オーバーランした広島の夜…先輩に“明治魂”見せられず落ち込む中日・村松 食事に誘った柳の粋な「かどで」【ドラ番蔵出し秘話】
2023年12月27日 10時36分
◇柳&村松 エピソード編
自主トレからキャンプに公式戦…といかなる時も竜戦士を追い続けた本紙ドラ番記者4人による、とっておきの話「蔵出し秘話」。4回連載の第1回の担当は土屋あいり記者。柳裕也投手(29)、村松開人内野手(22)とのエピソードをつづります。
「村松って今何してる?」。昨年11月末、柳から記者に電話がかかってきた。明大出身の記者。先輩・柳と、入団会見を控えて名古屋に来たばかりの後輩・村松をつなげた。
2人はこれが初対面。その日は球団の明大OBによる食事会が開かれており、村松が招かれた。「先輩方のいろんな思い出話を聞けて、とても楽しかったです」。村松は大学時代の古傷だった右膝を痛め、開幕は2軍スタート。4月中旬ごろ、リハビリ中にぼそっとつぶやいた。「柳さんが投げる試合で打ちたい。明治魂、見せたいです」
間もなく1軍デビューを果たすと、プロ初本塁打となる満塁弾や2度のサヨナラ打などで脚光を浴びた。一方で、明治魂が報われない。5月4日の阪神戦(甲子園)。柳がマウンドを守っていた8回、投ゴロ併殺が狙えた場面で二塁ベースに入るのが遅れた。二塁封殺のみで逆転を許すきっかけとなった。
そして、7月23日の広島戦(マツダ)。柳は6イニング2失点と粘投。無得点の打線は7回2死一、三塁で川越が左前適時打。1点差で反撃モードと思われたが、一走の村松が二塁をオーバーラン。慌てて戻るも間に合わず、二塁でタッチアウト。流れを閉ざしたボーンヘッドに立浪監督も「ああいうことをしているようではレギュラーは取れない」と厳しく振り返った。
試合後、ひょんなことから柳が村松を誘い、一緒に食事に行った。先に店に到着した記者に、柳からラインが来た。「村松がオーバーランすると思うから店の前でストップかけてあげて」
投手と野手の違いはあるが、ともに明大の主将。4年秋に日本一で学生野球を締めくくった。村松にとっては、野球が職業になって初めての夏場。「だいぶ、きてます」。心身の疲労は未知の領域。そして、先輩が投げた試合で痛恨のミス。そんな後輩を見かねて「一人でいたら自殺しかねないから連れてきた!」。気付けば、村松を励ます会。議題はプロ野球選手として、どうありたいのか―。柳は広島名物のウニホーレンを食べながら「人生設計は大切だよ。俺はね…」。野球談議に花が咲いた、忘れられない夜だった。
たまたまではあるが、店名は「かどで」。柳が言った。「今日が村松の門出。明日からは走塁大好き、バント大好き、守備も打撃も大好きな村松に生まれ変わるんだ」。村松のスマートフォンの待ち受け画面は今も店の看板だ。来季は2人のお立ち台が見たい。
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