福井市役所

 福井県の福井市が、退職職員による業務への不当な働きかけを防ぐために設けている再就職届け出制度で、2023、24年度の2年間の届け出は計11人にとどまることが、11日までに同市への情報公開請求で分かった。届け出が求められる再就職先は入札参加資格を持つ企業のみで、市の福祉事業を巡る情報漏えい事件で情報提供を依頼した元市職員の再就職先でもあった社会福祉法人は制度の対象外だった。届け出件数について市は、実際の再就職件数より少なく、届け出漏れの可能性があるとみており、規定と運用の両面で退職管理の甘さが浮き彫りになった。

 福井市では、元副市長が福祉部長だった22年、市が公募した介護サービス事業者の情報を、元市職員で社会福祉法人職員の男性の依頼に応じて選定前に漏らしたとして地方公務員法(守秘義務)違反の罪で今年4月、罰金刑を受けた。市特別職職員等倫理委員会が事件を調査・審議しており、再発防止策が検討されている。

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 福井市は、市の事業にまつわる透明性や信頼性を確保するためとして、公共工事契約の一般・指名競争入札への参加資格を有する営利企業に再就職する退職者を対象に、市長への届出書提出を要綱で規定。再就職予定の在職者は退職日までに、退職から2年以内の再就職者も1カ月以内に提出するとしている。

 情報公開請求の開示内容によると、再就職先届出書の提出は23年度は5件、24年度は6件だった。再就職先には、入札参加資格がある市内の工業関連企業などのほか、届け出対象ではない福祉や医療分野の法人も含まれていた。

 市の退職者は23年度が85人、24年度が63人。市職員課の担当者は、入札参加資格がある企業への再就職に関し「件数が少ない」と届け出漏れがある可能性を認め、「再就職先を十分に把握できていないのが実情」と明かす。規定が厳格に運用されていない状況について「退職者の立場になるため、それぞれの自主性やモラルに任せている面があり、現状でいいのかという問題がある」と話した。

 地方公務員法は、企業・団体への再就職者は、離職前5年間の職務に関する要求や依頼を離職後2年間はしてはならないと定めている。不当な口利き行為を防ぐため、各自治体は退職管理の条例や規則などを設けている。県は条例で、入札参加資格を持つ企業に再就職する職員のほか、営利企業などに再就職する管理職全員に届け出を義務付け、一覧を公表している。要綱は内規であるのに対し、条例には法的拘束力がある。

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福井市退職者の再就職に関する取扱要綱

・公共工事の契約にかかる一般・指名競争入札への参加資格がある営利企業に再就職する場合、退職日までに届出書を市長に提出する

・退職後2年以内の再就職でも提出する

・届出書の提出者は退職後2年間は、市が行う契約行為や行政処分に関して、企業にとって有利な取り扱いを要求、依頼しない

・違反する要求や依頼があれば、市長が再就職者や所属企業に書面で適切な対応を求める