瘴気領域 報告6
仮処分決定投稿
権利侵害の説明
(1)同定可能性
本件投稿には「名興文庫」と記載されており、住所・電話番号が記載された検索結果ページを画像添付している。一般人が本件投稿を見た場合、債権者が代表を務める名興文庫に向けられたものであると認識することは容易であるから、本件投稿には同定可能性が認められる。
(2)債権者に対する人格権侵害
本件投稿は債権者のプライバシーを侵害する不法行為である。
(3)違法性阻却事由の存在を窺わせる事情の不存在
本件投稿は、債権者が代表を務める名興文庫のISBN情報を拡散するものである。
ISBNとは国際標準図書番号のことであり、日本図書コード管理センターが日本国内においてISBNの発行と運営管理を任されている。債権者は日本図書コード管理センターよりISBNを購入し、その情報は日本図書コード管理センターに登録されている。
債権者の情報は、日本図書コード管理センターに登録されていることから、検索を行えば住所・電話番号が閲覧できる状況である。
登記簿や電話帳に記載された住所を第三者が公開するのはプライバシー侵害に当たるかどうか争われた裁判が、東京地方裁判所平成23年8月29日判決である。
個人の自宅等の住居の所在地に関する情報(以下「自宅住所情報」という。)をみだりに公表されない利益は,いずれも,原告らにとって,私的な情報であるといえ,かつ,一般的に広く知れ渡っている情報ともいえないから,原告らが,自宅住所情報について,原告らが欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは決して不合理なことではなく,かかる期待は保護されるべきものであり,プライバシーの利益として法的に保護されるべき利益というべきである
また、法人登記記載の代表取締役の住所に関して、プライバシー侵害になるかどうか参考になるのは、東京地裁平成19年6月4日判決である。
被告は,原告が株式会社の代表取締役であって,住所は登記事項であること,本件各投稿はパソコンを使用して個人情報を集められる程度の氏名,住所,電話番号といった情報を公開するにとどまっていることを指摘し,プライバシーの侵害はないと主張する。しかしながら,プライバシー権とは,私生活をみだりに公開されない権利であるところ,私的情報につき登記簿その他で探知しうる手段が存在するからといって,これをもってそのような私的情報が一般人に広く知られているとはいえない
名興文庫に対して嫌がらせを行うアカウントが多かったことから、債権者は状況が落ち着いた後にISBN取得を公表するつもりであった。しかし、本件投稿者は自らの意思でもって日本図書コード管理センターへアクセスし、名興文庫について検索を行い、債権者が公表していないISBN取得情報を投稿すると共に、債権者の住所・電話番号を拡散した。
本件投稿によって名興文庫の住所を把握したアカウントが、第三者の投稿によって気分を害されたことを理由に、債権者に「名誉毀損で訴える」と投稿した。本件投稿によって債権者の私生活が脅かされたのは明らかである。
本件投稿は、債権者の自宅等の住居の所在地に関する情報をみだりに公表されない利益を侵害しており、本件投稿に公益目的が存在するとは考えられず、民法709条に規定されている不法行為であることから、本件投稿がプライバシーの侵害に当たることは明白である。
(4)小括
以上により、本件投稿により債権者のプライバシーが侵害されたことは明らかである。



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