アニメ「アポカリプスホテル」 CygamesPictures代表・竹中信広、脚本家・村越繁ロングインタビュー ヤチヨの暴力にもロジックがある
●他にも映画のオマージュ 「ジークアクス」との偶然の一致も
──先ほど、「トレマーズ」や「ハリーの災難」の話もありましたが、他にも映画のオマージュはありますでしょうか。 村越 第7話の宇宙のシーンは「ゼロ・グラビティ」を意識していたかも、宇宙で事故に遭い迷子になる様は「インターステラー」っぽいですし、環境チェックロボの造形はその「インターステラー」の「TARS」の影響もあったかもしれません。さらに、第8話でのポン子のパワードスーツは、「エイリアン2」のパワーローダーに似ていますよね。あとは、第10話の扉を斧で破ろうとするシーンは思い切り「シャイニング」的な演出です。脚本会議中は映画のパロディをしようという話はしていなかったと思うのですが、演出を経てそうしたオマージュが出ていた気がしますね。 ──なるほど。他のアニメ作品の名前を出して申し訳ないですが、「アポカリプスホテル」の直前に「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」が放送されていて、同じ第8話で「主人公が共に大気圏に突入する」という偶然の一致も話題になっていましたね。 竹中 それは完全に偶然ですね。 ──毎回「ジークアクス」が衝撃的な内容ですから、続いておおむねでほんわかした雰囲気もある「アポカリプスホテル」を見て「癒された」という意見も目にしました。 竹中 並べて評価していただけるのは光栄です。「ジークアクス」に失礼のないような作品作りを目指してやっていきたいと思います。
●ヤチヨ以外の人間型のロボットが壊れてしまった理由は
──「アポカリプスホテル」は毎回「はっちゃけている」イメージがありつつ、一方で「寂しくなる」印象も持ちました。世界は荒廃しているし、ヤチヨ以外の人間型のロボットは壊れているし、ヤチヨが1人で踊っているオープニングも、やはりどこか終末ものらしい。それでも、しだいにポン子たちやお客さんたちがやってきて、賑やかになってきて、「ヤチヨさん、良かったね」と思えるのがすてきだと思いました。 竹中 そのことは村越さんと共に、初めに決めたことでもありますね。 ──そういえば、ヤチヨ以外の人間型のロボットが壊れてしまったことや、ヤチヨだけがまだ作動している理由についてはほとんど語られていませんよね。 竹中 そのことも考えた時期はありましたが、そこを明確に描くのは僕らがやりたいことではないという意識に変わっていきましたね。でも、第11話でそれに関わる出来事があり、僕らの中ではその疑問に、一応のひと区切りをつけた気持ちもあります。 村越 皆さんが考えられている疑問に全てお答えできているかというとそうではないかもしれませんが、11話のあのシーンから、いろいろと想像や考察をして楽しんでいただけたらうれしいです。 ──ありがとうございます。最後に、「アポカリプスホテル」のファンに向けて、何かメッセージはありますでしょうか。 竹中 配信から消えるかもしれない作品なので、パッケージを買って手元に置いておいてほしいです。何しろ、今後NGが出ててもおかしくない作品ですから(笑)。やはり物理的に「残るもの」は劇中でも大切だと訴えている作品でもあるので。 村越 いろいろな宇宙人が登場しましたが、例えば第2話の旅人宇宙人が「何を言ってたのか」といったことを、いろいろと想像してもらえると面白いと思いますね。劇中では日本語に翻訳されていませんが、何を言っていたのかは、脚本上ではちゃんと考えているんです。その日本語訳だったりを今後に発表する予定はないですが、それらをこちらが正解として提示するのはあまり面白くないと思っています。やはり、最終回の第12話を見た後にも「あそこはこうだった」「あれはこういう意味だったのかも」と考えられる楽しみがある作品ですので、ぜひ見返してみてください。 (取材・構成:ヒナタカ)
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