座間9人殺害事件で死刑執行、識者の見方は 「死刑維持の意思表示」「類似事件への警鐘」、足りない情報公開に危機感も
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神奈川県座間市の9人殺害事件で死刑が確定していた白石隆浩(しらいし・たかひろ)死刑囚(34)に6月27日、刑が執行された。2022年7月から空白期間が続いていた死刑執行が再開されたことになる。死刑制度に対しては、日本国内や海外から批判や見直しを求める意見がある一方、世論調査では支持する意見が多数となっている。今回の執行をどう受け止め、死刑制度の議論を今後どう進めていくべきか。3人の識者に見解を聞いた。(聞き手=共同通信編集委員・佐藤大介) 【動画】座間9人殺害で死刑執行 白石確定囚
▽「政治的」な執行だった―中央大大学院教授・井田良さん 今回の死刑執行は、とても「政治的」という印象です。死刑確定者だった袴田巌さんが再審で無罪となり、再審制度の法改正に向けた議論が始まるなど、死刑制度を見直そうという機運も高まっていました。その時期に、しかも国会会期の終了後に、反対が起きづらい事件を選んで「死刑制度は今後も維持する」という意思表示をしたと言えます。 執行の空白期間が3年を超えると死刑制度そのものが揺らいでしまう、との考えがあったのでしょう。参議院選挙を前に、保守派から「自民党はちゃんとしている」といったような評価を得られるという計算があったのかもしれません。 しかし、制度の見直しを拒んでまで、なぜ死刑制度を維持しようとするのか、その明確な理由は分かりません。法務省は「法に従って粛々と執行している」と言うかもしれませんが、「粛々」とは邪念を入れずにやっていくということで、今回のように、政治的な影響を考えて執行時期やその対象を選ぶこととは違います。
▽頑なに議論拒み続ける政府 「熟議民主主義」に程遠い 深刻なのは、政府が死刑制度に関する議論自体を拒んでいるということです。正面から議論をすると負けてしまう、自信がないので議論をしない、とすら思えてしまうほどの頑なさです。 これは日本の民主主義を象徴する問題です。国民の8割が死刑に賛成していると言われますが「熟議民主主義」という観点から考える必要があります。ある問題について支持または反対する論拠は何か、どのような解決があるのかということを広く議論し、得られた合意に基づいて政治や社会を動かしていくことを理念とすべきです。 しかし、死刑の議論はそうではありません。政府が死刑の詳細を明かさず、立ち入った検討を拒み、ただ8割という空気のような数字を根拠に制度を維持しようとするのは、熟議民主主義の理念から遠く離れたものです。日本社会が死刑制度をどう考えていくべきか。政治家や官僚や一部の専門家に任せるのでなく、国民全体で広く議論することが必要です。