特典SS『鎧に収まるサイズ』(時系列本編47話)

「それでは、検証も兼ねてこのクランの人間と軽く手合わせしてもらえますか? 敵の脅威度を測る為に」


 セイムとシュリスが出かけた後、一通り取り調べを終えた副団長アリスは、新人三人組に対し、襲撃者の強さを計る為に手合わせを依頼していた。


「グ、グローリーナイツの人間と手合わせなんて……」

「中々ない機会ではあるが……正直俺達では……」

「あくまで強さを計る為です。襲撃者はそれぞれ『クラブ』『片手剣』『ロングソード』を使っていたそうですね? こちらも同じ武器を使わせます。無論、手を抜いた状態で相手をするように言いますので、襲撃者と比べてどうか、それだけを教えてください」


 検証。国に仇為す人間がどれ程の強さを持っているのか、それを確かめるのだ。


「三人共頑張ってね! 応援するね!」


 そんな中、実際に襲撃者と交戦していなかったメルトはただ、素知らぬ顔で無邪気に応援していたのであった。


「メルトさんは魔物としか交戦していなかったのですよね?」

「うん、逃げる襲撃者の魔法は撃ち落としたけど、交戦はしていないよ」

「分かりました。こちらも相手を手配しますので、三人も準備があるでしょう。クランの装備をお貸ししますので、ロッカールームにご案内します」


 男女に別れロッカールームに移動する。

 手持無沙汰のメルトは、戦うわけではないが、リッカに続き女性用のロッカールームに入室する。




「リッカちゃん、ローブの下に何かつけるの?」

「そうよ。後衛だけど、流れ弾とかあるかもだしね。前に種を飛ばしてくる魔物に思いっきり種をぶつけられたんだよね。今日は着て来ていないから、ここのクランのチェインメイルを借りるんだ。これ、局所的に鎖で守るタイプだから、そこまで重くないね。私もこういうタイプに替えようかなー」


 リッカは、革で編まれた服のような、一種のチェインメイルを着込む。

 彼女の言うように、心臓を守る胸の部分と、脇腹の部分が金属の鎖に置き換わっていた。


「おー! それならおっぱいの大きさが違っても装備出来るね! なるほど……リッカちゃんのおっぱいは少し大きいから『こっちのケーガイ』は着れなさそうだもんね」

「メルトちゃん!?」

「私もこれはちょっと装備出来ないなー……分かった、これレティちゃん用の装備なのね!」

「メルトちゃん!?」


 自分が今、遠回しに人の胸が小さいとバラしていることに、全く気が付いていなかった。

 そして……男子用のロッカールームがすぐ隣だということも、メルトはまったく頓着していなかったのだった。


「メルトちゃん……おっぱいのことは大きな声で喋ったらダメよ」

「ん、分かったわ。じゃあ装備が済んだら行こっか。私、ここで戦ったことあるから案内出来るわ」

「う、うん。じゃあお願いね」


 そうして、リッカを連れてロッカールームを出ると、丁度男子組もロッカールームから出てくるところだった。

 聞こえていたのだろう。何がとは言わないが、二人にも聞こえていたのだろう。

 いつもより少しだけぎこちない二人の様子を訝しみながら、三人を連れて中庭の訓練場へ向かうのだった。






「来ましたね。こちらも訓練中の人間に武器を変更してもらい、相手をしてくれるように頼んでおきました」


 中庭に出ると、既にアリスが用意したクランメンバーが、それぞれ片手剣、ロングソード、クラブを装備して待ち構えていた。

 それぞれ、組手の前に自己紹介をしていたところで――


「では最後に。彼女は本来なら片手剣、レイピア等を使うのですが、今回はクラブを担当してもらいます」

「初めまして。レティと呼ばれているわ。ある程度手は抜きます。実際に襲撃者と比べてどうか、考えながら戦ってくださいね」


 レティが名乗った瞬間だった。

 メルトを除く三人が思わず声を上げた。

 ただ一言、レティの『ある部分』に一瞬だけ視線を向けて。

『あっ』と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る