圧倒的な数の「財布」が抜け穴に? 企業からの献金、96%が自民党
政治家本人は、企業から献金を受けてはならない――。四半世紀前、癒着を防ぐ目的でそんなルールができた。だが、現状を調べてみると、「政党への献金」という名目のもと、政治家個人が資金を集められる「財布」が数多く設けられている実態が浮かんできた。
自民党派閥の裏金問題を受け、6月22日に閉会した通常国会では、企業や団体から政党への献金のルールをどう見直すのかが大きな焦点の一つとなった。しかし、各党の思惑がすれ違い、結論が得られないまま先送りされた。
朝日新聞は、2024年秋に総務省や都道府県が定期公表した23年の政治資金収支報告書をもとに、主要5政党への企業・団体からの献金の状況を調べた。対象としたのは、企業・団体献金の受け取りが認められている「政党本部」と「政党支部」、政党が一つだけ指定できる「政治資金団体」の合計7673団体。調査では、シンクタンクの一般社団法人「政策推進機構」(東京都中央区、西田尚史代表)の協力を得た。
分析の結果、5政党には2万1487の企業・団体から計約83億円の献金があった。政党別では、96%にあたる約80億円が自民党へのものだった。立憲民主党が約1億6千万円(2%)、国民民主党が約7千万円(1%)、公明党が約6800万円(1%)。企業・団体献金の禁止を掲げる日本維新の会はゼロだった。
自民党への80億円、うち7割が「政党支部」に
なぜ、自民への献金が圧倒的に多いのか。要因の一つに、資金の受け皿の違いがある。
自民党への献金の7割近くにあたる約56億円は、全国に1702団体ある政党支部が受けていた。うち約23億6600万円は「○○県第一選挙区支部」のように衆参の選挙区ごとに置かれた支部(347団体)に入っていた。こうした支部は国会議員や候補者が代表に就くのが一般的だ。
選挙区単位の支部のほか、各都道府県単位や「○○市第一支部」といった市町村単位など、地域に細かく張り巡らされた拠点が、政治資金を集める「財布」になっている。
これに対し、他党で企業・団体献金を受けていた政党支部は立憲が73団体、公明が205団体、国民が24団体にとどまる。
禁じられた「政治家個人への献金」 実態は続いている?
なぜ、政党支部に多くの企業から献金が集まるのか。それは、企業から政治家個人への献金が禁じられていることと表裏の関係にある。
企業から政治家個人への献金を禁止するルールが始まったのは2000年。それまでは政治家個人の財布である「資金管理団体」への献金が認められていたが、政治家と企業がカネを通じて癒着するケースが相次ぎ、見直された経緯がある。
ただ、政党支部の代表には政治家が就くことが多く、個々の政治家の「第二の財布」として規制の抜け穴になっているとの指摘は絶えない。政党支部から議員個人には無制限に資金を移動させることが可能で、多額の資金が必要になる選挙前などに、政党支部から議員個人に資金を動かすケースは少なくない。
朝日新聞が昨年、自民党の国会議員が代表の政党支部に献金する企業にアンケートしたところ、回答があった258社のうち、献金の目的を「議員個人の応援」とする回答が165社に上った。
理念と実態の隔たりが指摘される中、公明党と国民民主党は当初、献金の受け皿とできる政党支部を各都道府県に一つだけに限定する案を打ち出した。ただ、自民側との協議を経て、政治資金収支報告書をオンライン提出することなどを条件に、支部への献金も存続させる方針に変わった。
岩井奉信・日本大名誉教授(政治学)は、「政党支部の多くは現実には政治家個人のものになっており、賄賂性のある資金提供を防ぐための過去の改革の考え方に反する」と指摘。「献金を受け取れる支部は都道府県単位にとどめ、実態として政治家と企業が直接的に資金をやりとりしている現状を改めるべきだ」と話す。
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