- 1二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:49:17
スレ立て初めてだから見づらかったら許して
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(マックイーンのばかばかばか!)
トウカイテイオーは肩を怒らせながら学園の中庭を歩いていた。
今日は、メジロマックイーンと併走の予定があった。
……あった、のに、トウカイテイオーは一人でこんなところを歩いている。
メジロマックイーンが急用のために併走をキャンセルしてきたのが、ついさっき。
そこからトウカイテイオーは不機嫌MAXでムスッとしながらうろうろしていたのだった。
(ボクの方が先にマックイーンと約束してたのに! 急用ってなんだよ、もう!)
急用の中身を教えて貰えなかったから、余計にトウカイテイオーはイライラしていた。
どこに行くでもなく、ふらふら歩いていて……気が付けば、生徒会室の前に来ていた。
(そうだ、カイチョーに話を聞いて……あっ)
ドアを開けようと駆け寄ったところで『会議中、部外者立ち入り禁止』の札が掛けられていることに気づく。
いつでも生徒会室に突撃するトウカイテイオーでも、これを掛けられたら残念ながら入れない。
(……マックイーンも! カイチョーも!)
さらに不機嫌になるトウカイテイオー。耳は絞られ、尻尾は勢いよくばしりと音を立てて振られている。 - 2二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:50:22
たまらず、大きな声で叫びそうになって、トウカイテイオーはふと思い出した。
『人の上に立つのであれば、不用意に周囲を委縮させてはいけない。自己への機嫌気褄を心掛けたいものだ』
以前、シンボリルドルフが言っていた。不機嫌を撒き散らして周りの人を怖がらせてはいけない、と。
(……ボク、今、不機嫌を撒き散らしてたかも……)
急に心臓がドキドキしてくる。ずっと、メジロマックイーンと併走できなかったことにイライラして……それを抑えようともせずに……。
ここに来るまで、何も考えていなかった。
もしかしたら、自分のせいで嫌な気持ちになったウマ娘もいたかもしれない。
「カイチョーの言う通りだ! 不機嫌、隠さなきゃ……っ!」
ぶんぶん、頭を振ってトウカイテイオーは両方の頬をぺちんと叩く。
一つ結びの後ろ髪がその決意を表すようにゆらりと揺れた。
トウカイテイオーが不機嫌を抑え込もうと、カフェで甘いものを注文していたところに。
「お、テイオー、マックちゃんと併走じゃなかったか?」
声をかけてきたのはゴールドシップ。
自分よりずいぶんと高い位置にある顔を見上げて、眉を寄せたトウカイテイオーは口を開いた。
「マックイーンが急用で併走できないって言うからさあ……」
そこまで言って、トウカイテイオーは慌てて口を両手で覆った。
いけない。不機嫌を出しそうになった。
ダメダメ、と首を振ってからぎこちなく笑顔を浮かべる。
「仕方ないなーって思って、パフェ買ってるとこ! あは、ははは……」
「……ほーん」 - 3二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:51:37
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- 4二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:51:43
ゴールドシップの目がきらりと光る。
それに気づかないトウカイテイオーは注文したパフェを受け取って歩き出した。
「テイオー、なんか風邪でも引いたか?」
「ええっ!?」
「……元気なく見えるけど」
「そっ、そんなことないぞ! ゴルシの気のせいだって!」
どうしてだろう、ちゃんと不機嫌を抑えて笑ったはずなのに。
ゴールドシップが全然笑ってない。真面目な顔で自分を見ている。
トウカイテイオーは居心地悪くなって、席に座ってすぐパフェを一気に口に入れた。
冷たいアイスクリームで、頭がキーンと痛む。
パフェの味なんて、何もしなかった。
……それでも、ゴールドシップに見られているのが、怖かったから。
「あっ、おい!」
「じゃあねゴルシ! ボク用事があるから!」
ぴょん、と勢いよく椅子を降りて、返却口に走っていくトウカイテイオー。
そのまま逃げるようにカフェから走り去るトウカイテイオーの後姿を見て、ゴールドシップは思案気な顔をしていた。
パフェで機嫌気褄! 作戦に失敗したトウカイテイオーは、それなら走って気を紛らわせようとグラウンドに来ていた。
ジャージに着替えて、思う存分にコースを走り回る。
(へっへーん、これなら誰にも迷惑かけないもんね! ……マックイーンのばか! カイチョーのばか! あとついでにゴルシもばかー!)
構ってくれなかったメジロマックイーンとシンボリルドルフに、一方的にイライラをぶつけ。
あとついでに自分が一生懸命、不機嫌を隠そうとしたことを、すぐに見抜いてきたゴールドシップに八つ当たりして。
トウカイテイオーは鬱憤を晴らすかのごとく、走りに走った。
「――イオー! テイオー!!」
「……あっ、ネイチャ! ターボ!」
遠くから自分を呼ぶ声に気づき、トウカイテイオーはゆっくりと速度を下げて二人の元へ歩み寄った。
「テイオー……ちょっと、どうしたの、なんか酷い顔で走ってたけど」 - 5二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:52:47
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- 6二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:53:01
ナイスネイチャに指摘されて、トウカイテイオーは息を飲む。
「いつものテイオーと違う! 変だぞ! どうしたテイオー!」
「えっ……え、そんな、つもりは……」
ツインターボにも言われて……トウカイテイオーは黙ってしまった。
走るだけなら、誰にも迷惑はかけないと思ってた。
……だけど、二人に呼び止められて。おかしいと言われて。
「なっ、なんでもないっ、なんでもないからっ!」
「あっ、テイオー!」
呼び止めようとするナイスネイチャを振り切ってトウカイテイオーはまたしても、逃げ出した。
逃げる、なんて帝王に相応しくない。
だけど溢れてきた涙を堪えられなくて、トウカイテイオーは水場へと飛び込んだ。
水道水で顔を洗うふりをして、滲んだ涙を拭う。
(な、なんで……何をやっても、上手くいかない……)
天才の自分なら、シンボリルドルフの言ったように不機嫌を隠すことなんて簡単だと思ってた。
なのに、現実は厳しくて。すぐにいろんな人に見抜かれて――うまく、できない。
メジロマックイーンやシンボリルドルフへの不機嫌な気持ちは残ったまま。
さらに、そこへ自己嫌悪も増えて、トウカイテイオーの心はぐちゃぐちゃだ。
「はあー……」
とぼとぼ、という効果音が良く似合う足取りで、肩をがっくりと落としたトウカイテイオーは寮への道を歩いていた。
視線を地面に落としていたトウカイテイオーは、目の前に影があることに気づいて顔をあげる。
「テイオー」
そこにいたのは、にこやかに微笑むシンボリルドルフだった。
「か、カイチョー! 会議、終わったの!?」
「ああ、終わってから……そうだな、ゴールドシップに『テイオーの様子がおかしいから見てやってくれ』と言われて」 - 7二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:54:04
探していたんだ、とシンボリルドルフは優しい声で言った。
途端、トウカイテイオーは嬉しそうな顔から一転して顔を曇らせ、地面に視線を戻す。
「べ、別に、ボクはいつもと変わらなくて……何ともないけど……」
「まあテイオー、そう言わずに。私が会議をしている間に、何があったのか教えてくれないか。……テイオーに隠し事をされると、私が寂しくなってしまうよ」
シンボリルドルフは身を屈めて、トウカイテイオーの顔を覗き込むようにする。
トウカイテイオーは――我慢できず。水道水で拭って消したはずの涙をもう一度、生み出して、シンボリルドルフに抱きついた。
シンボリルドルフは抱き着いてきたトウカイテイオーをあやすようにしながら抱き留め、人から見えないように木陰に連れて行く。
「何があったのか、教えてくれ、テイオー」
「カイチョー、あの、あのね……」
トウカイテイオーは泣きながら、一生懸命に話した。
マックイーンに併走をキャンセルされてしまって、不機嫌になったこと。
不機嫌で周りの人に迷惑をかけてはいけないから、我慢しようとしたこと。
なのに、ゴールドシップやナイスネイチャ、ツインターボにはすぐに見抜かれて、逆に迷惑をかけてしまったこと。
……自分でも、どうしてこんなにも感情が揺さぶられているのかわからなくなる。
自分自身が、どうしたいのか、何をしたかったのか、何もわからなくなる。
そんなトウカイテイオーの震える手を、シンボリルドルフは両手で包み込んだ。
「そうか。頑張ったんだな、テイオーは」
「……カイチョー……」
暖かい、尊敬するシンボリルドルフの手。それが、トウカイテイオーのささくれだった心も、優しく包んでくれる。
「自分の不機嫌で周りの人を不快にさせたくない。それは、素晴らしい心掛けだぞ、テイオー」
「だっ、だけど、ボク、うまくできなくて、ゴルシとか! ネイチャ達を、嫌な気持ちにさせたんじゃないかって!」
ふふ、とシンボリルドルフが穏やかに笑みを零す。
それに驚いて、トウカイテイオーは顔を上げた。
「やはり、優しいな、テイオーは」
「……そうかな」
「他人を嫌な気持ちにさせたんじゃないかと心配する。それができる者を優しいと言わず、何と言う」 - 8二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:54:13
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- 9二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:54:45
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- 10二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:55:21
シンボリルドルフの大きな手がトウカイテイオーの頭をぽんぽんと撫でた。
「それに、ゴールドシップ達は嫌な気持ちになったのではない。いつもと違う君を、心配していたんだ」
「……」
そう言われてみれば。ゴールドシップは真顔だったが、別にトウカイテイオーを責めてはいなかった。
ナイスネイチャもツインターボも、トウカイテイオーを呼び止めはしたけど、怒ってはいなかったし、嫌そうな顔もしていなかった。
……『不機嫌を抑える』ことにばかり夢中になって、何も見えていなかったこと、むしろ違うものばかり見えていたことに、トウカイテイオーはハッと気づく。
それまで嵐のように荒れていた心に、太陽の光が差し込むように。
友人たちの温かさを感じて、トウカイテイオーは思わず胸に手を当てた。
「そっか、みんな、心配してくれてて……ボクは……」
「そうだ。いつもだったら、テイオーは嫌なことがあったら元気に爆発しているだろう?」
「! カイチョー!」
子供じみた仕草を指摘されて、トウカイテイオーは顔を赤くして叫んだ。
それを見たシンボリルドルフは、くすくすと笑いながら続ける。
「その元気さ。それを、みんなは好ましいと思っているんだ」
トウカイテイオーは首をひねる。不機嫌で周りの人を不快にしてはいけない、なのに、元気よく爆発するのは良い、褒められる。
不思議そうにしているトウカイテイオーのために、シンボリルドルフはいつもの四字熟語を封印して、ゆっくりと話し始めた。
「テイオー、君は嫌なことがあったら嫌だと言う。嬉しい事があったら嬉しいと叫ぶ」
「……うん」
「それは素直で、見ているだけでも気分が晴れ晴れするんだ」
「……そうなのかな」
そうだとも、とシンボリルドルフは目を細める。
「それに、不機嫌になったとしても。例えば……物を壊したり、誰かを殴ったり、誰かに悪い言葉を吐いたり。そうだな、併走をキャンセルしたメジロマックイーンの悪口を言いふらしたり、そんなことは、しないだろう?」
「!! しないよそんなこと!」
「ハハハ、例えば、の話だ」 - 11二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:55:22
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- 12二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:55:35
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- 13二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:56:12
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- 14二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:56:25
慌てたように否定するトウカイテイオーを落ち着けるようにシンボリルドルフは頭を撫でた。
気持ちよさそうに顔を緩ませるトウカイテイオー。
……いち早くトウカイテイオーの異変を知らせてくれたゴールドシップに感謝を、とシンボリルドルフは心の中で思った。
だからと言って、呼び出すのに生徒会室の扉の前で突然大音量のうまぴょい伝説を流すのはどうかと思うが。普通にノックして欲しい。
ちなみに、廊下で全力うまぴょい伝説ダンシングをしていたゴールドシップはエアグルーヴに捕まって説教タイムなはずだ。その後は、風紀委員に身柄を引き渡される事になっている。
……話を戻そう。シンボリルドルフは緩く頭を振った。
「カイチョー?」
「いや、何でもない。……こほん。とにかく、だ。テイオーは『不機嫌になったからと言って、周囲に迷惑をかけていない』から、大丈夫なんだ」
「そうかなあ。確かに、物を壊したりとかはしないけど……」
自信なさげに、トウカイテイオーが身を小さくする。
いつもの自信満々で、堂々たるトウカイテイオーとは全く違う姿だ。
「気になるのであれば、いつもよりほんの少しだけ、注意すればいい」
シンボリルドルフとしては、あの元気で快活で、何でも素直に感情を剥き出しにするトウカイテイオーが好ましいのだが。
成長の時が来ているのかもしれない。
どことなく、子供の成長を喜びつつも寂しさを覚える、親の様な気持ちが頭を過りシンボリルドルフは苦笑した。
「一度に全部をやる必要はない。一歩前進、一歩前進。少しずつ、進めていけばいいんだ」
「……そっか! ボク、今日、全部をいきなり完璧にやろうとしたから……変な事になっちゃって」
「そうだ。レースだって、いきなり完璧に走ろうとしなくていい。目指す目標は大きくとも、日々着実なトレーニングが効果的だとテイオーも知っているだろう?」
「もちろん!」
レースに例えてやれば、トウカイテイオーは目を輝かせて力強く頷いた。
ようやく気を持ち直したらしいトウカイテイオーを見て、シンボリルドルフはほっと心の中で安堵の息を吐いた。
「ありがとうカイチョー! ボク、わかった気がする! ……明日からは、ちょっとずつ、気を付けるようにしてみる」
「ふふ、そうしてみると良い」 - 15二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:56:53
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- 16二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:57:12
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- 17二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:57:49
握りこぶしを作って決意表明するトウカイテイオーの頭を撫で、シンボリルドルフは立ち上がった。
「さあ、そろそろ寮に戻った方が良い時間だ。……宿題と予習の時間が無くなるぞ、テイオー」
「ぐっ」
妙な呻き声をあげるトウカイテイオー、しかし、シンボリルドルフを前に「宿題なんてイヤ!」とも言えない。
……それに。一歩前を行くシンボリルドルフの背中が、本当に大きく見えて。
「カイチョー、かっこいいな……」
「? 何か言ったか?」
振り返ったシンボリルドルフが不思議そうな顔をする。それにトウカイテイオーは「なんでもないっ!」とだけ言って、その大きな背中に飛びついた。
「うわっ!」
「カイチョー、ボク宿題も予習もちゃんとやるからね!」
「ははは、さすが優秀なテイオーだな」
「もっちろん! だから今度併走して~!」
「そうだな、生徒会の予定をエアグルーヴに調整して貰えば――」
いつの間にか傾いた夕陽の中、シンボリルドルフは背中にトウカイテイオーをくっつけたまま。
二人はいつもの会話を繰り広げながら、ゆっくりと寮へ戻って行った。
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おっしまーい
なんでこんなSSが出来たかわかる人はわかる
書いた感想
これウマ娘じゃなくて良くね??
正直書いてて苦痛だった、ネタにキャラを押し込むのきっつい - 18二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:57:54
🍑!
- 19二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:58:16
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- 20二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:58:43
マサイの戦士警戒する
・カメムシ放置
・今朝スレタイの内容を踏襲したスレをお気持ちスレが建った
・他所からのコピペの可能性 - 21二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:59:05
カメムシと同一人物説が出たからって荒らし自演でアリバイ工作しなくていいよ🍑
- 22二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 12:59:43
- 23二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:00:11
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- 24二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:01:59
間に挟まってたのは消した(12すまん)
連続投稿規制と文字数制限きっつい
SS書ける人尊敬するわ…… - 25二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:03:25
- 26二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:04:50
- 27二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:05:55
桃がこれだけ書けるなら普通にその書いたSS見せて欲しいよ
- 28二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:06:05
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- 29二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:07:01
名前欄に1って入れればなりすましできると思ってるの面白い
- 30二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:10:04
🍑ちゃん自分が書いたことにして応援スレや相談スレにリンク貼ってるの草
- 311225/07/12(土) 13:10:06
色々とお疲れ様です僕は楽しめたよ
- 32二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:10:33
トウカイテイオーである必要もなければウマ娘である必要もない
マジで虚無を書いてる気分だったし途中から「なんで俺は道徳の教材を準備しているんだ……?」ってなったよこれ
普通にオリキャラで書いた方が絶対人気出る - 33二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:11:41
- 34二次元好きの匿名さん25/07/12(土) 13:12:25
まさかの身体を張った検証だった
キチの真似し続けるとこっちも呑まれるらしいから気をつけてもろて