アニメ「アポカリプスホテル」 CygamesPictures代表・竹中信広、脚本家・村越繁ロングインタビュー ヤチヨの暴力にもロジックがある
●死因は結局わからない? キャンディーは爆弾だった?
──単純に疑問なのですが、第10話での温和宇宙人と強面宇宙人の死因は、結局何だったんですか? 劇中で謎のまま終わった気がするんですけど。 竹中 特に謎にしているつもりはありませんが、言及する必要性も無いと思ったので、あの形にしています。もったいぶる必要性も無いんですが、言うタイミングを逃したので、どんどん言いづらくなっています。だからもう聞かないでください。 ──いや、教えてくれないんかい! あ、いえ失礼しました。あとポン子の娘のタマ子が温和宇宙人からもらったキャンディーを食べていて、話の流れ的にあのキャンディーが爆弾なんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたんですけど、大丈夫だったんですか? 村越 爆弾と普通のキャンディーは色が違うんです。あれは普通のキャンディーなので大丈夫ですよ。(筆者注:第10話を見返すと、温和宇宙人がタマ子にキャンディーをあげる時、一度は赤い包み紙のキャンディー──つまり爆弾──をあげようするも、あせって引っ込めて、緑の包み紙のキャンディーをあげるというシーンがありました) ──それはホッとしました。あの温和宇宙人が、爆弾テロリストで本当に悪い人だったというのも、考えさせられるところがありますね。 竹中 彼は悪い人ですね。あのキャンディーで「2面性」を示したところもあるんですよ。実際のマフィアの人も、子どもには優しかったりしますからね。
●ヤチヨは「タヌキ星人は殴っていい」というアルゴリズムで動いている
──倫理観といえば、ヤチヨが思い切り暴力を振るっているのもすごいですよね。キャラクター原案の竹本泉さんが描かれているスピンオフコミック「アポカリプスホテルぷすぷす」の第10話では、「そもそもロボット三原則※は地球人類以外には適用されません(あと良心回路はありません)」とあり、「うん……まあ……そういうことだろうな」と納得しました。 ※ロボット三原則:SF作家アイザック・アシモフが考案したロボットが守るべき3つのルール。その第一原則に「ロボットは人間に危害を加えてはならない」とある 竹中 僕らの中では、ヤチヨは「タヌキ星人は殴っていい」というアルゴリズムで動いていますからね(笑)。 ──ひ、ひどい(笑)。あ、いえ、失礼しました。でも、「ヤチヨの暴力がひどすぎる」というギャグも含めて面白いですし、第3話での暴力は物語上では必要なものだと思いました。ヤチヨがあの時に、タヌキ星人家族たちの(地球人およびホテリエの価値観からすれば)ひどい振る舞いを見て殴って以降、そのアルゴリズムに従っているとも言えそうですね。 竹中 でも、あの第3話の出来事は「文化の違い」でもありますよね。地球人から見てよくないことでも、タヌキ星人にとってはよくないことをしているつもりはなかったんですよ。 ──それでも、その場所のマナーやルールはちゃんと守るべきという教訓の話でもありますね。やはり、しっかりしたロジックが各エピソードで貫かれている作品だと思いました。まあ、それでも、やっぱり暴力はダメですが(笑)。 竹中 すぐに手が出るアニメですよね。第8話も暴力というか、ケンカの末に解決する話だったりしますから。 ──まだあの話はケンカの末に仲直りする話ですが、続く第9話でポン子の婚約者だったポンスティンが、何も悪いことをしていないのに、いきなり殴られてていてめちゃくちゃかわいそうでした(笑)。 村越 ヤチヨはあの時、大切な従業員であるポン子を失うと、ホテルの存続が危ういと思っていたから殴ってしまったんです。やはり彼女の中にはアルゴリズムというか、ロジックがあるんですよね。 ──本当に、ヤチヨにとってはホテルが最優先されるというロジックが一貫していますね。だからこそ、第8話で今までのように働けないと知ったヤチヨが、やさぐれてスケバン暴走族となるというのもわかる気がします(笑)。 竹中 そうですね。気持ちの整理がつかないからグレるというのは、共感しやすいし、良かったと思います。
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