ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
「────っ!! 今のは……!?」
“彼女”は、今しがた発生した気配を感じとる。
その視線の先は、使われなくなった筈の採石場──
☆★☆
「──これが、ダークガジェット」
俺は、変化した自分の姿を改めて見渡してみた。
全身黒い西洋鎧。
黒い細身の剣。
念のため持ってきていた手鏡でも、自分の姿を確認してみる。
フルフェイス型のゴツゴツしたヘルメットをしており、顔は一切判別出来ない。
間違ってもとてもヒーローとは見えないだろう。
「これぞまさしく、“悪のボス”、と見られそうな格好だな……」
思った以上に禍々しい格好になってしまっており、そう自分の事を自嘲する。
確か以前ティアーが言っていた情報だと、幹部級のガジェットだと“自動変身スーツ”の内蔵がされているって言ってたな……“その人にあった衣装に自動的に変わってくれる”って。
つまり、この格好こそが今の佐藤聖夜にとって最も似合った格好と言う事なのだろう。
なるほど、法の明確なラインを越え、ヴィランに足を踏み入れた俺にとっては確かにお似合いなのだろう。
しかし。
しかし……!
「──“クソぉ、格好良すぎだろこれ……!!”」
正直に言おう。
自分の姿を見て、割と満更でもない感触を抱いていた。
だって、俺の普段の姿“全身タイツ”だぞ?
ヘルメットもただ丸っこい形で、特徴なんて一切無い。
そんなthe・シンプルを突き詰めたようなダサさの局地の格好をずっとしていた俺にとっては、この【ダーク・ガジェット】による自動変身した“漆黒の鎧姿”は、刺激が強すぎた。
なんと言うか、落ち着いた筈の厨二心がとてもくすぐられる。
心の中の少年時代のワクワク感がとても湧いてきてしまう。
これが、洗脳の正体なのか……!? と、割とバカバカしい理論をちょっと信じてしまいそうになっていた。
だってしゃーねーもん、こっちの方が格好良すぎだもん。
かつて昔のハトラーだかなんだか知らねーけど、とんでもない軍人が指定した軍服も、格好いいからって兵士の戦意高揚のために真面目に設定した理由があったりするんだもの。
その理由から、後年また強大な軍隊を作らせないために、カッコいいデザインだから真似しないようにと真面目に言われている。
それくらい、格好のデザインというのは実は重要視するべきものなのだ。
それを、ヒーロー連合の奴は……何あれ?
肉体強化されるからって、ペラッペラなタイツ一枚? ふざけんな。
と言うか、【ジャスティス戦隊】の場合は原因長官だろ、神矢長官!?
真面目に高校生、大学生レベルだとこっちに傾倒するやつ出るぞ、デザインだけで!?
……っとと。やばいやばい、つい本音が。
「とりあえず、デザインの事は置いておいても……次は、“力”だな」
そう、それこそが本題。
【ダーク・ガジェット】による、得られる力。それがどのようなものか、どれくらい強大なのか。
それを確かめるのが、今日の本題だ。
「ふむ……これが、俺の武器か」
まずは、手に持った“黒い細身の剣”をみる。
確かティアーは配信で、“変形後の武器が、同じ形状の事が殆ど無い”と言っていたな。
これも鎧の姿同様、俺専用の武器と言えるのだろう。
「けど、これ剣って言うか……よく見たら微妙に違うな?」
そう。この黒い剣は、“片刃”だった。
一般的に、“剣”と呼ばれているものは“両刃”であって、片刃でそう呼ばれているものは無いはず。
細身の姿をしているのもあって、どちらかと言うと分類は“刀”に近いのでは無いだろうか?
もちろんデザインは西洋風っぽくなっており、間違っても日本刀とは言えない。
けれど、使い方としてはかなり近しいのでは無いだろうか? 俺はそう感じ取っていた。
とりあえず、武器の名称が必要か……?
【レッド・ガジェット】の時は、武器自体も【レッド・ガジェット】と呼んでいた。
あくまで【ライト・ガジェット】の内の一つが、【レッド・ガジェット】と呼ばれていて差別化されていたから、他と混ざる事は無かったのだ。
しかし、この武器は【ダーク・ガジェット】から作られたもの。
【ダーク・ガジェット】と言う武器を持っている人は沢山いるのだから、差別化のためにこの佐藤聖夜専用の武器を示す名を作った方がいいと感じたのだ。
ティアーだって、確か【ツイン・ティアーズ】と自分の武器を名付けていたのだ。それに倣った方がいいだろう。
ブラック・ソード……闇の側面、ダーク・サイド……自分専用、オンリー・ソード……法のライン越え、アウトライン……
……あれ。俺もしかして、ネーミングセンス長官と大差無い……?
い、いや、いくつかはマシな筈……あれ、分かんなくなってきた……?
「……まあ、一旦“黒刀”で」
俺は深く考えると、ドツボにハマりそうだったから、シンプルな仮の名を名付けた。
決して、よく考えても長官のネーミングと同等しか考えられないかもしれないと言う事実から目を逸らしたかったからでは無い。
今度ちゃんとよく考えよう……こっそりそう誓っていた。
「ふむ、じゃあ……次は、“出力”──」
俺は、あたりを見渡して……手ごろな岩がないかどうか探し、丁度良さそうなのを一つ見つけた。
近くに寄って、黒刀を両手で持ってゆっくり振り上げる。
参考例として、【レッド・ガジェット】なら直接叩っ斬れば岩を“砕く”位ならいける。もちろん、それなりの全力を込めてだが。
黒刀だと、どうだ──?
「────ふッ!」
そうして、俺は全力で岩に振り下ろし──
「がッ?!!」
完全に、弾かれた。一切砕けていない。岩の頂点がちょっと欠けただけ。
「あっれー……? この程度?」
俺はこの結果に疑問を思っていた。
砕くまではいかなくとも、半分くらいは切れるんじゃ無いか、と思っていたのだ。
もちろん、全て一点物の【ライト・ガジェット】とは違って、量産品と言う違いはあるかもしれない。
……けれど、ティアーの作った物が、この程度とはどうしても思えないのだ。
「なんだ……? 何か、間違ってるか? 何か見落としてる……?」
いや、確かになんか引っかかってる。なんだ、何を忘れている……?
そう思い、俺はよく考え、自分の記憶を振り返る。
思いだせ、ティアーの配信を。あいつはこの間何を言っていた……?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『“コアパーツ”。私はそう呼んでいるわ。これこそが、【ダーク・ガジェット】たらしめる心臓部……』
曰く、
・人の心に合わせた武器の形態変化
・人の感情を出力に変える効果
・持ち主の肉体強化
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「──あっ」
そうだ。それだ、“人の感情を出力に変える効果”!!
ティアーはそれを言っていた!! なんかサラッと言ってたから流してたけど!!
感情……要は、昂りか?
今俺が岩を叩っ斬ろうとした時、確かめる気持ち優先で感情が乗っていなかったから?
「つまり、気持ちを込めて岩を切れば、さっきより強力な攻撃になる……?」
簡単に纏めると、そう言うことになるが……
「……いや、ちょっと待て。これもしかして、意外と難しいぞ?」
だって、ただの岩だぞ? 戦闘中じゃあるまいし、ただのお試しの気分でやってる現状、そこまで感情昂らせられるか?
俺は顔に手を当てて、うーん、と悩み出していた。
まいったな、こんな落とし穴があるとは……
軽い確かめの気持ちで試し撃ちしようとしても、【ダーク・ガジェット】だとその本領は発揮されないのか……
どうする? どこか適当なヴィラン組織でも襲って……いやいや、我ながらどんな案だよ!
任務でも無いのにそんな自分から探しに行くなんて、やって良い訳無いだろ!?
そもそも初めての武器でそんな実戦行けるわけねーだろ!?
そう自分にツッコミを入れ、改めて冷静になる。
うーん……とりあえず、なんらかの気持ちを昂らせればいいんだろ?
「じゃあ……ひとまず、初めて【ダーク・ガジェット】を使ったときの気持ちで……」
先ほど、スイッチを入れたばかりの時の感情を思い返す。
思いだせ、あのときの高揚感を。期待感を。
その気持ちを集中して湧き上げて、ギュッと黒刀を握る……
──すると、黒刀に“オーラ”が纏い出していた。
「──来たっ」
俺は、確かな手応えを感じて、それを受けてさらに心が湧き立つ。
それを刀に乗せて、全力で振り上げて──降ろす。
ガキィッ!! っと……岩の、半分。そこまで、めり込んだ。
「っおし!! 元々の期待通りの結果!!」
俺は思わず、ガッツポーズをしてその結果に喜んだ。
岩からめり込んだ黒刀を抜き出して、軽く砂を振り払う動作をする。
なるほど、あれくらいの高揚感だとこれくらいの威力は出せるのか……
結果だけ比べると、【レッド・ガジェット】の時と比べて、半分弱の結果。
しかし、これが量産品であることを活かして、二つで放てばおよそ同等の結果に。
二つ以上ならば、それ以上の結果。これを考えると、沢山ある武器というのはそれだけで脅威になるだろう。
同時に、味方が使えれば大きな戦力になるとも言える……!!
「けど、こう考えると“出力の安定感”が無いな……そこがネックか」
俺は冷静に、【ダーク・ガジェット】に関して客観的な評価を下す。
感情を出力に。そう一言で言うと簡単だが、そもそも感情は激しく移り変わりやすいもの。
勿論【ライト・ガジェット】でも気合を入れれば出力が変わる技はあるが……それは人の振り下ろしとか、エネルギー出力の調整とかでそうなっているだけだ。
感情がダイレクトに出力に関連していると、先ほど岩が斬れなかったように、最低の威力となってしまう事もある。
「──ああ。もしかして、だから【ダーク・ガジェット】使うやつら、いつも引き際がいいのか?」
俺は、普段の悪の組織の下っ端との対決を思い返して、やっと違和感の理由に気づいた。
感情がダイレクトに作用されると言う事は、“心が折れている”場合は当然出力は最低値だろう。
と言う事は、その場合戦闘続行なんて出来ず、ボロ負けに拍車が掛かる。じゃあさっさと逃げるに越した事はない。
今更ながら、その事実が当たりだろうと考えていた。
そうなると、【ダーク・ガジェット】を使うのに適しているのは……“諦めないやつら”、か?
まるで主人公陣営のように、不屈の闘志を持ったやつが使えば、最後まで出力たっぷりで戦えるだろう。
「なるほど……こうして考えてみると、一長一短だな……」
ここまで軽く確かめてみた結果、武器としてはピーキー過ぎる仕様。
安定の戦力、と言う意味では不確定要素が多すぎるだろう。
仮に指揮する者の立場になったとして、威力が安定しない部隊などどう配置すればいいのか分からない。
この事を知っているから、ヒーロー連合は一切使わないようにしているのか?
理由としては分かる気がするが……いや、本当にそれだけか? まだ、何かあるような……
「……まあいい。今日のところは、これくらいでいいだろう」
ひとまず、初日の考察としては十分過ぎる成果。
武器としてピーキーだから、ヒーロー連合は使わないのかもしれないと言う、ある程度の自分なりの答えを見つけられて、これだけでも割と満足感は高い。
勿論、ピーキーとは言っても、いくらでも量産が出来ると言う点は魅力的だ。
その意味では、物量で押しつぶす事も十分可能だし、感情が最高に昂って威力が上がれば十分に──
「──最高威力、か」
……俺は、帰ろうとした足を、ふと止めた。
今の時点で出せる、最高火力。やはり、確かめたくなる。
先ほどの岩を半分叩っ斬ったのも、あれはあれで十分だが……もっと威力を、出せる気がしたのだ。
それを、見てみたい。
……とは言っても、感情の高ぶりが必須。
初めて【ダーク・ガジェット】を使った時以上の、高揚感が必要だ。
それを湧き上がらせるためには……
「……“シャドーボクシング”、だったか? イメージトレーニングの一種」
昔、聞いた事がある。脳内で、目の前に対戦相手が実際にいるイメージで、実際にステップや攻撃を繰り出すトレーニング。
脳内で相手が動き、それに合わせて攻撃を繰り出す事で、実戦に近い特訓を積めるという。
──つまり、脳内でこの場が実戦の場所と思い込むのだ。
「対戦相手は、誰にする──?」
やはり、グリーンさんか? それもいい。
もしくは、ヴィランか? そちらの方が、叩っ斬りやすい……
下っ端たちに囲まれた時か? いや、それより幹部級の相手の方が……
そうして、悩みに悩んで──ふと、目の前の岩が、“ブロック”のように思えた。
『──SET、【ブロック・バレット】、
そうして、岩の奥に
──ああ、そうだ。
俺は、思わず笑みが零れる。
ショッピングセンターの屋上で、彼女の戦いを見てから──
「──“勝ちたい”」
俺は、そう思っていたんだ。
──黒刀を、横に構える。
“ブロック”まで、かなり距離がある。……構わない。
黒刀に、オーラが更に宿る。黒色の光が、集まっていく。
呼吸を上げろ。心臓を昂らせろ。頭は冷やし、心は熱く。
「……見てろ、ティアー」
前を向け。そこにいる。
俺の求める相手が、見ているぞ。
俺が、黒刀を構えた。
それを見て、ティアーが“ブロック”を出した。攻撃を阻害するつもりだ。
構わない、構うものか。“それごと壊してやる”。
「──避けろよ」
俺は、幻影の彼女に向かってそう呟き。
黒刀を────振り抜いた。
☆★☆
──1分後。
「──あ、ちゃー……」
俺は目の前の惨状に……頭を抱えていた。
“ブロック”と思い込んでいた、岩は。──無くなっていた。
それだけならいい。いや、よく無いけど。
問題は──
「採石場の、断壁が……」
岩を削り取ったであろう、巨大な壁状になってる箇所。
そこに刻まれた、“巨大な深い一閃の跡”。
「やっちゃったよ、おい……」
自分のしでかしたことに、我ながら冷や汗を掻いていた。
これどう見ても誤魔化しの範疇を超える。絶対ヴィランか何かの戦闘があったと思われる……
ここでの特訓の痕跡は消そうと思ったのに、これどう見ても自分一人じゃ無理だろおい……
いやまさか、あそこまで斬撃が届くとは思ってなかったのだ。
「まさか、ここまで威力が出るとは……」
いや、威力自体はぶっちゃけ、見覚えのある程度の威力でしか無かった。
技の威力だけなら、“レッド・ハイパーエッジ”と同等位だろう。“レッド・ギフト”1個分の強化技と込められたエネルギーと同等だ。
最近“レッド・ウルトラエッジ”ばかり使っていたから、一個分の強化技の威力は久しぶりなのだが……
「問題は、こっちの方が“貫通力”がありそうなこと、と……」
確かティアーが言ってたな。【ダーク・ガジェット】は、物理特化だって。
【ライト・ガジェット】は、人の精神にダメージを与える為、その分物理威力が下がっている。
その分のエネルギーを破壊力一点に回した為、単純な物理威力ならこちらの方が上なのだ。
それこそ、破壊範囲だけなら“ツイン・ギフト”技に迫るんじゃないか?
しかも……
「──“レッド・ギフト”無しで、“ギフト技と同等の威力”、か……」
そう。それこそ1番の驚き。
俺の得意技であるバフ技を掛けなくても、同等の威力を出せたこと。
量産品の武器で、だ。
「は、はは……」
もう、乾いた笑いがこぼれ落ちるくらいだった。
やべえ。安定性を引っ下げても、上振れの威力がかなりとんでもねえ。
良くも悪くも、可能性の塊だよこれ。
はっきり言おう。
仮にヒーローの俺、レッドと。【ダーク・ガジェット】の俺、佐藤聖夜が戦った場合。
全くの互角。あるいは、技のテンポアドバンテージ的に、【ダーク・ガジェット】の俺の方が有利の可能性が高い。
勿論、戦意高揚を維持し続けることが出来れば、の話だが。
ヤバイ。
ヒーロー陣営、下手するとマジで負けるぞこれ。
本当に、あくまで最悪中の最悪だが。仮にこの威力を下っ端たちが全員出せるようになったら……
間違いなく、ヒーロー側は負けるだろう。
上位ヒーローなら、勝てるかもしれない。けど、多めに見積もって50位以内なら対処できると考えても、せいぜい対処出来るヒーローは250人程。
対して、ヴィランの数は……もっと、沢山。
ヒーローが勝っても、その間に他の場所で街や国を支配されたら意味がないのだ。
どう考えても、手が回らなくなる。
「考え過ぎ……と、思いたいけど……」
ピーキー仕様だからこそ、ヒーローが勝ち続けているのかもしれないが……“負けの目”が、微かだが確かにある状態なのだ。
少なくとも、その極端な可能性はある、と言う事は覚えておいた方がいいと思う。
俺はそう、心に刻み込んでいた。
「……長くなったな。ひとまず、ここを離れよう」
俺は気持ちを切り替えて、急いでその場から離脱する事を考えた。
一瞬忘れていたが、採石場の傷跡を全く隠せないのだ。
誤魔化しが効かない以上、さっさと退散した方がいい。
そう考えて、変身を解こうとして──
☆★☆
……ところで、話は変わるが。
俺は、グリーンさん曰く。“運が悪い”らしい。
具体的に言うと、休日外を出歩いただけで、担当外のヴィラン騒動に巻き込まれるほどだ。
そのせいで、グリーンさんに常に【レッド・ガジェット】を持ち歩くようにキツく言われたほどだ。
この間の、ブルーとのショッピングセンターのお出かけもそうだったが。
どうも重要な用事がある時に限って、間が悪いというかなんというか、そういうトラブルに巻き込まれやすい事が多い。
と言っても、絶対にトラブルに遭遇するわけじゃないぞ。
せいぜい、20回のお出かけに対して、1回の頻度くらいだから、多いと言ってもそこまでじゃない。
え、十分多いだろって? それは、まあ……
そんなわけで、俺はまあ、確率5%位なら、そこまで警戒しなくても大丈夫だろうと思い込むタイプでもある。
命中95技は確実にヒットすると、思うタイプ。
まあ、あれだ。なんというか。
──今回も、引いちゃった。5%。
☆★☆
俺が、変身を解こうとして……
──“雷が、降ってきた”
「──ッ?!!」
俺は、とっさにその場から飛び去った。
俺のいた場所に、雷がドーンッ!! と降り落ちる。
その場所に、大きな焦げ跡が残っている。
「──見つけましたよ、ヴィラン!!」
「ッ!? お前は……!!」
見上げると、俺が傷つけた断壁とは別の場所に、彼女が立っていた。
彼女。白い西洋鎧で包まれて、レイピアを持っている──
「──“トール”!?」
ショッピングセンターの屋上で、出会った彼女がそこに立っていた。
彼女はそこから飛び降りて、俺から離れた位置で着地した。
「これ、は──!?」
そうしてトールは、俺が傷つけた跡を見つけ、驚きの声をあげる。
そして、ヘルム越しにこちらを睨みつけるように振り向いた。
「……あなた、何処の組織の者ですか。あなたのような人、見た事ありません」
「いやっ!? 俺は……レッ!?」
いや、やべえ!? 今の俺、【ダーク・ガジェット】で変身してるから、レッドって名乗れねえ!!
認識阻害は働いているだろうけど、だからこそ俺がショッピングセンターで会った事があると伝えられねえ!!
そもそも、【レッド・ガジェット】持って来てないから、証明も出来ねえ!!
「……いえ、やはり答えなくていいです」
「へ……?」
そう言って、トールはレイピアを構えて……
「──“どちらにせよ。あなたはここで、倒させてもらいますから”」
そう絶望的な/当然的な事を言い出した。
「ちょっっっと待て!? 俺は違う!! いや、確かに【ダーク・ガジェット】を拾って使ってはいたけど、ただそれだけで……!!」
「拾って使っただけ!? 嘘おっしゃいッ!! そんな試しにふるったような理由で、“この惨状を引き起こせますか!?”」
ヤバイ、否定出来ねえ。
だって、俺もここまで威力出るなんて思っていなかったんだもの。
幹部級とはいえ、大した違いのないらしいこの武器が、それほどの威力を出せるなんて思っていなかったんだもの。
俺だって、仮に下っ端の一人がこの威力を出したなんて言われたら、疑いにかかる。
「間違いなく、あなたは私の経験上、上位ヴィラン組織の幹部級の実力者……ッ!!」
構えたレイピアの切っ先を、俺の方に向ける。
「仮に! 仮に、ですが!! あなたのいう通り、ただ【ダーク・ガジェット】を拾って使っただけの場合でも!! これほどの惨状、これを引き起こすあなたを野放しには出来ませんッ!!」
「ごもっともで!?」
ダメだ、当然の行動だ。
俺だって逆の立場ならそうする。だって野放しに出来るわけねーもん、こんな力持ったやつ。
「さあ、覚悟なさい! 名も無きヴィラン……」
そうして、彼女の周囲にバチバチと電撃が帯電し始める。
「──この私!! 【ジャッジメント】の“トール”が、あなたを葬り去ってくれましょう!!」
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
【ダーク・ガジェット】の凄さを改めて実感していた所。
その代償として、初戦闘がヒーロー連盟の“隠し札”になってしまった。
厨二心が盛り上がってる場合では無かった。
間が悪すぎる男。幸運ランクE-。
★トール
──歳
──cm
──髪
秩序・善
女
【ジャッジメント】の一人。電気使い
たまたま、本当にたまたま近くにいて、嫌なプレッシャーを感じて様子を見に来た。
マジで偶然。近くと言っても数10キロメートル離れていたが、彼女の莫大な戦闘経験で鍛えられた察知能力で、それを感じ取れてしまっていた。
【ジャッジメント】としての戦闘経験から判断しても、凶悪すぎる実力を持ったヴィランを見つけてしまう。
野放しには、出来ない。断罪の為に。
<CM>
「俺の家がセーブポイントにされてるんだけど!?」
こちらの小説が、ハーメルンでも連載開始です!!
ネオページから転載許可は貰っています。
しばらく毎日更新中!
評価、お気に入りをしてもらえると、作者はとても嬉しくなります!
https://syosetu.org/novel/365124/