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KDDI総合研究所 公開FTPサーバーの歩み

インターネット黎明期から30年以上運用し、インターネット上の様々な方々に活用いただいた、KDDI総合研究所の公開FTPサーバーを2025年6月30日で終了しました。KDDIの技術のひとつの歴史として、これまでの歩みや運用でのこぼれ話を紹介します。

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KDDI総合研究所 公開FTPサーバー(4代目)

【筆者】新保 宏之(しんぼひろゆき)
KDDI総合研究所で、6Gに向けた移動体通信システムに関わる研究開発に従事中。ただ、根本となる専門性はネットワークにあり、KDDI総合研究所 FTPサーバーの運用をメイン担当として20年近く従事。


KDDI総合研究所 公開(anonymous) FTPサーバーとは?

LinuxやBSDなどのOS、GNUやTeXなどのオープンソースソフトウェアを、配布元からコピー(ミラー)して公開するサーバー(ミラーサーバー)です。クライアントは遠い配布元サーバーではなく近いミラーサーバーから取得することで、高速なダウンロードや負荷分散が可能になります。世界中に配置されており、国内では理化学研究所、山形大学、IIJなどが有名です。ミラーサーバーは、運用している組織が帯域や資源を提供し、インターネット互助の精神で運用されています。ミラーサーバーは誰でもアクセスできるため、公開(anonymous)FTPサーバーともよばれます。なお、FTPサーバーと呼んでいますが、現時点ではhttp/httpsやrsyncなどftp以外の複数のプロトコルに対応しており、昨今ではほとんどがhttp/httpsでのアクセスとなっています。
 
KDDI総合研究所の公開FTPサーバーは、日本国内では有名なミラーサーバーで、オープンソースソフトウェアを活用してきた方々に利用いただきました。社内でも、40代以上の社員から「大学時代によく利用していた」との声が多く聞かれました。

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ミラーサーバーを活用することで高速なダウンロードが可能

KDDI総合研究所FTP公開サーバーの歴史

起源と提供プロトコルの変化

KDDIの前身である国際電信電話(KDD)の研究所がかなり早い段階からインターネットに接続していたこともあり、1990年代前半のインターネット黎明期に公開FTPサーバーの運用が開始されました。当初はFTPのみで、海外への接続帯域が狭い中、国内向けに高速にコンテンツを配信することが目的でした。この目的は最後まで大きく変わらず、KDDI総合研究所の公開FTPサーバーでは、国内やアジア圏の近接ネットワーク向けに各種アーカイブを提供していました。1994〜1995年頃にhttpサービスを開始し、2000年代前半にはIPv6やrsyncに対応しました。さらに、Webアクセス暗号化の世界的な流れを受け、2020年5月からhttpsにも対応しました。

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運用時のKDDI総合研究所 公開FTPサーバーのトップページ

ドメインと研究所体制の変化

公開FTPサーバーのドメインは、30年以上の歴史の中で、研究所の体制変化に伴い変遷し、最終的に ftp.kddlabs.co.jp=ftp.kddilabs.jp=ftp.kddi-research.jp=ftp.ne.jp となりました。

  • 初期は ftp.kddlabs.co.jp で開始

  • KDD本社がドメイン取得し、ftp.lab.kdd.co.jp に変更

  • 1998年、研究所の分社化で ftp.kddlabs.co.jp に戻る

  • 2001年、合併によるKDDI研究所への社名変更に伴い ftp.kddilabs.jp に変更。ドメインが変わるのに懲りて、公開FTPサーバー専用のドメイン ftp.ne.jp を併用開始

  • 2016年10月、合併によるKDDI総合研究所の誕生により ftp.kddi-research.jp に変更

サーバー機材と通信帯域

機材は、大容量かつ安定したストレージを安価に調達することを常に模索していました。

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 通信帯域は当初は200Mbps程度でしたが、2015年頃に1Gbpsの回線を追加しました。KDDI総合研究所のインターネット接続では、ベストエフォートではなく帯域が確保された回線を使用しています。 

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3代目のKDDI総合研究所 公開FTPサーバー

運用のこぼれ話

最近10年間のアクセスの変化

4代目FTPサーバーのhttp/https/ftpのアクセスログから、ここ10年のアクセス傾向を見てみました。

  • 2015年時点で既にhttpアクセスが主流となっており、ftpアクセスは徐々に減っています

  • 2020年からhttps対応を開始しましたが、徐々にhttpからhttpsへの移行が進んでいます

  • 特定のソフトウェアのリリースがあると、リリース時期にスパイク的にトラヒックが発生し、結果として年間トラヒック量が増加しています。この傾向は最近まで継続しており、配布されるソフトウェアのファイルサイズの増大に応じてトラヒック量も増えていました                                       例: Linux (Ubuntu, Debian, CentOS, openSUSE, kali), FreeBSD, KDE, LibreOffice

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2015年から2025年までの年間トラヒック量の推移
(2025年は1月から6月まで。数値はftpのトラヒック量)

30年以上の間にいろいろなことがありました…

運用の中では様々な出来事があり、特に印象深かったのは2011年3月の東日本大震災でした。建物やサーバーに被害はなかったものの、計画停電への対応が大変でした。研究所は一般的なオフィスビルと同じ電源環境のため、停電時間に合わせて公開FTPサーバーを含めたサーバー群の停止作業が必要で、担当者として毎日出社して対応しました。海外を含めて励ましのメールも多数頂戴し、大きな支えとなりました。
 
その他では、ハードウェアトラブル、バックホール回線の切断、ファイルシステムの論理障害がそれぞれ1回ずつ発生しました。論理障害への対応として、3代目まではext3を使用していましたが、4代目でxfsに変更し、定期チェックを導入しました。地道なメンテナンスにより、大きな障害はなく運用でき、担当者としてほっとしています。

KDDI総合研究所公開FTPサーバーの終焉

2025年5月、某国のハッカー集団が、実運用に向けて動作確認中の5代目公開FTPサーバーにアクセス成功とX上で投稿しました。実際は公開エリアへのアクセスで、サーバーへの不正侵入の事実はありませんでした。ただし、これを契機に以下の理由で停止を決定しました。

  • 会社方針: 公開FTPサーバーを運用することでのリスクとリターン

  • これまで問題はなかったものの、近年ハッキングが激化しており、セキュリティリスクが増えてきていること

  • インターネット環境の変化による、公開FTPサーバーの意義が低下(CDNの普及や海外帯域の強化)

  • 有志による運用維持が困難

2025年6月30日をもって、KDDI総合研究所の公開FTPサーバーは30年以上の歴史に幕を閉じました。長年のご利用と、運用へのご支援に深く感謝申し上げます。

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KDDI総合研究所 公開FTPサーバーの歩み|KDDI Tech note
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