ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う?   作:新月

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休み貰っちゃったんだけど、どうすればいいと思う?

「──さーて、と。暇になっちゃったなー……」

 

 長官との会議を終えて、俺は廊下を歩いていた。

 先ほどの会議の最終的な結論を思い返す。

 

『──と、いう訳で。レッドは少なくとも、確定で二ヶ月は実質謹慎だから〜。この際、有給全部使ったらどうだい? 君全然使ってなくて、たまってるだろう?』

『すみません、イエローっす、私』

 

 と、長官に言われてしまい、俺の季節外れの夏休みのようなものが発生してしまった。

 大学の夏休みじゃねーんだぞ、と言わんばかりの長期休暇になってしまったが……実はヒーロー業って強敵との戦いの後、臨時有給休暇が普通発生するらしい。

 それを俺が全然使ってなかったからこんなありえない長さになってしまったとの事。

 

 だって仕方ねーじゃん、休日貰ってもやる事あんまりねーんだよ俺。

 強いて言うならブルーとのお出かけだったけど、最近一応ハニトラ警戒してそれどころじゃ無かったし……

 

「それにしても、出動以外の業務も休みかー……後輩の育成すら禁止とか……」

 

 さっきも言ったように、有給あまりにも使わなすぎだった。

 つまりは働き過ぎ。そう言われてしまったのだ。

 えー、体鈍るー、と思ってしまったが、あまりにも有給使わな過ぎて監査入るかも、と言われてしまえばどうしようもなかった。

 

 どうせならこの間の【リトル・ブレイブ】戦隊でももっと見てあげるかなーと思っていたので、それすら禁止されてしまったので本当にやれる事がなくなってしまった。

 

 ちなみに……

 

『大丈夫よレッド! 私も一緒に有給取るから!! 一緒に何処かお出かけしましょう!!』

『いや、君はダメだよグリーン。君比較的多めに既に有給使ってるんだから。レッド暫くいなくなるんだし、ペースはこれまで通りでいいから長期休暇は今は無理だよ?』

『ん、そっちはブルー』

 

 と、一緒に休もうとしたブルーは却下されていた。

 そんな〜!? と嘆いていたが、あれ多分ティアーとしての活動で定期的に休んでいたんだろうな多分……と思い至った為、カバーする必要無しと思ったので気にしない事にしている。

 

 ……ま。丁度いいか。

 

 俺はこの長期休みを、【ダーク・ガジェット】の調査に対して丁度いいと感じていた。

 ある意味、ヒーロー活動から完全に切り離された今がチャンス……

 その為にも……

 

 俺はある心残りを解消する為に、休憩室に向かって行った……

 

 ☆★☆

 

「──イエロー、いるー?」

「あ、レッド先輩!」

「ん、レッド」

「あ、グリーンさんもいたのか。まあ丁度いいか」

 

 俺は休憩室に入り、目的のイエローがいるかどうか声を掛けた。

 丁度イエローと、ついでに年長のグリーンさんもいた。これは丁度いい。

 

「ちなみに、ブルーとピンクは?」

「ブルー先輩は、長期休み却下されて泣きながら何処か行ったっす。気分を落ち着かせる為にお散歩中らしいっス」

「ん。ピンクはその付き添い。ブルーを慰めに行くって」

「あいつ、年齢半分以下の年下に慰められてんのか……」

 

 イエロー曰く、めっちゃエグッ、エグッ……と、泣きながら歩いていたらしい。

 レッドとのハワイ旅行がー、とか何とか口走っていたとか。

 何だよそれ、俺も行きてえよ畜生。いや、行けるかこの休み中? ちょっと考慮はしてみようっと。

 ブルーはまあしゃあねえ、副業してる自分を恨め。どっちが本業かもう分からねえけど。

 

「まあ、いいや。一旦あの二人は。後で合流した時に改めて説明すればいいし」

「それで、私に何の様っスかレッド先輩? わざわざ探してたっぽいッスけど」

「ん、俺も聞いていい話?」

「あ、はい。どうせ後で全員に話通さないといけない内容なので。先にイエローに意思確認しようと思いまして?」

「? なんっスか?」

 

 俺の言葉を聞いて、イエローは疑問符を上げたままの状態になっていた。

 そんなイエローに対して、俺はある提案をする。

 

「イエロー……

 

 

 ──【ジャスティス戦隊】の、リーダーをやってみるつもりはないか? 

 

 

「────え」

「──ッ?!」

 

 ……俺のその言葉に、イエローは呆けたような表情になっていた。

 今言われた事が、直ぐには理解出来ないらしい。

 

「いや、俺。2,3ヶ月は戻ってこないだろ? その間代理リーダーが必要だと思ったから、それをイエローに頼めないかなって思って。年長的にグリーンさんでも良かったんだけど、イエロー前からやって見たかっただろ? だったら、経験を積ませる為にお前に頼もうかなと思って」

「────え、あ……」

 

 一通り、思ってる理由をイエローに伝えるが、それでもイエローはまるで言葉が分からないようなレベルで、何も声を出せなくなっていた。

 あれ、そんなに衝撃的な事言ったか、俺? 

 とりあえず、念のため確認の意味を込めてもう一度イエローに聞いてみる。

 

「それで、どうだイエロー? 何だったら、もう一回説明した方がいいか?」

「────あ。え……あ、あの……わ、私、は……」

 

 「──駄目」

 

 ……その言葉は、グリーンさんから放たれた言葉だった。

 

「へ? グリーンさん?」

 「──駄目」

「いや、グリーンさん。これもイエローに経験を積ませると思って……」

 「──駄目」

「あー、もしかしてイエローにはまだ早いと思ってます? じゃあグリーンさんは自分がリーダー希望で──」

 「──駄目」

「……え。じゃあブルーかピンク? その二人にしていいんです──?」

 「──駄目」

「……ええー、じゃあ神谷長官に代理リーダーって事で……」

 

 「──駄目」

 

「────ええー……?」

 

 俺の言葉に、全却下し続けるグリーンさん。

 ええー……候補全滅したんだけど……? 

 

「ええー……じゃあ、誰ならいいんですかグリーンさん?」

「ん、“レッド”」

「だから、その俺がいなくなるんですけど!?」

 

 話聞いてましたこの人!? 

 俺最低でも2ヶ月は休暇だって、さっき聞いてましたよねえ!? 

 

「だから、その間の代理のリーダーを決める必要があるって話で……」

「ん、代理だろうと何だろうと、レッド以外のリーダーはヤッ」

「いや、ヤッて……」

 

 子供ですか、あなたは!? 

 と言うか、あなたもリーダー経験者でしょう!? 何文句こぼしてるんですか!? 

 

「あ、あの……」

 

 そうして、今まで黙っていたイエローがおずおずと手を上げて……

 

「や、やっぱり……私もまだ、レッド先輩がリーダーの方がいい、です……」

「ちょ、イエロー……」

 

 あーもう、これ完全にグリーンさんが文句言ったから、イエロー引いちゃったパターンじゃないですかー。

 どうして後輩の自信削ぐような事言うんですか、もー。

 

「大丈夫かイエロー? グリーンさんの言うことは気にしなくてもいいんだぞ? やりたいなら、やりたいって言ってもいいんだぞ?」

「いえ、あの……私も、レッド先輩以外のリーダーは、嫌です……」

「ええー……」

 

 何で……? イエローリーダーやりたがってたんじゃなかったの? 

 何で急にここにきてそんな……やっぱりグリーンさんが否定したから? 

 

「グリーンさん、やっぱりさっきの言い方はどうかと……」

「いえ、あの! グリーン先輩は関係ないです! これは私自身の意思です! 本当です! あっ。ッス!」

「そ、そうか……?」

 

 今更ながら語尾を思い出したかのようにッスっ付けするイエローの様子を疑問に思いながらも、一応その言葉を信じる事にした。

 にしても、ええー……? 

 そんなにリーダー俺にさせたいの? 

 いや、それほど俺に人気があるって事ならいいんだけど……めんどいから押し付けたとかじゃないよね? ねえ? 

 

「ったく、しゃーないですね……じゃあ、リーダーは俺のままでいいですから、俺がいない間のまとめ役は、グリーンさんでいいですか? 

「ん、それならいい」

「あ、はいっス」

 

 いや、いいんかい。

 グリーンさん達の基準が分からない……これ実質グリーンさんが代理リーダーでしょ? 

 変わってないの、俺の肩書だけでしょ? そんなに大事か? リーダーの肩書って……

 

「まあ、いっか……じゃあ、グリーンさんまとめ役お願いしますねー。俺はちょっと、ブルー達の方にも声を掛けに……」

「ん、レッド」

「何ですか?」

 

 部屋を出かけようとした俺に対して、グリーンさんは……

 

「──【ジャスティス戦隊】は、もうレッドがいてこその戦隊。君がいない戦隊は、もう【ジャスティス戦隊】じゃない。その事を、覚えておいて」

 

 ……そう真剣な表情で、伝えてきたのだった。

 

「……一人に依存する戦隊なんて、先が無いですよ。そもそも、戦隊って世代交代制じゃないですか」

「──ッ! ……それでも、替えの効かないメンバーだっている。もう君は、その心臓部だ」

「……あいにく俺は、ユニーク品より、量産品の方が便利だと思う事もありましてね。──選ばれた一つにだけ押し付けるなんて、冗談じゃない

 

「「…………」」

 

 そうして、互いに沈黙。

 部屋から出る直前の体勢のまま、俺とグリーンさんは睨み合っていた。

 イエローが声を出してくれなかったら、もう少しこのままだっただろう。

 

「え、あの……レッド先輩? グリーン先輩?」

「……すみません、今のは俺が悪かったです。つい喧嘩腰みたいになっちゃってすみませんでした……」

 

 俺は素直に、グリーンさんに向き直って頭を下げた。

 何やってんだよ俺……ただグリーンさんは俺の事を大事に思ってるだけだろうに、つい変に捉えちゃって……まるで【ガジェット】の話のように思い込むなんて……

 

「ん、こっちもごめん……ちょっと、怖くなっちゃって……」

「怖い?」

 

 そう聞くと、グリーンさんは、ん、と頷いて……

 

──なんか、レッドが何処か遠いところに行っちゃうような気がして……」

 

 ────…………っ

 

「────気にし過ぎ、ですよ」

「……そう、かな」

「はい、そうですって。縁起でもない」

 

 さて、と。俺は改めて、部屋の外を向いた。

 

「それじゃあ、俺はこれで失礼しますね。何かあったら連絡はするつもりなので」

「ん、定期連絡にするべき」

「あー……分かりましたよ。とりあえず定期的に連絡するつもりです。それじゃあイエローも、お疲れ様ー」

「あ、はい! お疲れ様っス!」

 

 そうして、俺は休憩室を出て行って、ブルー達の方に向かっていった。

 その後、駄々を捏ねるブルーを宥めながら、ブルーとピンクにも長期休暇前の最後の話をして、俺は本部を後にしたのだった……

 

 ☆★☆

 

 次の日。

 

 グリーンは、携帯をじっと見つめていた。

 今日はレッドの長期休暇の初日。だから連絡が来るだろうと思ったからだ。

 

 ──連絡は、来なかった。

 

 レッドの休暇の初日は、何も連絡が無しだった。

 

 

 ──二日目。

 

 連絡は、来なかった。

 

 ──三日目も。

 

 連絡は、来なかった。

 

 ──四日目、は──

 

 

 連絡は、来なかった。

 

 

 


 

 ★佐藤聖夜(さとうせいや)

 

 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 男

 

 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。

 

 音信不通状態に。

 次回、レッド視点で何があったのか。

 

 

 ★空雲雷子(そらくもらいこ)

 21歳

 167cm

 黄髪

 秩序・善

 

【ジャスティス戦隊】のイエロー。

 レッドの後輩。

 

 リーダーには、なりたかった。

 けれどそれは、いつかレッドから正式に受け継ぐと言う形で、貰いたかった。

 けどそれは、今じゃない。今はまだ、彼が上にいて欲しい。

 

 

 ★大地鋼(だいちはがね)

 

 34歳

 184cm

 緑髪

 秩序・善

 男

 

【ジャスティス戦隊】のグリーン。

 

 胸騒ぎが、現実となってしまった。

 暫くの間、彼はレッドが楽しく休暇を過ごしていると、みんなに誤魔化す事を選択する──

 

 自分自身が、その現実を認識したくないから。

 

 

 




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「俺の家がセーブポイントにされてるんだけど!?」
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 同作者の作品、
【因幡の月兎 不思議な靴を使った架空スポーツで、俺だけ空を跳んでいます】
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 1話リメイク致しました。以前より入りやすくなったと思います。
 こちらのお話も、よろしくお願いいたします。
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