま、飛ぶ斬撃に押し込まれ続けるように背後に吹っ飛び、採石場の岩壁にぶつかった。
「が、はッ────ッッッ??!!!」
肺が、潰れる。
息が、出来ない。
頭を打った衝撃で、耳も良く聞こえない──。
しばらくして、私の体が壁から落下する。
地面にぐしゃりと落ちて、体の痛みが遅れてやってくる。
「っつ、はっ、あああぁ────ッ、くああぁ────ッ!!」
痛む体を無視して、無理やり起き上がる。
パラパラと、お腹の部分から何かが崩れていった。
「────ッ?!」
“鎧だ”
お腹の部分の鎧が破片となって崩れている。いや、斬撃の跡を残すように、“斬られている”。
つまり私は、お腹から真っ二つに────!?
「────っ?!?」
──なって、ない?
胴体が、“斬られていない”?
鎧がこんな、綺麗に斬られているのに──?
「──ふ、はは。あっはッははハハはっはははははははははははぁッ!!!」
すると“黒い彼”が、とてもおかしいように。
それこそ私のお腹の状況とあわせたのか、彼自身もお腹を抱えて大きく笑い上げていた。
「見つけた──見つけた!! とうとう見つけたぞ、俺だけの必殺技!!」
私の事を気にしていないかのように、そんな声を上げている。
「“セレクト・エッジ”!! これこそが、俺の新たな必殺技! この姿の時の、必殺技!! 全ての基礎、全ての基本となる必殺技!!」
黒い彼は、両手を大きく広げて説明する。
「“俺が斬りたい物だけを、斬りつける”!! “斬るものを選択する剣!!” これこそが、俺の本質、俺の心、俺の方向性!! ようやく見つけた、俺だけの必殺技だ!!」
────は?
その言葉が、私は、少し、理解出来なかった。
斬りたい物だけを、斬りつける?
それは、つまり、先ほどは……
“彼が斬りたくないと思ったから、私の胴体は無事な訳か?”
「──ふざ、けるな……」
私は、心の底からフツフツと湧き上がるものを感じた。
「ふざ、けるな…………ふざける、な…………」
心の底から湧き上がる言葉を、そのまま彼にぶつけた。
「──ふざけるなぁッッッ!!!」
「──何が?」
その言葉に、彼は心底不思議そうな声を出していた。
は……? 貴様、自覚すらないのか!?
「何が……何が、斬りたい物だけを斬る剣だ!! 何がお前の本質だ!! “ただ舐めた攻撃をしているだけ”だろうが!!!」
斬るべき時に、敵を────あろう事か、私自身を斬り殺していない!!
そんな攻撃に、必殺技に、なんの意味がある!?
敵を生かす攻撃を、何故放つ!?
「いや、だって、“俺お前殺したくないし”」
「────────はあッ??!」
「お前は俺を殺したいのかもしれないけどな。けどそもそも、俺自身あんたを積極的に殺したいわけじゃないんだよ。確かに現在進行形で法を破ってる身だけどな、破るラインの程度位“選ばせてくれよ”」
武器を肩に掛けて、トントンと叩きながら、そんな軽口のようにこちらに放つ言葉。
その全てが、何から何までふざけてる……自分を殺しに来てるような相手を、殺すつもりが無い──? どこまでもふざけてる!!
「どこまで、馬鹿にすれば気が済むのです──!!」
「それに、さあ……」
「はあ?」
「──おかげで、もう“手加減”する必要無くなったんだわ」
──は? 手加減?
何を……今の攻撃こそ、まさに手加減の極地では──?
──そう思っていると、背後からピシぃッ!! という音が……
「……は? 何の、音……?」
そう思って、振り返ると……
──採石場の岩壁を、斜め横に一閃する巨大な跡。
……私の、“胴体のあった部分”だけ、斬撃が途切れており──そこに、ヒビが入る。
ピシピシ、ピシピシィィッと、音が広がり、大きくなり……
ズズズゥゥゥゥゥ────ンッッッ!!!! ……っと、岩壁が“斜めにズレ落ちた”
「────────────は……?」
深い、一閃の跡どころではない。
完璧に、壁が切り落とされた。斜めにずり落ちた。
もはや技の規模が、最初に驚異を感じたあの跡とは比べ物にならなかった。
「……自分の自己の本質の発見。新たな必殺技の完成。ここまでの発見があって、テンションが上がらない方がどうかしてるよな」
まるで独り言のように、背後から黒い彼のそんな言葉が流れてくる。
「あとさー。……さっきから俺、“お前を斬り殺さないように斬撃の威力を調整してたんだわ”。でも、この“セレクト・エッジ”なら……もう、そんな調整は必要無い。常時、最大火力で叩き込める」
……理解、出来ない。
耳に入れたくない、絶望の情報が、聞こえてきた気が、した……
振り返ると、黒い彼が武器を構え直している。
私を見据えて、はっきりと伝えてくる。
「さあ、楽しもうぜ。トール……」
片手をこちらに向けて、クイックイッと招くように……
「──“ここからが、俺の真のデビュー戦だ”」
「何あれ凄い!? 凄いってレベルじゃないわよもう!? 規模だけならカイちゃんに匹敵するんじゃない!?」
「いや、規模だけならもっと大きいの我いけるぞ? けどまあ、全く、何処までもワクワクさせてくれる……っ!!」
 ★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
ずっと不満に思っていた。
神様に選ばれるしか、ヒーローになれない事に。
なりたくとも、選ぶ事が出来ない人が多い世界のルールに対して。
選ばれる側になるんじゃない。
自分が選ぶ側になれよ。
彼のそんな心を、“複製”したのが黒刀だったのだ。
ちなみに現在、出力の推移の変化は
試し打ちの時の最大値:100%
と基準とすると……
やる気無かった時:20%
セレクト・エッジ以降:200%
と変化してる。差が激しすぎる。
★トール
──歳
──cm
──髪
秩序・善
女
【ジャッジメント】の一人。電気使い
最早、脅威になりそうだから殺すと言ってる場合では無い。
間違いなく、驚異となる事が確定した。
最早、切り札を出し惜しみする理由は無くなった──
★??? &???
さっきからずっと興奮しっぱなし。ポップコーン持ってこなかった事を後悔中
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