1離陸9秒、信じがたいスイッチ操作の記録
エアインディア171便の事故予備報告書を読んで信じられない気持ちになっています。
「離陸9秒後に、両エンジンの燃料コントロールスイッチがCUT OFFにされた」
通常の手順では、飛行機の上昇を確認してギアアップするタイミング。操縦するパイロットは飛行機の姿勢を保つことに集中し、サポートするパイロットは飛行機の契機に管制官との通信など最も忙しい時です。
そんなタイミングでエンジンへの燃料供給を遮断する。
これは、想像すらしたことのない、訓練すらしたことのない事態です。
報告書には、コックピットボイスレコーダーの記録も残されています。
「なぜ燃料を切った?」「自分は切っていない。」
誰が言ったのかは明記されていません。
しかし、そんなやり取りがあったことを想像しただけで背筋が寒くなります。高度650フィート、パイロットは墜落を覚悟したはずです。
エンジンの燃料コントロールスイッチ( ENG Fuel Control Switch)というのは簡単に動くものではありません。ボーイング787の燃料コントロールスイッチは、中央コンソールのスロットルのすぐ下。
RUNとCUTOFF、2つの位置があり、切り替えるには、まずスイッチを持ち上げてから操作する必要がある特殊な形のスイッチです。
手が触れた程度では動きません。故意か、明確な意図がない限り、そんな操作はありえないのです。
加えて、機長と副操縦士はこうしたスイッチを操作する際には必ず相互「確認」をすることになっています。決して慌てることなく、一つずつ操作するスイッチなのです。
しかし、記録によると左右のスイッチは1秒以内に両方ともCUT OFFに操作されていたということです。
さらに飛行機のエンジンというものは、一度CUT OFFしてしまうと、スイッチを入れ直してもすぐに推力が戻るものではないのです。エンジン回転数が安定し、推力が回復するまでにはおよそ40~60秒ほどの時間がかかるのです。離陸直後の低高度では、エンジンの再始動が間に合うわけがなかったのです
パイロットとして、今回の事故には大きな疑問が残ります。
離陸していることから、離陸滑走中には問題がなかったはずです。そうでなければ離陸は中止されています。
ボイスレコーダーの内容は正しいのでしょうか?誰が何を言っていたのだろうか。
事故時コックピットには二人のパイロットしかいませんでしたので、誰か他の人が操作したとは考えられない。スイッチの機械的形状から、勝手にスイッチがCUT OFFに切れてしまったというのも考えられない。
私はこの報告書を読んで、ただただ「なぜ?」という強烈な疑問だけが残りました。きっと時間と共に新たな事実がわかってくると思います。色々な想像はできますが、軽はずみな発信はすべきでないと思います。
事故の最終報告書を待ち、その原因が明確化され、空の安全が守られるようになることを願っています。
飛行機好きの方の中には、この事故予備報告書には疑問を持った方が多くいらっしゃると思います。また何か分かりましたら記事にしたいと思います。



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