ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
「あー、やっと終わった~……」
「お疲れ様ー、ありがとうねー」
放送室を出た俺は、随分と間延びしたそんな声を出していた。
疲れた、マジで……あれからティアーがどんどん質問してきたんだけど、どれもどうでもいいような内容ばかりばっかピックアップして……
やれ、朝食はパン派か、お風呂で真っ先に洗う体の部位は何処やら、本っ当にどうでもいい。
学校の転校生かってーの。
もっと他に重要な質問あった筈だろ、所属とか能力とかヒーロー、旧世代のヴィランに関してどう思うとか。コメントリストにあったぞそれら。
わざとか、わざと選ばなかったのかコイツ?
「さて、と……あ、もうこんな時間。夕方になっちゃった」
「ああ、もうそんなに時間経ってたのか」
通りで疲れたわけだよ、そんなに経ってたんじゃ。
どうでもいい質問だけでどんだけ時間使ったんだよ。
「そろそろ今日の案内は切り上げましょうか。えーっと、クロス君。今日の寝泊りの事の相談なんだけど……」
「あ? ああ」
そうか、寝泊りか。考えてなかったけど、よくよく考えたらここ【カオス・ワールド】本部なんだよな。
結局場所何処か分かんねーけど、日本直ぐ帰れるのか?
という事は、ここで寝泊りか?
「クロス君は、“本拠地で寝泊りする”のと、“一旦家帰る”の、どっちがいい?」
「へ? 家帰れるのか?」
「ちょっと手間だけど、帰ろうと思えば。クロス君、4日くらい眠りっぱなしだったじゃない? 暫く家に帰ってなかったし、ご家族の方が心配してるかもしれないじゃない? だから、一旦帰る方がいいかと思って」
へー、そこまで考えてくれてるのか。俺は素直に感心した。
本部から、この場所までの移動経路が確立されていると。
どういう経路か気になるな。確かにそれはそれで知りたい情報だが……
「うーん……一応聞くけど、本拠地で寝泊りしたいって言えば出来るのか?」
「うん。寝泊まりに関わらず、あなたの個人部屋は既に用意してるから、ちょっと準備すれば直ぐに泊まれるけど」
「そうか。じゃあ、悪いけど“本拠地で泊まる”方を選ばせてくれ」
俺は、このままこの場所に留まる事を選択した。
せっかく【カオス・ワールド】の本拠地に来たんだ。もっと色々情報収集したいし。
それに……今家に帰ると、“尾けられる可能性がある”からな。
個人の詮索はしないと言っても、もしかしたら表向きだけかもしれないし。
自分で言うのもなんだが、俺みたいなこんな怪しいやつ、素性を探らない方がおかしいからな。
家に帰らせる事を勧めさせて、俺の家の場所の把握と正体を探るかもしれないし。
そうなったら、下手したら2度とこの場所に来れないかもしれない。
それなら、せめて情報を集められるだけ集めてからの方がいい。
すると、心配そうな顔でティアーが確認してきた。
「いいの? 家族の方が心配するんじゃ……それに、もし仕事とか学校行ってるなら、無断欠席してた事になるから、その連絡が必要じゃない?」
「生憎、俺は一人暮らしでな。それに今は、実質長期休み中で連絡の必要が無いから丁度良い」
俺はティアーの問いかけに問題無しと答えた。
実際一人暮らしだし、グリーンさん達には既に長期休みに入る事は伝えているから大丈夫。
それに、さっきも考えたけど、下手に知人に連絡取るような事をすると、そこから探られる可能性が高い。
【カオス・ワールド】にいる所属している間は、“暫く連絡取らない方がいいだろう”。
【ジャスティス戦隊】のみんなに一切連絡出来ないのはちょっと痛いが……まあ、みんな大丈夫だろ! ←(根拠の無い自信)
あ、でもティアーと言うか、ブルーのやつ、一切連絡しないと騒ぎ立てそうで怖いな……
だとすると、時折やっぱりレッドとして連絡を入れないとまずいか……?
クッソ、考えるのめんどくせー……“他のメンバーだったら気にしないだろう”に、ブルーめ。
コイツがティアーとしても二重生活してるのに、俺の正体バレのリスクコイツが握ってるって理不尽じゃね?
「どうしたの? 急に顔を上げてるけど」
「いんや、なんでもない」
まさか貴方のことで悩んでいるんですよ、などと言えるわけもなく。
とにかく、俺は本拠地で問題無いよと改めて伝えた。
「そっか、了解! じゃあ、貴方の部屋に案内しないとね。付いて来てー」
☆★☆
「はい! ここが貴方の部屋よ」
そうして、城の内部を再度歩き、とある場所に連れてこられた。
ここは城の下部の辺りにある場所だった。
廊下に沢山の扉があり、その内の一つの目の前に俺達は立っている。
「ここら一帯は、アルバイト用の寮がわりの部屋なの。その一室を先に使えるようにしたわ」
「へー、それにしては小綺麗な場所だな。まるでホテルの廊下みたいだ」
「ありがと。そう言ってくれると嬉しいわ。じゃあハイ、鍵」
そうして、俺はティアーに鍵を渡される。
って、おいこれ、普通に“物理キー”じゃねえか。
昔のホテルで借りてたような、部屋番号が書かれているでっかいアクセサリーが付いてるし。
「おいおい、ちょっと古臭く無いか? 今時物理キーって」
「ごめんねー? でも、アナログな物って意外といいものよ? 下手に電子的に管理するより、いざって時にはよっぽど信頼出来るわ」
「ふーん……まあいいけど」
「どうしてもって言うなら、電子的な物でも付けて上げられるけど……カードキータイプはともかく、生体認証式だと個人情報に繋がっちゃうから、ウチの組織に伝えていない人にはお勧め出来ないし……」
「いや、こっちでいいです。鍵変えるのも手間だろうし、俺は気にしないや」
あぶねー、確かに生体認証式だと指紋とかで俺の事ばれるかもしれないし。
極力個人に繋がる情報は渡したくないし、これはこれでいいか。
まあ、せめてカードキータイプにしないかとは思わなくもないけど。
ま、所詮アルバイトだし、そこまで色々求める方がおかしいか。
「代わりに、部屋の中はしっかりセキュリティ万全だから安心してね! 防音もしっかりしてるし、中で変身解除しても私たちに姿は見られないようにしてるから、プライバシーはバッチリよ!」
「そうか、助かるな。じゃあありがたく借りるよ」
そうして俺は扉に鍵を刺し、鍵を開ける。
扉を開いて、中を覗き込む。
「おお、本当にホテルの一室みたいだ……」
「冷蔵庫の中は何も入ってないから、ひとまず今日は食堂に行ってくれない? 必要なものがあるなら後で言って、ある程度は用意するから」
「ああ、分かった」
「ちなみにだけど。もーっと贅沢したいって言うなら、アルバイトを沢山頑張ってね。その気になれば、部屋のグレードアップも夢じゃないからね♪」
ティアーが指を立ててにっこり笑って言う。
ほう、なるほど。このままでも十分住めるが、もっといい部屋にも頑張れば住めるのか。
それはやる気が上がりそうな仕組みだな。
「それじゃあ、一旦解散で。1時間後くらいにまた来るから、その時食堂に行きましょう?」
「ああ、いや。食堂の場所は教えてくれたから、もう俺一人でも行けそうだけど」
「ううん。それじゃあご飯食べられないよ。貴方無銭飲食する気?」
「へ……ああ」
そっか、俺殆ど金持ってねーや。
いや、最低限もともと電車とバス乗り継ぎするくらいの金ならあるけど、そこまで多くは入ってないな。
しまった、よくよく考えたら食堂でも金は普通に掛かるか……おい待て、ここの給料日っていつだ?
俺そこまで手持ちないから、単純な食事もそんなに買えねーぞ!?
いや待て、それにしてはティアーのご飯食べられないって断定はおかしいな?
まるで俺が無一文確定のような言い方だ。もしかして……
「さっき言ったけど、ウチは“ポイント制”だからね。食事にもポイントが必要なの。だからちょっと待って、貴方分の必要なポイント用意するから」
「なるほど、そうだったのか……」
確かにさっき言ってたな、ポイントがどうとか。
なるほど、ここは独自のシステムになってるのか。
考えてみたら日本円持ってたところで、この場所で通じるか元々分かんねーや、外国かもしれないし。
「と言うわけで、貴方用の“ポイントカード”を用意してくるから、ちょっと待ってて。1時間後にまたくるから、それまで休憩していて」
「ああ、了解」
「それじゃあ、また後でー」
そう言って、ティアーは小走りで走り去って行った。
それを見届けて、俺は部屋の中に入っていった。
扉を閉めて、しっかり鍵を掛ける。
「……ふう。ようやく一息つけるか」
俺はそう、大きな息を吐いた。
仮にも敵の本拠地と言うのもあって、無意識に緊張していてしまったらしい。
放送室の疲れもあって、ドット疲労が襲いかかって来た。
「変身は、解除するかどうか……」
もしかしたら、実際はこの部屋も監視されているかもしれない。
そう考えると、ちょっと不安だが……
「……まあ、先に軽く見て回るかー」
俺はひとまず、部屋の中を隅々まで確認してみることにした。
さっき見た印象通り、普通のホテルの一室のように見える。
シングル部屋相応の広さだ。よくあるユニットバスになっている。
あ、でもウォッシュレットは付いてた。これは助かる。
とと、それより……
「ふむ。監視カメラの類は無さそうっと……」
可能な限り部屋の隅々まで見たが、目的の監視カメラ、盗聴器の類は見つからなかった。
プライバシーに配慮していると言うのは本当なのだろう。
もちろん、本気で気づかれないように隠されている可能性もあるにはあるが……
「……止めだ。そこまでされてるなら、もうどうしようもないか」
そもそもこの本拠地に連れてこられた時点で、俺自身“まな板の上の鯉”だ。
俺の事がバレていなさそうなのも、あいつらの予想以上の配慮によるものが大きい。
過剰に警戒し続けていても持たないし、その気になったら向こうに幾らでも正体探られるんだから、気にしすぎても意味ないか。
どうせバレたらその時はその時だし、今の状況が偶々まだ幸運が続いているボーナスタイム程度に考えておこう。
もう俺の人生は半ば詰んでるも同然なんだから、ある意味気楽に行こう。
「じゃ、変身解除っと……」
俺は【ダーク・ガジェット】のスイッチを切って、変身を解除する。
俺の身を包んでいた鎧が無くなって、変身前に来ていた私服に変わっていた。
「ふう、久しぶりに解放された気分だな……」
と言うか、よくよく考えたら4日間変身しっぱなしか。
そりゃあ息苦しくもなるか。
そんな事を考えながら、俺はベットに腰掛ける。
「あー、疲れた。確か、必要なものは言ってくれって言ってたっけ……あ、やべ。着替えとかねーや」
よくよく考えると、下着類も全然無い。
それに気付いて、俺はバッと立ち上がる。
部屋の中を軽く探ったが、やっぱり替えの服が無い。
一応、ホテルによくある浴衣っぽいのはあったけど、下着類が一切ねえ。
そう言えば、元々準備中的な事言ってたっけ。それがこの事か?
「やべえ、思った以上に足りてねえな……こりゃあ今の内に何が足りないか整理しないと……」
そうして俺は、部屋にあったメモ帳を取り出して、最低限足りなそうなものをリストアップしていくのだった……
☆★☆
……一方その頃。
「──カイザー様? 今なんとおっしゃいましたの?」
【玉座の間】にて。カイザーはとある3人を集めていた。
そこである話をして、その内の一人にそう聞き返されていたのだった。
「うん? 聞いてなかったのか?」
「えっとねー。ちょーっと信じられない話だったって言うかー☆」
「すみません。もう一度おっしゃってくれないでしょうか?」
カイザーの問いかけに、残りの二人もそう返す。
3人とも、カイザーのお話をもう一回聞きたいようで。
「なら、もう一度言おうか」
そうして、カイザーが玉座に深く腰掛けて、顎を手で支えながら……
「──新人のサタン・クロス。“あいつは、ヒーロー関係者の可能性が高いかもしれない”。そう言っただろう?」
「────は?」
そんな、とんでも情報をぶち撒けた。
クロスが必死に隠している情報の一部を、事もなさげに。
「──わーお☆」
「なるほど、聞き間違いじゃなかったわけですね」
一人はにっこり笑い。
一人は目を瞑って納得したように。
そして、もう一人は……
「──納得いきませんわあああああアアアアアアアぁぁぁ─────ッッッ?!!」
当然の如く、激怒した。
それはそうだろう、仮にもウチは悪の組織だ。
誰が好き好んでヒーロー関係者をアルバイトとは言え採用する必要がある。
カイザーというボスから聞かされた話とは言え、あまりにも馬鹿げた話だった。
「落ち着け。まだ確定情報じゃない。まだその可能性があるってだけだ。そもそも、我がアイツと話した所感でしかない。はっきりとした証拠があるわけじゃない」
「でも、疑いがあるのですわよね!? よりにもよって組織のトップである貴方が、その疑いを!! そんな相手を、何故引き入れましたのカイザー様!?」
「っふ、決まっているだろう」
そうして、カイザーは軽く笑い。
「──その方が、楽しそうだったからな!」
「お巫山戯けないでくれます?!」
そのあっさい理由を、言い放った。
これには3人とも、それぞれ思い思いの感情を浮かべていた。
「あちゃー☆ カイザーちゃんの悪い癖かー」
「しかし、その程度だったらそこまでおかしくない話なのでは?」
話を聞いた一人が、そう切り出す。
そこまで慌てるような話じゃないと。
「そもそも、ウチの組織で“元ヒーロー希望者”というのは珍しくありません。ヒーローに憧れ、素質が無く諦め、力を求めて【カオス・ワールド】に所属した。そんな人は正式メンバーにも結構います。事実、そんなメンバーで固めた部隊だってあるじゃないですか。正義感が強そうだからって、そう目くじら立てる程ではないのでは?」
「ふむ、確かに一理ある。お前の言う通りだな」
カイザーは、一人の言った事を否定せずに肯定した。
【カオス・ワールド】に所属しているメンバーは、様々な理由と経緯で入隊している。
その中の一つの理由に、“正義を為したい”という変わり種も入っているのだ。
そんなものも受け入れている時点で、今回の一人くらい大した問題じゃないと。
「だが、な……」
そう言って、カイザーは姿勢を変える。
楽しそうに、両手に顎を乗せながら。
「──もしかしたら、“ヒーローそのもの”かもしれない可能性もあるのだよ。私が思うに」
「────────は?」
その言葉には、流石に問題視していなかった一人も、声を失っていた。
カイザーは、既に疑っていたのだ。
サンタクロースが隠し続けている正体の、真実を。確証は無い状態で。
「ちょ、ちょーっとカイザーちゃん、それは……」
「──ふ、ふざけないでくださいましいいいいぃぃぃぃ────ッ?!!」
そうして、再度絶叫する一人。
他二人も、一瞬声を失っていた程だ。
「お、落ち着きましょう。カイザー様、その理由はあるのですか?」
「何。単純な話。──戦闘経験が段違い過ぎる。さっきも言っただろう? 【ジャッジメント】の一人をほぼ撃破したと。一部始終見ていたが、明らかに素人の動きでは無さすぎた」
もちろん、【ダーク・ガジェット】の使い方自体は素人だったがな、と付け足していたが。
しかし、それを抜きにしてもヒーロー連合の隠し戦隊の一人を実質撃破まで追い込んだのは、あまりにも偉業過ぎる。
才能だと言い切るには、あまりに説得力が無さすぎた。
「となると、元々戦闘経験のあるプロだと考えた方が自然だ。あれほどの強さを身につけたというなら、他の悪の組織の幹部レベルか、ヒーローとしての経験か……そこで、直接話したあいつの信念だ。それを考えると、どうも悪の組織に所属していたとは考えづらい」
「だから、ヒーロー経験者、だと思ったのですか……?」
「ま、その信念も、ある意味悪堕ちしてもおかしくないものではあったがな。詳細は省くが」
クック、とカイザーはおかしそうに笑う。
かつて、サンタクロースと配信越しに会話した時の事を思い返しているようだった。
すると、気付いたように一人が言う。
「しかし、それではおかしいですね。仮にも【ジャッジメント】も、ヒーロー側と言えます。そんな存在と、戦闘したという事ですよね? だとしたら、ヒーロー関係者というのも疑いが出ますね。わざわざ戦う理由が無いじゃないですか」
「ああ、確かにな。あいつがヒーローである証拠も無いさ」
カイザーはなおも笑いながらそう言った。
そう、結局のところは、分からない。
「あいつが元ヒーローなのか。それとも、現役なのか。その証拠は一切無いし、どちらもあり得る、という事だ。もちろん、全くヒーロー関係無かった、という可能性も今言ったように十分ある」
「どちらにせよ、あまりにも危険過ぎる人員でしょう!! 即刻追い出すべきですわ!!」
「私もー。それ、仕事増えそうなんだけどー☆」
「私も、流石にそこまでとは……残すにせよ、追い出すにせよ、彼の正体の裏取りはするべきでは? いくらメンバーのプライバシーは保護するとは言え、そこまで疑いがあるのは……」
カイザーの言葉に、3人とも否定の意見で固まっていた。
一人はやや中立よりだが、それでも組織のルールを曲げてでも正体の判明はするべきだと。
「まあ、安心しろ。話した限り、あいつは“借りは返すタイプ”と見た。こっちの恩がある限り、筋の通ってない事はしない奴だろう」
「そんなの、カイザー様の意見としても安心出来ませんわ!!」
「確かにな。私の言葉だけじゃ信じきれないだろう」
「そ、そう言うわけじゃ……別に、貴方を疑ってるわけではなくてですわ……」
強めの否定的意見を言ってる一人も、流石にカイザーの言葉を一切信じてないと言われると否定したいのか、少ししどろもどろになっていた。
それも無理はないと、カイザーは素直に感じ。
「だから────“貴様ら自身で見極めろ”」
「「「──っ!!」」」
「貴様ら自身でサタン・クロスと交流し、あいつの事を見極めろ。組織として、ウチにどう影響をもたらすかをな」
カイザーは、そう3人に“指示”を出した。
組織のトップとして、部下にそう命令したのだ。
「──ええ、ええ! そう言う事なら、そうさせてもらいますわ!! そうと決まれば、ワタクシは準備がありますので、これで失礼致します!!」
そう言って、強めの否定意見を言っていた一人が【玉座の間】をズカズカと出て行った。
「……良いのー? カイザーちゃん」
「ん? 何がだ?」
「カイザー様。疑いはともかく、新入りのことをあなたは気に入っていたのでは? あんな事を言えば、私たちもそれなりの対応を持って当たらせてもらう事になりますが。そうなれば、下手をしたら彼は無事ではすみませんよ?」
「そう、それ☆ それを言いたかったのー」
残りの二人が、カイザーに確認するようにそう問いかけた。
仮にも、お気に入りの人員に危害を与えることになっても良いのか。その最終確認だ。
「ああ、なんだそんな事か」
それを聞いて、カイザーは何てこと無いように言う。
「構わんよ。それで終わるようなら、あいつはそこまでの男だった。ま、最低限の命の保証くらいはするが……」
それより、と……
「──“あいつが、貴様らと向かい合った上で、何を起こすか”。それを見てみたい。それが楽しみでな」
とても楽しそうな笑顔を浮かべて、そう言ったのだった。
「……うっわー☆」
「……少し、彼に同情しますね。わざわざ私たちを仕向けさせられた事に」
その言葉に、残った二人は呆れの感情が強まったのだった。
ボスの興味が、悪い意味で向けられたのか、と……
「それじゃあ、そろそろ☆ 私もコンサートの準備があるからこの辺でー」
「では、私も。まだ城内の掃除が残っていますので」
残った二人も、普通に出ていく。
こうして、玉座の間にはカイザー一人が取り残されたのだった。
「……ふむ。これで準備は整ったか」
カイザーは一人、そう言葉を漏らす。
これであの3人に……“三幹部”をサンタクロースに差し向ける事が出来た。
「さあ、どうするサタン・クロス……サンタクロースよ。これで貴様には、大分大変な環境になったな? さあ、どう乗り越える?」
カイザーは、期待する。
ずっと配信越しにしか会話していなかった、愛しい彼の、可能性に。
「ああ、楽しみだ。楽しみだな……! 実を言うと、貴様の正体にはさほど興味が無い。貴様の成すこと、それ自体が興味に尽きる……!!」
もちろん、正体が知れるならそれはそれで知りたいが。
だがそれは、興味のある相手の事を知りたい程度。
それより、何を起こすかが一番気になる所だった。
「我らに恩を返すのか? 仇を返すのか? それとも、どちらでも無いのか? なんでも良い。貴様の成すこと全てが、興味の対象だ……」
無論、所属のメンバーに危害を与えるような事をすれば、ボスとして責任を持ってそれは止めるが。
それはそれとして、何をするかは興味深い。
「さあ。貴様を示せ、サンタクロース。我はここで、見ているぞ──」
くく、アーッハッハッハッハッハッ!!!
そうして【玉座の間】で、カイザーは楽しそうに笑い声をあげるのだった……
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
サンタクロース改め、サタン・クロス。
隠している内容、大体カイザーにバレバレだった人。
最悪では無いが、懸念点ほぼ実現されてしまっている。
そうとは知らず、せっせと必要な備品のリストアップの作業中。
この事を知ったら、頭を抱える事間違い無し。
組織の生活を勝手にハードモードにされてしまった彼の運命やいかに。
別にアナログだろうがデジタルだろうが、ちゃんと機能があるならそこまで気にしない人。
ただ、それはそれとして最新機器には興味がある男の子タイプ。
★
22歳
168cm
青髪
混沌・善
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
実は情報共有されていない人。
そんな事は一切知らず、ただただ新人君の受け入れる準備を進めていた。
カイザーも、流石にサンタクロースに一人も味方いないと辛いだろうと思って、敢えて言わなかったらしい。
それはそれとして、ヒーローの疑いの件を知ったとしても、ヒーローの悪堕ちね! とか言って、それはそれで受け入れるだろうとも思っている。
実を言うと、三幹部より立場が上。
カイザー>ティアー>三幹部の構造となっている。
なのに何も知らされていないってどう言う事よ!?
なお、ブルーの事は誰も知らないのでお互い様だったりする。
更に実を言うと、悪の組織で言うと博士ポジションに該当してたりする。
【ダーク・ガジェット】開発に関わっているため開発能力は高いが、だからこそアナログもそれはそれでメリットがあると考えている人。
ハッキングの恐れが無いって安心よねー。
★カイザー
22歳
172cm
紫髪
混沌・悪
【カオス・ワールド】のボス。
ティアーの幼馴染み。
サンタクロースの懸念点ほぼバレバレだった人。
確証がないだけで、ほぼ合ってるだろうと確信はしている。
それはそれとして、悪の組織の一員としても絶対輝く物を持っているだろうとも確信している。
勝手にサンタクロースの組織生活をハードモードに上げた。
だってその方が楽しそうだし。
安心しろ、骨は拾ってやる。間違った、命の保証はしてやる。ま、いるかどうかは分からんが。
ちなみにティアーと同じくアナログもメリットあると考える派。
もちろん最新の物も凄く便利と感じているが、依存し過ぎると足下掬われるぞ?
★三幹部
よくある悪の組織の幹部。
一人はお嬢様言葉。
一人は☆口調。
一人は丁寧語。
かつてカイザーとティアーが拾い、直々に組織に入れたメンバー。
おかげでトップ二人に対して忠誠度は高い。
個人の紹介はいずれ。
感想、評価お願い致します!
あったら嬉しいです!