座間9人殺害事件で死刑執行、識者の見方は 「死刑維持の意思表示」「類似事件への警鐘」、足りない情報公開に危機感も
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× × いだ・まこと 1956年東京都生まれ。慶応大大学院修了。慶応大教授などを経て、2016年から現職。法制審議会会長などを歴任。専門は刑法。 ▽不安をそらす「ガス抜き」―ノンフィクション作家・小野一光さん 白石死刑囚には、2020年7月から9月にかけて、拘置所で11回面会しています。これまでに7人の死刑判決を受けた被告と面会していますが、執行されたのは白石死刑囚が2人目です。残酷な事件を起こしたとしても、直接顔を合わせた人間が国家によって命を絶たれた事実は、とても重く感じています。 今年に入ってからも交流サイト(SNS)を通じて自殺願望のある人を狙うという、白石死刑囚の犯行と同じ構図の事件が発覚しています。今回の死刑執行は、政府が「こうした事件は許さない」と警鐘を鳴らす意図もあったのかもしれません。 ですが、それ以上に「国家によるガス抜き」という目的が大きかったのではと思います。社会保障が機能不全に陥り、世間の不安が高まったとき、国家は「社会の安全」を可視化することで安心感を演出する。「悪人を罰する」という姿勢を見せることで、不満や不安をそらそうとしたのではないでしょうか。
▽きちょうめんな死刑囚が語った“本音” 私は死刑制度には懐疑的です。被害者遺族への取材では「死刑が執行されても何も変わらない」という声が多かった。抑止力としての効果も証明されていません。死刑執行に携わる人たちの負担も問題です。 しかし、日本で死刑が廃止されるのは簡単ではないとも思います。「税金を使って凶悪犯を生かしておくのか」という意見もありますが、それよりはるかに大きい税金の無駄遣いはいくつもあります。そうした批判をそらすために、政府が死刑を利用している気もします。 白石死刑囚には特異なきちょうめんさがあり、自分にとって不利なことでも率直に話すところがありました。死刑への不安について質問すると「正直、痛いのは嫌だなって感じです」と、顔をしかめながら答えたのが印象に残っています。 それは決してうそではなく、本音だったと思います。詳細を知るすべはありませんが、実際にそう考えながら刑場に連行され、あらがうことなく刑に服したのではないかと想像しています。