座間9人殺害事件で死刑執行、識者の見方は 「死刑維持の意思表示」「類似事件への警鐘」、足りない情報公開に危機感も
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× × おの・いっこう 1966年福岡県生まれ。数々の事件や紛争、災害現場を取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。著書に、白石死刑囚の事件を扱った「冷酷」、「完全ドキュメント 北九州監禁連続殺人事件」など。 ▽理解が不十分なのに、死刑判断を求められる重圧―元裁判員・田口真義さん この時期に死刑を執行したことには、3年間の空白期間をつくりたくないという、政府の強い意思を感じます。世論調査で死刑制度が支持されているという認識を踏まえ、執行のないことが常態化するのを避けたかったのでしょう。しかし、十分な情報公開がないまま死刑が続いている状況に、変わりはありません。 2014年と24年に、裁判員経験者の有志で、死刑の執行停止を求める法相宛ての要請書を提出しました。死刑制度への反対が目的ではなく、死刑について十分な理解がないまま裁判員が評議に臨んでいるのはおかしいとの思いからでした。
裁判員経験者と交流する中で分かったのは、裁判官ですら死刑に関する実情をあまり知らずに、量刑を決めているという恐ろしい現実です。そうした中で命を奪う判断を求められる裁判員の重圧は、容易に言語化できるものではありません。 要請書に対して、法務省からは何の反応もありません。裁判員制度は「司法に国民の声を反映させる」として始まったのに、裁判員からの要望を無視するのは、制度そのものの否定です。人々が死刑の実態を知ることで、漠然とした賛成意見が揺らぐのを恐れているのではないかとすら思います。 ▽正確な情報公開不可欠 密室判断、制度正当性失う 鈴木馨祐法相は臨時記者会見で、今回の執行について「慎重な上にも慎重な検討」を加えて命令したと述べました。しかし、国民の声に耳を貸さず、議論を拒み続ける現状に、その言葉は空虚に響きます。政府は、死刑が世論の支持を得ていると主張しますが、根拠の薄さと責任の転嫁を感じざるを得ません。世論を理由にするのであれば、まずは正確な情報公開が不可欠です。
制度の正当性は、密室での判断ではなく、公開と議論によって支えられるべきです。制度をただ延命させるために、社会的反発の少ない事件を選んで、ほそぼそと死刑執行を続けていく。それでは正当性どころか論理性も失われてしまいます。死刑に賛成か反対か以前に、その根拠と運用の実態を問うこと。それが、いま求められているのではないでしょうか。 × × たぐち・まさよし 1976年東京都生まれ。2010年に東京地裁で裁判員を経験したのを機に、不動産業の傍ら、裁判員経験者たちとの交流を重ねる。