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2025.06.25 14:00

生成AIを用いたイランの「プロパガンダ映像」がTikTokで3000万回以上も再生

2025年6月22日、イランのテヘラン中心街で、米国のイラン核施設への攻撃を非難するイランのデモ隊(Photo by Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

2025年6月22日、イランのテヘラン中心街で、米国のイラン核施設への攻撃を非難するイランのデモ隊(Photo by Morteza Nikoubazl/NurPhoto via Getty Images)

今から約1週間前の6月16日、トランプ米大統領がカナダで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)から予定を早めて帰国し、イスラエルへの「無条件降伏」をイランに要求した際、匿名のTikTokアカウントが2本の親イラン的なプロパガンダ動画を投稿した。

そのうちの1本は、複数の女性がコンピューターの前に座り、ロケットの発射準備をしているように見える映像だった。もう1本は、ミサイルを搭載した戦車の列がイランの国旗を掲げながらトンネルから出てくるビデオだった。

その数日後に、米国はイランの核開発施設を空爆し、中東での新たな軍事衝突に突入した。それと同時に、AIで生成したと見られるこれらの動画が、SNS上で急速に拡散した。データ分析プラットフォーム「Zelf」によれば、この2本の動画は、過去1週間のTikTok上のイラン関連の動画の中で最も視聴された15本に入り、2本合計で3000万回以上再生された後に削除された。

またこれら動画は、インスタグラムのReelsやYouTube Shortsにもそれぞれ100回以上投稿され、合計で数百万回の再生を記録した。TikTok、インスタグラム、YouTubeは、本物ように見えるAI生成コンテンツにその旨を開示するラベルの表示を義務付けているが、これら動画にはその表示がなく、一部の視聴者や動画をシェアしたユーザーは本物だと考えたようだった(筆者は以前にフェイスブックやスポティファイでコンテンツポリシーの職務に就いていた)。

YouTubeでは、女性たちとロケットの映像の投稿に「このチャンネルはこの動画の制作にあたり報酬や物品を受け取った可能性がある」との注意書きが表示されていた。別のYouTube投稿では、アラビア語で「いいねとチャンネル登録をお願いします」とのテキストが加えられていた。また、フェイスブックでは、このロケットの動画に対して、笑顔の絵文字のキャラクターを投稿したユーザーがいた。他にもハートや「賛成」の意思を示す反応が寄せられた。

プロパガンダ的投稿を禁止していないため、各国政府がAI生成動画を拡散

これらSNSプラットフォームはいずれも、誤解を招く内容の投稿や偽アカウントを用いた大規模なキャンペーンの一環でない限り、イランやイスラエル、米国などの国によるプロパガンダ的投稿を禁止していない。そのため米国を含む各国の政府は、AI生成のプロパガンダを使ってSNS上で自国の主張を拡散しており、イスラエルもガザでの戦争に関する大規模な有料広告キャンペーンを展開している。

フェイク映像が暴力を煽り、信頼関係を損なう可能性

それでも、SNS上に偽の戦争映像があふれることは、国家間や国民間の緊張を高め、人々の分断と現実世界での暴力を煽ることにつながりかねない。また、このような動画は、紛争地にいる人々の間の信頼関係を損なったり、何が現実かを判断したりすることを難しくしている。さらに最近では、テルアビブにミサイルが落下する様子や、テヘラン上空を飛ぶB-2爆撃機を描いたAI生成の画像や動画も拡散され、それらの一部は政府関係者や国営メディアによって共有された。

メタとTikTokはコメント拒否、YouTubeはラベル追加など説明

メタの広報担当者は、これら動画についてコメントを拒否した。YouTubeの広報担当ジャック・マロンは、これら動画は同社規則には違反していないとしつつも、リアルで誤解を招く可能性のあるAI生成動画には明確な注意書きを義務づけているため、同社がラベルを追加したと説明した。TikTokもコメントを拒否したが、フォーブスが取材を申し入れた後に、これらの動画を投稿していた匿名アカウントは削除された。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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経済

2025.06.24 08:00

ホルムズ海峡封鎖で原油価格さらに30%上昇も、米ゴールドマン

sokanae sawatdinak / Shutterstock.com

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米金融大手ゴールドマン・サックスは、米国の攻撃を受けたイランが報復として世界のエネルギー供給ルートの要所であるホルムズ海峡の封鎖に踏み切った場合、原油価格は数年来の高値に達する可能性があると警告している。

原油価格の代表的な指標(ベンチマーク)であるブレント原油価格は、米国によるイラン攻撃後、初の取引となった23日の午前10時(米東部時間)には1バレル77ドルと横ばいだった。

ここ2週間でブレント価格は15%上昇しているが、さらなる上昇圧力がかかる可能性があると、ゴールドマンは顧客向けのメモで警告した。

ゴールドマンは、イランがホルムズ海峡の封鎖に動き、同海峡を通過する原油量が少なくとも1カ月間半減した場合、ブレント原油価格は1バレル110ドル超まで急騰する可能性があるとみている。

1バレル110ドルというのは23日の高値をさらに30%上回り、2022年7月以来の水準となる。2022年にはロシアのウクライナ侵攻を受けて、米国などが原油生産量が世界第3位のロシアからの原油を制裁対象にしたため原油価格が上昇した。

ホルムズ海峡はペルシャ湾と外洋を結ぶ唯一の航路だ。石油を輸出する中東地域にとって重要なルートであり、米エネルギー省によると、2024年には世界の石油消費量の約20%に相当する量がホルムズ海峡ルートで運ばれた。「ホルムズ海峡が封鎖された場合、同海峡に代わって石油を運ぶルートはほぼない」とエネルギー省は16日付の分析で指摘している。

イラン国営メディアは、米国の攻撃を受けてイラン国会がホルムズ海峡の封鎖を承認したと報じた。ロイター通信によると、少なくとも2隻の超大型石油タンカーが23日に同海峡付近で引き返した。イランは世界第9位の産油国だが、米国に次ぐ産油国であるサウジアラビアが輸出する原油の約半分が通過するホルムズ海峡に近いという地の利から中東のエネルギーに対して大きな影響力を持っている。

原油価格の上昇はインフレ率上昇を招く可能性がある。米銀大手JPモルガン・チェースのエコノミストらは先週、ブレント価格が今夏75ドル超で推移すると、世界の消費者物価指数(CPI)が2%上昇するとの見方を示した。関税によるインフレ上昇が危惧されている米国にとって、エネルギー価格上昇の見通しは懸念材料だ。

ドナルド・トランプ米大統領は23日、SNSへの投稿で石油企業を牽制した。「石油価格を抑えろ。私は見ている!敵の思うつぼだ。石油価格を上げるな!」

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イランによるホルムズ海峡封鎖が困難と考えられる3つの理由

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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北米

2025.04.25 13:00

ロシアの偽情報を米国人の3分の1が信じる 「憂慮すべき割合」と調査機関は指摘

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米国人の3分の1が、ロシアの偽情報やその他のネット上のデマにだまされている。

ニュースサイトの格付け機関ニュースガードの委託を受けて調査会社ユーガブが実施した全米調査では、代表的なサンプル1000人を対象に、ネット上で広く拡散されている10のデマについて質問した。そのうち3つは、ロシアのメディアから発信されたか、主にロシアのメディアによって拡散されたものだった。

回答者には、それぞれの主張について「真実」「虚偽」「わからない」のいずれかに印を付けてもらった。すると米国人は健康や医療、選挙、国際紛争に関する虚偽の主張とともに、ロシアの偽情報に「憂慮すべき割合」でだまされていることがわかった。

まず提示された10の虚偽主張のうち、78%の回答者が少なくとも1つは信じており、10の主張すべてを「虚偽」と正しく認識できていた人は100人に1人もいなかった。そのうちロシアのメディアが発信、または主に広めた3つの虚偽主張については、少なくとも3分の1の回答者が1つの主張が真実であると信じていた。

さらに4分の1は、米国のウクライナ向け支援金の最大半分がウクライナ政府高官によって横領されていると信じていたほか、半分以上の人が、ウクライナは米国から供与された武器をパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスに横流ししていると、誤って認識していた。

新型コロナウイルス感染症のワクチンによって世界全体で730万〜1500万人が死亡したという主張について、虚偽だと正しく認識していた回答者は半数に満たず、5人に1人は「真実」と答えていた。

こうした主張は、専門家から恣意的とされている数字に基づいており、調査や研究に依拠したものではない。

ニュースガードは、質問した新型コロナ関連の虚偽情報について、ワクチン接種後に発生した有害事象に関する未検証の報告を集めている米政府のデータベース、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に報告された死亡例の「不正確な分析」に基づいていると指摘している。

「この分析は投資運用会社ブラックロックのポートフォリオマネジャーだったエドワード・ダウドが行ったものであり、彼は医学のバックグラウンドを持たず、かねてより新型コロナワクチンについて虚偽の主張をしてきた」とも言及している。

次ページ > 「虚構側が優勢にある」

翻訳・編集=江戸伸禎

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