DVやレイプ…利用者は「人生の限界点」 赤ちゃんポスト18年 慈恵病院に子を託す女性のリアル
撮影・取材:KKT熊本県民テレビ
「ここがなかったら自分は赤ちゃんと一緒に死んでいた」。親が育てられない子どもを匿名でも受け入れる『こうのとりのゆりかご』、いわゆる赤ちゃんポストに子どもを託した母親たちが語る言葉だ。自分を責めて、責め続けて、それでも生まれてくる赤ちゃんが幸せに生きてほしいと願い、行きついた場所が熊本にある。 開設から18年がたち、これまでに預け入れられたのは193人。病院の相談に寄せられた母親たちの実情には、社会の困りごとが詰まっていた。(取材・文:KKT熊本県民テレビ記者 藤木紫苑)
DVのある夫との間に…家族にバレずに子どもを託したいと願った母の思い
「何も言わずに立ち去ってしまいました。赤ちゃんのことが心配です」 数年前、慈恵病院の相談窓口に電話をかけてきたのは、熊本からは遠く離れた場所に住むアイさん(仮名)。その日、早い時間に『ゆりかご』に子どもを預け入れたが、保護されたのか心配で電話をかけたという。 アイさんの電話 「ある県の自宅で何時ごろに出産しました。1時間くらい休んだあとに『ゆりかご』に連れて行きました。赤ちゃんは何グラムでしたか?元気ですか?」 そして、なぜ『ゆりかご』に赤ちゃんを預け入れたのか、その理由を話し始めた。 「夫に殴られるし、暴言もあります。DVのある夫とやっと離婚が成立したところでした。でも、そのときに妊娠が発覚しました。離婚が成立していても、子どものことがバレたら元夫と関わらないといけなくなる。上の子どもがいるから、また元夫と関わるのが心配で妊娠期間中に誰にも言えず、病院も受診しないで、一人で出産して連れていきました」 アイさんにとって問題だったのは、当時、離婚から300日の間に生まれた子どもは元の夫との子どもと見なされていた「離婚300日問題」だ。やっとの思いで離れた夫と再び手続きや裁判などでつながりをもたなければいけない。病院で出産すれば出生証明証が発行され、子どもの存在や出産の事実が記録される。そうすれば、行政機関や家族から追われることになるかもしれない。元夫からは養育費ももらえていない中、すでにいる子どもに加えて新たな命を育てていくのには限界を感じていた。