米市民権の「出生地主義」廃止するトランプ氏の命令、連邦地裁が再び差し止め
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アメリカで生まれたほぼ全員に自動的に市民権を与える「出生地主義」の廃止をドナルド・トランプ大統領が命じたことをめぐり、連邦判事が10日、再びこの大統領令を差し止めた。
ニューハンプシャー州の連邦地裁判事は、トランプ氏の大統領令に対する集団訴訟を認め、大統領令の発効を一時停止した。この集団訴訟は、移民の親たちとその幼児らを代表し、米自由人権協会(ACLU)が起こしていた。
数週間前に連邦最高裁は、連邦裁が普遍的な差し止め命令を出す方法とタイミングについて制限を導入した。しかし、一定の法的手段による差し止めは可能とされている。
今回の集団訴訟は、この連邦最高裁の決定後に提起されたもので、同裁判所の新しい基準に沿っている。
ホワイトハウスは、連邦判事の今回の判決を受け、正当性に異議を唱えた。ハリソン・フィールズ報道官は10日、「今日の決定は、普遍的救済に対する最高裁の明確な命令を回避しようとする、明白かつ違法な試みだ。この判事の決定は、集団訴訟の認定手続きを乱用し、法の支配を無視するものだ」とする声明を発表。「トランプ政権は、国民がトランプ大統領に投票して実施させようした政策を阻害しようとする、こうしたならず者の地裁判事の試みと、精力的に戦っていく」とした。
今月27日の発効を前に差し止め
訴訟では、トランプ氏の大統領令について、「アメリカで生まれ、あるいは帰化し、その司法権に属するすべての人は、アメリカ及びその居住する州の市民である」と定めた合衆国憲法修正第14条に反すると主張している。
トランプ氏は、移民取り締まりの一環として、滞在資格のない移民や外国からの訪問者から生まれた赤ちゃんについて、この権利を取り消す大統領令を出している。
集団訴訟は、この命令が有害かつ違憲だとして争っている。判事は今回、影響を受ける赤ちゃんに代わって原告が訴訟を進めることができると裁定した。
この判決により、トランプ氏の優先事項になっている命令が、再び一時停止となった。判事は政府に対し、7日間の上訴期間を与えた。
出生地主義による市民権付与の制限は、トランプ氏が大統領に就任して最初に取り組んだことの一つだった。
トランプ氏の命令をめぐっては米各地で訴訟が起こされ、複数の裁判所が、全国的な差し止め命令を出した。
トランプ政権は、そうした差し止めの決定を不服とし、連邦最高裁に上訴。裁判所が訴えについて審議している間に大統領令を全国的に差し止める権限は、判事にはないと主張した。
保守派が多数を占める最高裁は、賛成6、反対3で、トランプ氏の主張を支持し、司法権を狭める判決を出した。ただ判事らは、出生地主義による市民権付与を見直すトランプ氏の大統領令の合憲性については触れなかった。
この最高裁の決定を受け、トランプ氏の大統領令は今月27日に発効される予定だった。