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2025.07.10 12:00

イランが中国製防空システムを取得か ロシアは中東の兵器市場でも退潮

中国広東省の珠海市で開かれた航空ショーで展示された中国製の防空システム「紅旗-9B(HQ-9B)」。2024年11月14日撮影(ONG WEI / Feature China/Future Publishing via Getty Images)

中国広東省の珠海市で開かれた航空ショーで展示された中国製の防空システム「紅旗-9B(HQ-9B)」。2024年11月14日撮影(ONG WEI / Feature China/Future Publishing via Getty Images)

最近の報道が正確だとすると、中国は中東・北アフリカという儲かる兵器市場、なかでも防空システム分野でロシアに大きな競争を仕掛け始めている。

ロンドンに拠点を置く中東専門メディア、ミドルイースト・アイ(MEE)は7日、アラブの国の当局者の話として、イランが6月のイスラエルとの十二日戦争以降に、中国製の地対空ミサイルシステムを受け取ったと報じた。受け取ったシステムの種類や数は不明だが、イラン側は代金を石油で支払っているという。

中国にはたとえば、ロシアのS-300地対空ミサイルシステムの自国版である紅旗-9(HQ-9)というシステムがあり、その射程延伸型として紅旗-9B(HQ-9B)もある。輸出版はそれぞれFD-2000、FD-2000Bと名づけられている。

とくにHQ-9B/FD-2000Bがイランに時宜にかなって引き渡されたのであれば、ロシアに強いメッセージが送られた格好になる。これまでイランが輸入した最も先進的な防空システムは、2016年に受領したロシア製S-300PMU-2だった。しかし、2024年の4月と10月に行われた2度のイスラエルによる攻撃で、イランの保有するS-300はすべてとまでは言わずとも大半が無力化された。しかもイスラエル側には損害が出なかった。そして6月の十二日間戦争で、残っていたS-300の構成要素もおそらくことごとく破壊された。イランはこれらのミサイル防衛システムにざっと10億ドル(現在の為替レートで約1460億円)を支払い、納入までに10年近く待たされていた。

イランはS-300の性能に失望しているだけでなく、ロシアに数年前に発注し、支払いも済ませたSu-35「フランカー」戦闘機がいまだに納入されないことにも苛立っているに違いない。こうした不満に加え、防空能力の再建が急務なことから、イランは中国製のJ-10C(殲-10C)「ビゴラス・ドラゴン(猛龍)」戦闘機の入手にも動く可能性がある。ニーズが切迫しているこの時期に、中国から地対空ミサイルが迅速に納入され、イランがそれに満足しているのであれば、その可能性は高くなる。

次ページ > エジプトも中国製防空システムを取得

翻訳・編集=江戸伸禎

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2025.07.08 12:00

イスラエルはイランの「空の占領」に動くか 負担大きく危険な行動

イランの首都テヘランで2025年6月15日、イスラエルの攻撃を受けて炎上するシャフラン石油貯蔵施設を眺める人たち(Stringer/Getty Images)

イランの首都テヘランで2025年6月15日、イスラエルの攻撃を受けて炎上するシャフラン石油貯蔵施設を眺める人たち(Stringer/Getty Images)

イスラエルは6月の「十二日戦争」でイランに対して得た戦略的優位、なかでも航空優勢を確保し続ける意思を示している。イスラエルはそのために宿敵イランに対して「空の占領(air occupation)」を行う可能性もある。これはほんの数週間前には想像すらしがたかった動きだ。

「地上戦の不在」が十二日戦争の特徴

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は6月末、X(旧ツイッター)への投稿で「イランに対する強制措置計画の作成」を軍に命じたと明らかにし、それには「イスラエルの航空優勢の保持、イランの核開発の進展およびミサイル生産の阻止、イランによるイスラエルに対するテロ活動支援への対応」が含まれると説明した。

「われわれはこのような脅威を阻止するために継続的に行動していく」とも言明した。

カッツは「空の占領」という言葉こそ使わなかったものの、イスラエルが航空優勢の保持や、イランによるこれらの試みの阻止を図るとなれば、必然的に空の占領が求められることになるかもしれない。

イランに対する空の占領に類する先例としては、パレスチナ自治区のガザ地区やレバノンに対するイスラエルの航空支配、サダム・フセイン政権下のイラクに対する米国主導の飛行禁止区域(NFZ)の設定(1991〜2003年)などが挙げられる。だが、イスラエルがイランの領空を占領し、それを長期にわたって維持しようとする場合、兵站面の課題はこれらよりも難しいものになる。

中東専門の学術誌ミドルイースト・クォータリーの編集者ジョナサン・スパイヤーが指摘するように、「地上戦という要素の不在」が十二日戦争の特徴だった。イスラエルの北の隣国レバノンに拠点を置くイスラム教シーア派組織で、イランの軍事的に最も強力な代理勢力だったヒズボラは、戦争全体を通じて参加できなかった。これに先立つ2024年9月から11月にかけての紛争で、イスラエルによって致命的な打撃を受けていたからである。イスラエルは、イラン国内に潜伏して戦略目標に対して短距離ドローン(無人機)を飛ばす工作員を除けば、圧倒的に航空戦力に頼ってイランの戦略目標や指導部目標を攻撃した。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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2025.07.03 13:00

イスラエルの防空システムはイランの弾道ミサイルをどのくらい防げたのか? 戦績と戦訓

イスラエルの最大都市テルアビブで2025年6月21日、イランから発射された弾道ミサイルをイスラエル空軍の防空システムが迎撃する様子(Eli Basri/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

イスラエルの最大都市テルアビブで2025年6月21日、イランから発射された弾道ミサイルをイスラエル空軍の防空システムが迎撃する様子(Eli Basri/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

6月の12日間にわたるイスラエル・イラン戦争では、前例のない2つの空中戦が並行して繰り広げられた。ひとつは、イスラエルの戦闘機やその長射程弾薬と、イランの大規模ながら時代遅れの防空システムとの戦い。もうひとつは、イランの準中距離弾道ミサイル(MRBM)と、イスラエルの先進的にして戦闘で試されてきた防空システムとの戦いである。

この記事では後者の空中戦について取り上げる。この戦いは主に、イランのイスラム革命防衛隊航空宇宙軍のミサイル部隊と、イスラエル国防軍航空宇宙軍の防空司令部との間で行われた。

イランのミサイル戦力とイスラエルの防空戦力

有人機での長距離攻撃を確実に遂行できるような航空優勢も得られそうになければ、そうした攻撃のための航空機もない軍隊にとって、弾道ミサイルは魅力的な兵器になる。弾道ミサイルは、より低い高度をより低い速度で飛行する巡航ミサイルや自爆型のドローン(無人機)と異なり、戦闘機による迎撃はまず不可能であり、最も先進的な防空システムでなければ撃墜が難しい。

イランは1990年代以来、イスラエルを射程に収めるMRBMの開発に注力し、発射準備時間の短縮や命中精度の改善も図ってきた。イランのMRBM保有数は長年、控えめなものにとどまっていたが、2020年代に急増し、およそ2000~2500発まで積み増したと推定される。イランの代表的なMRBMシリーズには、「エマド」、「ガドル」、「デズフル」、「ホッラムシャフル-4(別名ケイバル・シェカン)」、旧型の「シャハブ-3」(実質的には大型版「スカッド」)、終末誘導段階で機動する能力を持つ最新の「ファタフ-1」および「ファタフ-2」などがある。一部はクラスター弾頭も搭載可能なようだ。

イランはこれらの弾道ミサイルを、「スーマル」やその派生型の「パベフ」といった巡航ミサイルの小規模な備蓄、多数の長距離自爆ドローン、そしてミサイル搭載型の戦闘ドローンで補完している。

一方のイスラエルは、1991年にイラクからスカッドミサイルで攻撃されて以来、米国と共同開発した、ミサイル防衛能力を持つ多層式の統合防空システムに投資してきた。イスラエルは国土が狭いので、重層的な防空層で国全体を密に覆うのが比較的容易だった。

次ページ > イスラエルの多層防空システムをおさらい

翻訳・編集=江戸伸禎

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