関西中心1府6県病院拠点のドクターヘリ 整備士不足で運航休止

関西を中心とした1府6県の病院を拠点とするドクターヘリが、運航する会社の整備士の不足を理由に最大1週間、運航できない状態になっていることが分かりました。医療現場からは救命活動への影響を懸念する声が上がっています。

ドクターヘリは救急医療に必要な機器や薬を備えたヘリコプターで、乗り込んだ医師や看護師がいち早く初期治療にあたることができ、現在、全国で57機が運用されています。

このうち8機のドクターヘリを運用する関西圏の自治体などでつくる「関西広域連合」によりますと、9日、運航を委託している会社から「ドクターヘリに同乗する整備士が確保できず、今月から来月にかけて、一時的に運航できなくなる」と連絡があったということです。

整備士は、国の研究班などが作った運航基準で操縦士の補佐を行うため配置することが定められています。

運航を休止するのは、大阪や和歌山、鳥取など1府6県の病院を拠点とするドクターヘリで、このうち、和歌山県の病院では9日から、滋賀県の病院では10日から休止しているということです。

運航休止の期間は4日から最大1週間で、まだ期間が決まっていない病院もあるということです。

関西広域連合によりますと、運用するドクターヘリは昨年度およそ4400回出動していて、これだけの規模で運航を休止するのは初めてだということで「ドクターヘリは救急医療の提供体制に重要な役割を果たしている。運航会社には改めて運航を継続するよう要請している」と話しています。

一方、運航を委託されている神戸市の「ヒラタ学園」は「関係者や地域住民にご迷惑をおかけし、事態を重く受け止めています。しっかりと人員の確保を行い、継続した運航ができるよう全力で取り組んでまいります」とコメントしています。

ドクターヘリ運航休止の病院は

「関西広域連合」によりますと、ドクターヘリを運航する会社から運航を休止すると連絡があったのは、1府6県の病院を拠点とするドクターヘリです。

▽和歌山県の和歌山県立医科大学附属病院は9日~15日
▽滋賀県の済生会滋賀県病院は10日~13日
▽奈良県の奈良県立医科大学附属病院は今月16日~22日
▽鳥取県の鳥取大学医学部附属病院は今月22日~28日
▽大阪府の大阪大学医学部附属病院は今月24日~30日までそれぞれドクターヘリが運休するということです。
このほか、
▽兵庫県の県立加古川医療センターと公立豊岡病院
▽徳島県の徳島県立中央病院は時期は未定で、来月運航を休止する可能性があるということです。

大阪大学医学部附属病院「治療に遅れ出ないか影響懸念」

今月24日からドクターヘリの運航が休止する大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターの織田順センター長は「ドクターヘリは陸路に比べて早く現場にかけつけられるので、例えば、すぐに止血が必要な患者など、緊急性の高いけがや病気の治療に遅れが出ないか影響を懸念している。このようなことは初めてで、同時に複数の病院で運航を休止してしまうところもあるので、万が一、災害が起きた際の連携体制にも不安がある」と指摘します。

そのうえで、整備士の不足で運航が休止する事態になっていることについて「われわれとしては必要な患者さんがいても体制が整うまで待つしかないという歯がゆい状況だ。ヘリの運航は安全第一なので、周辺地域と連携をとりながら、カバー体制を整えていきたい」と話していました。

ドクターヘリとは

厚生労働省によりますと、ドクターヘリは阪神・淡路大震災をきっかけに必要性が検討され、平成13年に国内で初めて本格的に運用が始まりました。

現在はすべての都道府県で対応できるように整備され、全国で57機が運用されています。

ドクターヘリは時速200キロほどで飛行し、交通事情に左右されないため救急搬送時間が短縮できるほか、乗り込んだ医師や看護師がいち早く初期治療にあたることができます。

日本航空医療学会によりますと、事故や心筋梗塞などの急病で一刻を争う患者のほか、へき地や離島の患者の搬送を担っていて、一昨年度は1年間で3万7000件余りの出動要請があり、救急医療の現場では欠かせない存在となっています。

ドクターヘリには国の研究班などが作った運航基準で操縦士の補佐を行うため整備士を配置することが定められています。

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