「参院選前に75歳以上の中国人へのビザの要件を緩和」言説は誤り
ファクトチェック対象=インターネット上の言説
①日本政府、参院選直前に75歳以上の中国人高齢者へのビザ要件を緩和(4日、「Share News Japan」がXに投稿した内容)
②75歳以上の中国人が90日滞在ビザを持って日本に来れば、国民健康保険に加入できる可能性が出てきます(4日、世界日報オンライン版の寄稿文)
Xの投稿は140万回超の表示
75歳以上の中国人高齢者のビザ(査証)発給要件を緩和したとのXの投稿は、10日時点で140万回以上表示されている。投稿のリンクをたどると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)系の日刊紙「世界日報」のオンライン版の寄稿文が表示される。
寄稿文を書いたのは漫画家を名乗る人物で、「7月20日に参議院選挙の投開票が予定されていますが、この重要なタイミングで、日本政府が再び中国人への観光ビザ緩和を行いました」との書き出しではじまる。「75歳以上の高齢者が日本を旅行するには、同行者の同伴が必要であり、さらに中国国内の指定医療機関での健康診断書の提出も求められていました」「『上記2つの要件が撤廃された』との連絡がありました」と記している。
外務省外国人課は、「年齢によって同伴や健康診断書の提出を求めてきた事実はない。昨年12月に発表された発給要件の緩和策とも内容は異なるうえ、緩和策の実施時期は未定だ」として言説の内容を否定した。
昨年12月に北京で行われた「日中ハイレベル人的・文化交流対話」で、岩屋毅外相は中国人向けのビザ発給要件の緩和方針を表明した。そのうちの一つが、富裕層の高齢者を想定したもので、観光ビザ取得の際に必要とされている「在職証明書」の提出を、65歳以上の高齢者は不要にするという内容だ。現行では定年退職していて在職証明書が出せない人は、提出可能な家族らに同行する形でビザを申請をする必要がある。
言説は、岩屋外相が表明した緩和方針の内容とも異なる。さらに、政府の緩和策はまだ実施されておらず、実施時期も決まっていない。以上から①の「参院選直前に75歳以上の中国人高齢者へのビザ要件を緩和」の事実はない。
◇ ◇
寄稿文にはさらに、「『75歳を超える中国人には、3年マルチビザ(最長90日間滞在可能)が発給されない』という規定がありましたが、それも今回、撤廃された」「90日滞在ビザを持って日本に来れば、国民健康保険に加入できる可能性が出てきます」とある。
観光目的のビザで国民健康保険に加入できるのか
外国人課によると、ビザ発給に年齢の規定は存在しない。中国人を対象にした観光目的の3年間有効の数次査証(マルチビザ)の1回あたりの滞在期間は30日以内、5年間有効の場合は90日以内だ。
観光目的のマルチビザで国民健康保険に加入できるのか。厚生労働省国民健康保険課によると、国民健康保険の加入対象は3カ月を超える中長期滞在の外国人で、90日以内の短期滞在のビザでは加入できない。よって②の「75歳以上の中国人が90日滞在ビザを持って日本に来れば、国民健康保険に加入できる可能性が出てきます」は誤り。
世界日報は寄稿文の末尾に、「この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません」と記している。
【判定結果=誤り】
①外務省によると、75歳以上の中国人高齢者へのビザ要件を緩和したという事実はない。日本政府は65歳以上の中国人高齢者について、観光ビザの要件を緩和する方針を示しているが、実施時期は決まっていない。②厚生労働省によると、国民健康保険の加入対象は3カ月を超える中長期滞在の外国人であり、90日以内の短期滞在のビザでは加入できない。
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