SNSと選挙報道、若手記者たちはこう読んだ 「ひとくくり」は違和感
参議院選挙の投開票が7月20日に迫り、期日前投票も始まっています。日本経済新聞の20代から30代半ばの若手社員によるSNSプロジェクト「Spray NIKKEI」は今回、SNSと選挙に関わる記事を紹介する更新型コンテンツを立ち上げました。若手記者らが読み手となってポイントを解説し、記事にはない若者目線での問題提起も行います。
「若者はもっとこういう情報を求めている」とか「若者やSNSをひとくくりにしないでほしい」といった記者の主観的な意見も忖度(そんたく)なし!で発信します。同世代やもっと若い世代のみなさんだけでなく、上司や親の世代にもご一読いただき、Spray NIKKEIと一緒にSNSと選挙の距離感について議論しませんか?
【記事】SNS上の関心、政党が取り込み膨張 「外国人規制」のX投稿は4割増
若手記者はこう読んだ X(旧ツイッター)を分析対象にしている時点で、20代の自分とは距離が遠いなと感じました。私は日経電子版の編集やSNS投稿を担当しているので、仕事としてXも使っています。しかし政治や選挙の話で盛り上がっているのはもっと上の世代ではないでしょうか。
SNSイコールX、またSNSイコール若者文化という前提でこの記事を読むと、ミスリードになりかねないなと感じます。統計データでトレンドを可視化する手法は信頼性のある情報発信として共感しました。
記事をきっかけに考えさせられたテーマもあります。「SNS上の投稿を分析して公約や政策に盛り込む」という政党の動きについてです。国民の声を聞くのは政党や政治家として重要な姿勢ですが、基本的に匿名でヒトなのか人工知能(AI)なのかもわからない「声」で公約が塗り替えられるとしたら――。効率では劣っても、選挙区や街頭を回って対面で有権者との接点をつくる伝統的な「どぶ板選挙」の価値にも思いをはせるようになりました。(電子版編集センターデジタルグループ 古沢健)
【記事】SNS反応、既成政党に批判集中 れいわ・参政・保守は肯定多く
若手記者はこう読んだ この記事で分析されているようにSNS上での新興政党への好意的な発信が多いのは、支持層の年齢が低いだけでなく「よりいろんな人に広めたい」という気持ちが強いからだと考えます。自分たちの力で政党の支持が広がっていくことが実感できれば達成感がでてくると思います。既存政党は支持の高低にかかわらず既に知名度は高いのであまりそういう気持ちにはならないのでしょう。
私が持つ、特定の政党の発信に反応しないようにしているSNSアカウントでも、文字媒体やリール動画で新興政党を支持する内容が多く流れてくるように感じます。支持者による積極的な発信の結果なのではないでしょうか。興味が無くても何度も会えば関心を向けてしまうように一定の効果を持つでしょう。
特定の政党にプラスorマイナスな発信ばかりかもしれないと疑いながらSNSを見ることで「では政党の公約を実際に読んでみよう」「党首の演説を聞いてみよう」と、自分の目で確かめる意欲がわきます。政党を正しく比較するにはSNSの傾向を知った上で原典や元のデータに触れることが必要だと痛感します。(政策報道ユニット政治・外交グループ 馬場加奈)
【記事】「論破」文化もうやめよう 真の豊かさは権威主義では生まれない
若手記者はこう読んだ 意見が対立する人同士で議論し、一方がもう一方を言い負かしているのを見るのはショーとして確かに面白いですよね。特に、自分があまり好きではない人がめためたに「論破」されていると、胸がすくように感じることもあると思います。和気あいあいとしていて意見の対立がないディベートは見ていて面白くないですし、マイクパフォーマンスのないプロレスも味気ないでしょう。「論破」の様子をまとめた動画がSNSなどで拡散し、エンタメとして支持を集めているのも分かります。
ただ、それはあくまでショーとしての話。日常のコミュニケーションに持ち込むと至る所で摩擦が生じてしまうんだろうな、と日々実感します。会社での会議、家族や友人との話し合い。相手に対するリスペクトを失って「論破」だけを目的にすれば、意見はまとまりません。両者は仲たがいして、協力し合う可能性も消えてしまいます。
国民の意思を幅広く政策に反映させる政治の現場がそんな風潮に覆われてしまったら……。この記事では、政治の世界における「対話」の重要性に触れています。エンタメとしての「論破」の面白さは認めつつ、その面白さだけが支持・不支持の基準にならないよう意識していこうと思いました。(金融・市場ユニット市場グループ 田村峻久)
【記事】選挙でのSNS活用の課題は? 偽情報に注意、規制議論も
若手エンジニアはこう読んだ 記事では収益目的で第三者が作る動画について指摘していますが、支持者が編集した動画も多く目にします。候補者本人が誤まった情報を発信している場合、支持者の善意によって作られた動画によっても誤情報は広まってしまいます。
AIなどエンジニアリングの力を使って誤情報の検証をSpray NIKKEIでも行いたいですが、選挙報道の規制もあり、身動きは取りづらいのが現状です。SNS上で新聞社の存在感を高めていくためにも、新しい選挙報道の指針に則って、より積極的な発信をしていきたいですね。(電子版編集センター戦略コンテンツグループニュースルームエンジニア 浅井雄斗)
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対象記事を追加してSpray NIKKEIプロジェクトのメンバーが更新していきます。インスタグラム公式アカウントでは街頭で若者と対話したり、日経のコンテンツに触れる機会が少ない人たちにこそ読んでほしいおすすめ記事を紹介したり、ときにはマスメディアで働く社員の葛藤も発信しています。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
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(更新)- 野尻哲史合同会社フィンウェル研究所 代表ひとこと解説
若者とSNSをひとくくりにするな、SNS上の声が本当に国民の声なのか、SNS上では論破が目的になっている、収益目的での切り取り動画が多い、など名前入りで若手記者・エンジニアが発信することは好感が持てる。一覧でみると、議論が選挙に限ってのものなのか、SNSそのもののコミュニケーションのあり方なのかを整理して考える必要もありそうだ。過度なアテンション・エコノミーは普段でも問題だと感じているが、選挙の時期はそれが正しいか虚偽の内容化に関係なく、プラットフォーマーは収益に結びつかせない規制を導入すべきではないだろうか。
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(更新)