「心の糧」は、以前ラジオで放送した内容を、朗読を聞きながら文章でお読み頂けるコーナーです。
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坪井木の実さんの朗読で今日のお話が(約5分間)お聞きになれます。
それは必ずしも自分が努力して勝ちとった成果や勲章といったものではない。自分はこれだけ努力したのだから、幸せになる権利があるとか、幸福に値する人生をおくってしかるべきだ、といった
幸福感は期せずして湧き上がるものです。計画して、予定通りにやってくるものではない。自分でコントロールできないがゆえに、期せずして立ちあらわれるところに、かえってありがたみが伴います。
むしろ自分には値しない、モッタイナイといった感覚なのかもしれません。
そんな意味で幸せは往々にして、そして本来的に小さなものなのでしょう。「小さな」という形容がふさわしい身分なのです。「大きな仕合わせ」となったら、むしろ矛盾したような戸惑いを覚えます。
ともすると人が気づかない、自分でも気づかない、そんな何気ないところが幸せの真骨頂だからです。気づかれればいいし、気づかれなければ、それはそれでまたいい。そんな身分なのでしょう。絶対に必要というわけでもない。人生の最終目的か、と言えばそうとも言えない。あればいいのは確かだが、それでも人生に必要な条件ではない。
それでも昔から人間の道、哲学においても、人の幸せがこれだけ真剣に取り沙汰されるのは、人がそこに人生の印を求めるからなのでしょう。
これでいい。この人生でいい。そういった肯定的な促しを必要としているのかもしれません。