「日本人ファースト」を掲げる参政党の候補者は参院選の街頭演説で「外国人は生活保護を受給する権利がない」と指摘した。その上で日本人は受給申請しても「門前払い」だとして「外国人ばっかりというのはおかしい」と不公平を訴えた。
だが、発言には正確な部分と、間違っている部分が交ざっており、全体として正確性を欠いている。
同調するコメント続く
演説したのは神奈川選挙区に立候補している初鹿野(はじかの)裕樹氏。公示日の3日、横浜市内で上げた第一声で「外国人は生活保護を受給する権利がないにもかかわらず保護という観点で(受給している)。日本人はなかなか受給できないのに、外国人はすぐさまもらえてしまう」「日本人が困っているのに、餓死しているのに、外国人ばっかりというのはおかしい」と述べた。
交流サイト(SNS)では、「外国人の方が生活保護の審査ゆるゆるなのは事実だし、生活保護受けたくても突っぱねられる日本人はたくさんいるのに……」などと、初鹿野氏に同調するコメントが続いた。
法の対象は国民に限定
生活保護法は1条で「生活に困窮するすべての国民に対し必要な保護を行う」と規定しており、受給者の対象は「国民」に限定される。ただ、厚生省(現厚生労働省)は1954年に、外国人は生活保護法の対象にならないとしつつ、困窮する外国人には日本人への生活保護の取り扱いに準じて措置すると通知。これに基づき、自治体は永住者や日本人の配偶者など一定の在留資格を持つ外国人らを対象に、行政措置として生活保護を支給してきた。
永住資格を持つ外国人が日本人と同様に生活保護法の適用対象になるか争われた訴訟があり、最高裁判決(2014年)は「生活保護法が適用される『国民』に外国人は含まれない」「外国人は、行政措置による事実上の保護の対象にとどまり、法に基づく受給権を持たない」と判断した。
これらのことから、初鹿野氏が述べた「外国人は生活保護を受給する権利がない」という部分は正しいと言える。
一定資格の外国人に支給、否定されず
しかし、最高裁判決も、自治体が人道上の判断に基づき一定範囲の外国人に生活保護を支給する運用を否定はしていない。
外国人ばかり受給しているとの言説についてはどうか。厚労省によると、25年4月時点で生活保護を受給した世帯は全国で164万3444世帯で、このうち外国人が世帯主の家庭は4万7206世帯と2・9%にとどまる。この割合は、20年度2・9%、15年度2・9%、10年度3・0%と、15年さかのぼっても大きな変化はない。
大阪市保護課によると、市内に住む外国籍の生活保護受給者は21年12月に8907人だったが、毎年減少し、24年12月で8443人だ。一方でこの3年間に外国籍の市民は約5万人増えている。「外国人ばっかり」という実態は見て取れない。
厚労省に尋ねても、審査では外国人だからといって優遇することはないと否定した。
初鹿野氏は「我々の税金で外国人が生活保護をもらったりして、年間1200億円くらい」とも述べたが、厚労省は「年間1200億円に該当する数字は厚労省から示したものはない」と取材に回答しており、根拠が不明だ。
厚労省「公的機関の情報、確認を」
厚労省の担当者は「生活に困窮する外国人については、人道上の観点から、日本人と同様に国内で制限なく活動できる永住者、定住者ら一定の在留資格を有する場合について、行政措置として、生活保護の取り扱いに準じた保護をしている。生活保護の仕組みや統計データについては、公的機関の情報を確認してほしい」と話している。【参院選取材班】
初鹿野氏の第一声
参院選神奈川選挙区に立候補している参政党新人、初鹿野裕樹氏は3日、横浜市中区での第一声で、外国人と生活保護について以下の通り、訴えた。
我々日本人がどんどん、どんどん疲弊して貧しくなっている。別に外国人を差別するつもりはないですよ。外国人とこの日本人、この日本で仲良くしていきたい。
しかしね、日本人が本当に苦しんで、本当にね、訴えているにもかかわらず、例えばね、北九州のね、小倉や門司で、生活保護の受給者が一方的に支援を打ち切られて餓死したり、申請に行っても門前払いでミイラになったり、日本人が一生懸命働いて一生懸命税金を納めて、そしてね体壊して、生活保護くださいと言ったらもう門前払いですよ。餓死してミイラになる。
しかし我々の税金で外国人が生活保護をもらったりして、年間1200億円くらい。外国人は生活保護を受給する権利がないのにもかかわらず、保護という観点で。日本人はなかなか受給できないのに、外国人はすぐさまもらえてしまう。
お隣のね、中国から48名の方々が生活保護をもらうために日本にね、渡航してきて、32名の方がいっぺんに通った。日本人がなかなか通らないのに、おかしいじゃないですか。
別に外国人を助けることはいいんですよ、我々反対してないです。だけれども日本人が困っているのに、餓死しているのに、外国人ばっかりというのはおかしいんじゃないかと。まずはね、日本人を助けてもらいたい。こんな当たり前のことを言ってる政党なんです。
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ファクトチェックの判定「不正確」
第一声で支持を訴える参政党の新人、初鹿野裕樹氏=横浜市中区で2025年7月3日午前11時12分
参政党候補の発言を受けて「外国人の方が生活保護の審査ゆるゆる」と同調するX(ツイッター)の投稿=画像の一部を加工しています
最高裁判所=東京都千代田区隼町で、本橋和夫撮影
厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影
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