ハリー・ポッターと野望の少女   作:ウルトラ長男

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俺の嫉妬が真っ赤に燃える! 幸せ潰せと轟き叫ぶ!


第76話 刹那の攻防

 ダンブルドアの杖から、幾重もの閃光が飛ぶ。

 イーディスが様々な魔法を駆使して果敢に攻める。

 マッドアイが、シリウスが、ルーピンが、キングズリーが、そしてトンクスが。

 思い付く限りの魔法を行使し、ミラベルを攻撃する。

 だが通じない。通らない。

 生半可な魔法は無動作で出現する盾の呪文に阻まれて彼女に触れる事すら適わず、上手く当ててもまるで効果がない。

 圧倒的な攻撃力と圧倒的な防御力。その二つを併せ持つ彼女の牙城を崩すのは困難だ。

 ネビルが死角から飛び出し、何とかミラベルを剣で斬ろうと奮戦する。

 だがネビル程度では守護霊を出すまでもない。

 純粋な身体能力だけで剣を避け、軽く腕を薙いだだけで身体ごと弾き飛ばす。

 

 その一方で、ミラベルの攻撃はまさに理不尽極まるものだ。

 無動作で次々と魔法が放たれ、その一発一発が盾の呪文を砕き、貫通する。

 プロテゴでは間に合わない。プロテゴ・トタラム以上の防御でようやく防げるという狂った威力。

 だがその上位防御ですら一撃で軋ませ、2発3発と続けばあっさり突破する。

 そんなものを立て続けに、一度の攻撃で数十発と連発してくるのだ。

 理不尽ではないかと叫びたくなる。

 不公平だと嘆きたくなる。

 だがこれこそがミラベル。この暴威こそがミラベル・ベレスフォード。

 暴力で総てを支配せんと企む暴帝たる所以なのだ。

 

 そして、戦闘開始よりわずか10分後。

 既に勇者達は満身創痍となっていた。

 

「フ……どうやら、勝負あったな」

 

 ミラベルが勝ち誇った笑みを浮べたまま、歩く。

 少なくない傷を負ってはいる。

 だが一歩歩く度に傷は癒え、瞬く間に修復されていた。

 一方のダンブルドアは全身が傷付き、もはや片膝をついている有様だ。

 その老人を蹴り、地面に叩き付けてから頭を踏み躙る。

 

「まあ、ニワトコの杖がない事を考えれば、思ったよりは楽しめたよ。

しかしやはり結果は覆らなかったな。

衰えるだけの老人が、進化し続ける私に勝てるはずなかろう」

 

 ダンブルドアは既に全盛期を過ぎ、衰える一方だ。

 しかしミラベルは違う。

 15歳で成長を止めた彼女は常に成長期にある。衰える事が永遠にない。

 彼女にあるのはただ、限界無き成長と進化のみ。

 昨日の己より今日の自分。今日の自分より明日の我が身。

 2年前のあの時、魔法省の戦いでニワトコの杖を用いて尚ミラベルに勝てなかった時点で既にダンブルドアの勝機は消えていたのだ。

 

「後は貴様等を皆殺しにするのみ。何とも呆気ない幕切れだったな」

 

 ミラベルは手の中に雷を生み出し、ダンブルドアを見下ろす。

 まずはこの魔法界の象徴を殺す。

 それから子飼いの騎士団を殺し、最後にネビルとイーディスをも消し去る。

 そうすれば後に残るのは雑魚の群れのみだ。

 

「死ね――アルバス・ダンブルドア」

 

 魔法界の賢者を殺す為に魔法を放とうと、腕を振り上げる。

 それと同時にイーディスが動いていた。

 本来の予定では迂闊に切り札を切るはずではなかった。

 あくまでミラベルの虚を突いて、確実に1チャンスに賭けるはずであった。

 しかし目の前でダンブルドアが殺されそうな時に、イーディスが我慢出来るはずもない。

 彼女は唯一ミラベルを倒し得るアーチを懐から出し……その腕を、掴まれた。

 

「っ痛!」

「貴様……なるほど、何か妙な気配を発しているとは思ったがそんな物を持っていたか」

 

 さしものミラベルもアーチだけは警戒する。

 それを彼女の前に出してしまったのがイーディスの失敗であった。

 アーチを元のサイズに戻す暇すら与えず、ミラベルがイーディスを捕まえてしまったのだ。

 そして彼女はアーチを取り上げ、イーディスを突き飛ばす。

 

「あ……そ、そんな……!」

「迂闊な奴め。せっかくの切り札もこれでは持ち腐れだな」

 

 完全な失策であった。

 唯一ミラベルを殺し得る切り札であるそれを、ミラベルの手に取られてしまったのだ。

 この世界に存在する、己唯一の天敵。

 だがこれさえ破壊してしまえば、もうこの身を脅かすものは無い。

 そう考え、そこで過ちに気が付いた。

 

 ――違う――これはアーチではない! 変身魔法で化かしただけの模型ッ!

 

「だよね……やっぱ私、迂闊だと思われてるよね」

 

 そう言うと同時にイーディスがミラベルにしがみ付いて来た。

 更にポケットに手を入れ、アーチを出す。

 今度こそ偽者ではない本物のアーチだ。

 それを横に放り投げ、縮小の魔法を解除してアーチを出現させる。

 更にカーペ・レトラクタム(自分と対象を繋ぎ、引っ張る魔法だ)でアーチと自分を繋ぎ、ミラベルごと強引に引っ張り始めたのだ。

 無論ミラベルも吸血鬼の膂力で抵抗するが、それでも少しずつ引きずられている。

 このままいけば、ミラベル諸共イーディスまでアーチを潜る事になるだろう。

 

「貴様……!」

 

 普通ならば吸血鬼にしがみ付くなど自殺行為でしかない。

 少し力を入れるだけで人間の身体など壊れ、至近距離から噛み付いて血を吸う事だって出来る。

 だがイーディスだけはそれが当てはまらない。

 彼女にはメアリーの護りの魔法が在るが故に、ミラベルに対して無敵に近いのだ。

 だが、だからといってそう簡単にミラベルを倒せるわけではない。

 故にこその不意打ち。

 ミラベルが偽のアーチを奪った一瞬のみ生じる僅かな油断。そこにイーディスは賭けたのだ。

 

「ち……!」

 

 このままでは流石に不味い……。

 そう判断したミラベルは止むを得ず時間を止める。

 だが――イーディスは止まらない。

 タイムターナーが触れていれば他の人間を過去に連れていけるのと同じように、それを参考に生み出したこの魔法もまた、同じ特性を得てしまっている。

 それこそがこの魔法唯一にして最大の弱点であった。

 

「ライナグル……貴様、私と共に死ぬ気か?」

 

 突然周囲が止まった事に驚愕しているイーディスへ、ミラベルが問いかける。

 確かにこのままならば自分を殺す事も不可能ではないかもしれない。

 だが、それで満足か? 一緒に死ぬ事に恐れはないのか、と。

 それに対し、イーディスは僅かな微笑みすら浮べて見せる。

 

「それも、悪くないかもね」

 

 イーディスにとっての青春とは、そのままミラベルとの青春でもあった。

 学校に入学してからずっと一緒だったし、 離れてからも彼女の存在は常に自分の心を占めていた。

 結局のところ、イーディスは今でもミラベルの事が好きなのだ。

 例え『ごっこ』と言われても、それでも大事な友達だと、そう思う心を捨てる事が出来ない。

 その友達を殺して、その後にのうのうと生きようという気にはどうしてもならない。

 それを思えば、一緒に死ぬというのは少しだけ魅力的に思えた。

 

「ミラベル……本当に、止まる事は出来ないの?」

「くどいぞライナグル。貴様もダンブルドアと同じ事を聞く気か?」

「だって……貴女なら、こんな事をしなくたって世界を変えられるはずでしょ?

こんな、多くの人から恨まれるような事をしなくても、ちゃんとした方法で魔法省のトップになって、それで変えて行く事が出来たはずでしょ!?」

 

 ミラベルの目指すものを今更どうこう言う気はない。

 イーディスはダンブルドアやミラベルのような確固たる己の正義など持ち合わせてはいないし、結局のところ正義なんて言葉は押しつけのようなものだという考えすらある。

 だからミラベルの進もうとしている未来そのものを批判する気はないのだ。

 だがどうしても、その『手段』が納得出来なかった。

 

 こんな事をしなくとも……。

 こんな、わざわざ遠回りをしてまで人を殺さなくても、彼女なら魔法省の頂点に立てたはずだ!

 彼女自身は嫌うかもしれないが、ミラベルには純血の名家という強みもあった。 

 それこそ、コネを使って魔法省の上層部に行く事が出来たし、実力で大臣の座に就任する事も可能だったはずだ。

 なのに彼女が取ったのは、戦争というあまりにも多くの敵を作る遠回りなやり方だ。

 

 何故そんな方法を取ったのか。それは今までのイーディスならば分からなかっただろう。

 だが今なら分かる。

 あの記憶を見た今ならば、それが理解出来る気がした。

 

「もう、いいでしょ? もう……貴女が憎む相手は誰もいない!

憎しみをぶつける相手は、もう誰もいないんだよ!?」

 

 『復讐』。

 大義名分と野望を盾に、結局のところミラベルがやっていたのは魔法界への復讐であった。

 自分からレティスを奪ったこの世界への、飽くなき憎悪こそが原動力であったのだ。

 だがその相手は全てミラベルが殺してしまった。

 ならばこれ以上、敵を作る事に一体何の意味がある。

 もう復讐は終わっている。

 今の魔法界に、ミラベルが本当に殺したい相手など残っていないのだ。

 

「貴様……そうか。それを知ったのか」

「……うん」

「ならば尚更理解出来るはずだ。今の魔法界を変えぬ限り、また同じ事が繰り返されると。

貴様の姉と同じ悲劇がいつまでも続くのだ!」

 

 魔法界は変える。いや、誰かが変えなければならない。

 それがミラベルの譲れない主張であった。

 確かにイーディスの言う通りの方法でも魔法界は取れただろう。

 いや、むしろダンブルドアなどを敵に回さない分、今より簡単ですらあったかもしれない。

 気に入らない方法ではあるが、コネを使うというのも有効だった。

 しかしミラベルはそれらの方法を選ばなかった。

 その方法では、魔法界の根元に巣食う癌細胞を完全に駆逐出来ないからだ。

 

「でも……でも、それじゃあ、貴女はどうなるの!?

そんな方法で魔法界を変えて、頂点になって……それで貴女に何が残るの!?

こんなやり方じゃ貴女が……貴女自身が、いつまで経っても救われないじゃない!」

 

 イーディスのその言葉に、ミラベルはわずかに目を細める。

 こいつは……このお人よしは、この期に及んでまだ私を心配するのか。

 そう思い、そしてかつて共にあった少女の姿を垣間見た。

 なるほど、顔立ちこそ全く似ていないがやはり姉妹と言う事か。

 どこまでもこちらの調子を狂わせてくれる。

 

「……貴様は戦いに向かんな、ライナグル」

 

 ミラベルはかつての友の甘さに苦笑し、ダンブルドア達を横目で見る。

 そしてその中からすぐに一人を選び、この状況を打開する魔法を口にした。

 

「アクシオ。ネビル・ロングボトム」

「ッ!!?」

 

 ミラベルが引き寄せたもの。

 それはネビルであった。

 勿論それはミラベルが拘束を振りほどくのに役立つ一手ではない。

 ただ無駄にネビルを巻き添えにするだけの呼び寄せだ。

 だがイーディスは、こちらに飛んでくるネビルを見て絶望に顔を歪めた。

 まずい……このままではネビルまで自分達の所に来てしまう。一緒にアーチに飛び込んでしまう!

 いや、それどころかミラベルならばネビルを蹴り飛ばして先にアーチに入れるくらいの事もするだろう。

 

「……ッ!」

 

 一瞬の迷い。

 イーディスの視線が揺れ、しかし己の心の命ずるままに行動を起こす。

 ミラベルから片手を離し、ネビルを咄嗟に掴む。

 それを見て、ミラベルは目を伏せ、そしてイーディスへと手を向けた。

 

「ほら……やはり向いていない」

 

 

 ――時が動き出す。

 

 

 時が動き出した時、ダンブルドア達が見たのは既に決着が着いたミラベルとイーディスの姿であった。

 意識を失ったイーディスを、ミラベルが抱きかかえている姿だった。

 今の一瞬で何が起こったのかを彼等が知る術はなく、またミラベルが語る理由もない。

 一つわかるのは、イーディスの特攻が失敗に終わったという事だけだ。

 ミラベルはイーディスを降ろすと、すでに眠りに落ちている彼女へと告げる。

 

「ま、よく頑張ったよ」

 

 そう言い、まずはアーチへと手を向ける。

 あれを壊すのはイーディスに止めを刺すよりも優先すべき事だ。

 あれが残っている限り、ほんのわずかとはいえ自分が殺される可能性がある。

 だから壊す。その為に手から数発の魔法を、アーチへと発射した。

 

*

 

 ヴォルデモートには、何が起こっているのか分からなかった。

 確かに悪霊の炎を当てたはずだ。

 ハリー・ポッターは倒れたはずだ。

 ではこの状況は何だ?

 何故、ハリーの杖が変わらず魔法を吐き出し続けている!?

 

 ヴォルデモートがハリーを撃ち抜き、勝利の余韻に浸れたのはほんの一瞬の事であった。

 ハリーの身体は確かに倒れ、しかし彼の杖が魔法を撃ちこんできたのだ。

 それもただの呪文ではない。まるでヴォルデモートがそこにもう一人いるのではないか、と思いたくなるような凄まじい闇の魔法だ。

 

「どうなっている……?」

 

 何が起こっているのか理解出来ない。

 だが、やるべき事は分かる。

 あの杖を砕く! そうしない限り終わりはない!

 そう判断したヴォルデモートだったが、その前を塞ぐように切断の魔法が通過した。

 

「まだ……終わっていないぞ……」

「スネイプ……貴様」

 

 腹から夥しい血を流し、口から血の塊を吐き。

 しかしそれでも尚、スネイプは立ち上がっていた。

 残る命の灯火を全て焼き尽くすかのように、力強く立って帝王に杖を向けていたのだ。

 彼は己の腹に手を当て、血に染まった手を見やる。

 そして浮かんだ思考は、『ありがたい』というものであった。

 

 一目で分かる。致命傷だ。

 だからこそ有り難い。

 ……もう、我が身を惜しむ必要はこれでなくなった。

 一切の保身を捨てて、全力で立ち向かう事が出来る。

 

「帝王よ。ヴォルデモートよ。

私はあの時より、この瞬間を望んでいた。

リリーの命を奪った貴方をこの手で打ち倒す事を、夢見てきた」

 

 ずっと生き恥を晒してきた。

 愛する人の死の原因となった後悔を背負い続けてきた。

 だがそれも全てこの時の為。

 お膳立ては整った。

 ダンブルドアの読みが正しいならばハリーは死んでおらず、死んだのは彼の中の帝王の魂のみだ。

 つまり――今ならあの帝王を、地獄の道連れに出来る。

 

「誓いの時は来た……私と共に死んでもらうぞ、帝王」

「ほざけ……死ぬのは貴様一人だ、スネイプ!」

 

 ヴォルデモートが杖から緑の閃光を出し、それと同時にスネイプが消える。

 想像を超える速度で行われた姿晦ましだ。

 そのスピードに驚きながらもすぐにヴォルデモートは気配を頼りに後ろに魔法を撃ち、しかしスネイプはまたも姿を晦ました。

 上下左右前後。あらゆる場所に高速で姿を現し、そして晦ますその姿は今までヴォルデモートが見た事もない動きだった。

 姿現しのリスクである『バラけ』をまるで恐れぬ無謀な連続転移であった。

 

 帝王すら捕らえきれぬ連続転移。

 その技を以て死角に回りこんだスネイプは無言で呪文を放つ。

 彼が得意とする切断呪文。その連射だ。

 ヴォルデモートのローブを裂き、皮膚を裂き、そして流血すら齎し尚止まらない。

 帝王の攻撃は転移で避け、死角に回りこんでまた呪文を放つ。

 

「す、すごい……」

 

 ハーマイオニーは思わず援護も忘れて感嘆の声を洩らす。

 いや、というよりも援護する暇がない。

 それほどにスネイプは速く、そしてあろう事かあの闇の帝王をたった一人で圧倒していたのだ。

 

 だがこれは燃え尽きる寸前の蝋燭の輝きに過ぎない。

 スネイプは秒単位で命を削りながらヴォルデモートを追い詰めているが、それで倒せるほど帝王も甘くない。

 このままではいずれスネイプが先に力尽き、敗れるだろう。

 

 だがそれを運命は認めない。

 運命に選ばれた少年が認めない。

 死の呪文を受けたはずの少年……ハリー・ポッターが弾かれたように飛び起きる。

 

 

 そして、武装解除の呪文をヴォルデモートの杖に叩き込んだ。

 

 




(#゚Д゚) 愛 な ど い ら ぬ !(挨拶)
皆様こんばんわ、引き続きラストバトルの76話でお送りしました。
そして次回はスネイプ回となります。
もしかすると私が一番書きたかったのはこれなのかもしれません。
珍しく作業用BGMもまともなのをかけ、「花守の丘」とか聞きながら書きますた。
……え? 普段?
ゾフィーのテーマ(ウルトラセブンの歌 パート2)とか聞きながら書いてます。
それではまた明日、お会いしましょう。

・ラヴォスの攻撃! マルフォイに9999のダメージ!
・ロマンドーはアテナの水を使った! マルフォイはたちあがった!
・ラヴォスの攻撃! マルフォイに9999のダメージ!
ATM「もうやめろ! マルフォイのライフはゼロだ!」
・見かねた闇遊戯がパーティーに加わった!
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