表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏の私はもう救われない  作者: クンスト
第十四章 エデンの東
163/220

14-2 ヒガンバナ2

 戦う意思がない事を示すために必死に両手を上げ続ける。周辺で咲く彼岸花の数が気のせいでは済まされないくらいに増えてしまっているが、とりあえず矛を収めて着席してくれる。

 ヒガンバナに怪しまれている中でやりづらいが、自己紹介しておこう。


「ええっと。自分は御影と名乗っています。地球育ち、地球人。更に細かく言えば日本人。本業は天竜川付近の大学生ですが、当分、通えていないので今も籍が残っているか不安です」

「……天竜川や月桂花を知っているという事は、あそこに巣食う巨悪についても知っているはず」

「後ろで巨大な根を動かしている世界樹の親戚なら知っています」


 扶桑樹の奴。逃がした俺達を諦めてはいない。今もしつこく根を伸ばしているのだが、彼岸花の群生地帯を突破できずに被害を増やしている。うるさいだけで脅威になっていないので無視だ。



「世界樹は今も天竜川で少女を食い物にしているのですね」

「いえ、主様なら俺が討伐しましたよ」



 大偉業を淡泊に回答してしまうくらいに過去の話をしている気分だ。

 もう半年以上は過ぎただろうか。主様を倒してから日本に戻れていない。感覚的にはもう十年近く異世界を放浪している気分である。今が平成三十六年くらいって言われても驚かないぞ。


「なるほど、なるほど。それはとても喜ばしい。私も故郷をうれいていましたが、騙されて命を搾り取られる不幸な少女はもう生まれないのですね」


 対して、ヒガンバナの反応も酷く淡泊だ。


「はい。主様の犠牲となった魔法使いは多いですが、天竜川の悲劇は終息しました」

「そうですか、そうですか。それは本当に喜ばしい。嘘だとしても、久しぶりに心が温まりました」

「あの、嘘ではなく――」


 まったく信じられていないのだから感動も何もない訳だ。ヒガンバナは俺を派閥争いに敗れた妖怪か何かと考えており、言葉はすべて出まかせと決めつけてしまっている。

 訂正のために経緯は説明した。

 俺が主様を皮切りに多数の魔王を討伐した結果、救世主職となった事。

 その後に黄昏世界へと迷い込んでしまった事。

 旅の最中に妖怪共と戦いになった結果、やぶれ、扶桑へと島流しになった事。

 ……説明しながら思った事であるが、ああ、なんて嘘っぽい波乱万丈なのだろう。


「――という訳です」

「面白い創作でした。ですが、そこまで突拍子がない話であれば、ついでに輸送車両に轢かれて転生する場面を追加してはいかがでしょう?」

「まったく信じていませんね」

「単純な話です。世界樹を討伐可能な方が扶桑樹から逃げる必要はありません」


 理路整然とした受け答えに苦笑いを返す他ない。ヒガンバナの立場からすれば真っ当な判断だった。


「この鎖型の宝貝パオペイを破壊してくれるのであれば、確かな証拠を見せられるのですが」

「お断りします。その封印を解いた途端、私は用済みだと襲われるのではないですか? 魔族や妖怪に利用されるつもりはありません」


 さすがは天竜川の魔法使いである。主様の被害者となった者は面構えが違う。詐欺師には騙されないという決意に満ちた顔付きだ。

 その心持ちはよしと言いたいが、宝貝の破壊を断られてしまった。どうしよう。


「俺ばかり疑われているが、ヒガンバナも怪しいと分かっているのか。天竜川の魔法使いがどう巡り巡ったら救世主職として黄昏世界に召喚されるんだ?」


 交渉がうまくいかない。俺の事を話せば話す程に信用度が下がっていくため、反対にヒガンバナへと照準を向ける。

 いつの間にか、扶桑樹が彼岸花地帯への侵攻を諦めて黙り込んでいた。代わりに包囲網を厚くする方向に作戦をシフトしたようであるが、無限回復する扶桑樹に攻撃を断念させるとは恐るべき実力者だ。天竜川の魔法使いの水準ではない。扶桑樹と拮抗する個人は果たして人と呼べるのだろうか。

 俺の知らない内にレベルアップしまくっている今の皐月達も人類から逸脱しているが、高速高威力に傾倒する現代魔法使いと比較してヒガンバナは静かだ。戦い方が異なり過ぎて天竜川の魔法使いと判断できない。

 いや、戦闘スタイルの相違は世代差なのか。月桂花と似ている……と言ったらまた怒られそうなので黙っておく。



「私は『運』が良かったのか悪かったのか分かりませんが、天竜川という地獄から常緑絶景プラント・プラネットという地獄に迷い込めただけです。何の因果か、常緑絶景プラント・プラネットでも人は植物に支配されていました」



 方法は明かさないが、ヒガンバナは何らかの方法で『異世界渡りの禁術』を実現できるようだ。

 過去の天竜川より異世界に逃れたヒガンバナは魔王討伐に成功して救世主職へと就任。その後、黄昏世界からのSOSに応じて未知の異世界より駆けつけたという経歴だった。


「私が女神、嫦娥じょうが様の救援に応じた理由はただ一つ。世界樹と戦えるからでした。もしかしたら地球に戻れるかもという期待もありましたが、まあ、高望みでしたね」

「主様と戦いたかったと?」

「もちろんです。あの悪辣極まる世界樹は滅ぼさねばなりません」

「異世界に移動できるのなら、地球に戻ればよかったのでは?」

「それができれば苦労はしません」


 ヒガンバナの世界移動方法には制限が多いらしい。一方通行であり一度移動すると元の世界には戻れない、とかはありそうだ。


「地球で世界樹に再戦できなかったのは残念でしたが、黄昏世界での体たらくを思えばこれでよかったのかもしれません。扶桑樹ごときを相手に半世紀も耐久。未だ決着はつかず、遅々としている内に月は陥落してしまいました」


 黄昏世界で半世紀も戦い続けている。扶桑樹という大妖怪を抑え込む大役を引き受けて今も全うしていると肯定的に捉える、にはあまりにも長過ぎる持久戦だった。

 ヒガンバナが何も成せない間に仲間の救世主職は撃破され、ヒガンバナを召喚した月の女神の崩御も月蝕により知れた。

 敗残兵たるヒガンバナの戦いは、終わる前から無意味なものになってしまった。



「目的も意味も失った私に残されたものは、世界樹を滅するという私怨だけです」



==========

▼ヒガンバナ

==========

“●レベル:177”


“ステータス詳細

 ●力:81 ●守:79 ●速:71

 ●魔:10371/401(+10000)

 ●運:0”


“スキル詳細

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』

 ●魔法使い固有スキル『魔・良成長』

 ●魔法使い固有スキル『三節呪文』

 ●魔法使い固有スキル『魔・回復速度上昇』

 ●魔法使い固有スキル『四節呪文』

 ●魔法使い固有スキル『五節呪文』

 ●救世主固有スキル『既知スキル習得(A級以下)』

 ●救世主固有スキル『カウントダウン』

 ●救世主固有スキル『コントロールZ』

 ●救世主固有スキル『丈夫な体』

 ●救世主固有スキル『ZAP』

 ×実績達成ボーナススキル『不運なる宿命』(脱出)

 ●実績達成ボーナススキル『彼岸へと至る』

 ●実績達成ボーナススキル『耐毒』

 ●実績達成ボーナススキル『菜食主義(強)』

 ●実績達成ボーナススキル『光合成』

 ●実績達成ボーナススキル『毒生成』

 ●実績達成ボーナススキル『猛毒魔法固執』

 ●実績達成ボーナススキル『長呪文』

 ●実績達成ボーナススキル『猛毒』

 ●実績達成ボーナススキル『孤軍奮闘』”


“職業詳細

 ●魔法使い(Sランク)

 ●救世主(Aランク)”

==========

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミックポルカ様にて連載中の「魔法少女を助けたい」 第一巻発売中!!◆  
 ◆画像クリックで移動できます◆ 
 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない  (絶賛、連載中!!)


― 新着の感想 ―
[一言] これもしかして 紅が人間 御影が妖怪と判断されてる?
[一言] 世界樹討伐を聞いて襲い掛かってくるか自殺するかと警戒してたら良かった信じられてない 妄執だと何するかわからないし
[良い点] これまでの経歴を述べると余りにも胡散臭過ぎる…… これに黄昏世界の戦績追加すると胡散臭さの倍率ドン! いや三大仙みたいに救世主職撃破実績のある連中とか、太乙真人や白骨夫人と言った妖怪側大…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。