凍結口座への強制執行、根拠となった公正証書「内容は虚偽だった」…「借金」側代表が明かす
凍結口座から資金を引き出そうと、コンサルティング会社「スタッシュキャッシュ」(東京)が不当な強制執行をかけていた問題で、執行の根拠となった公正証書で同社から金を借りたとされた法人の代表が読売新聞の取材に応じ、「証書の内容は虚偽だった」と明かした。凍結された自社の口座から残高を回収するため金銭の貸し借りを装ったといい、公正証書が悪用された可能性が高いとみられる。(丸山滉一、糸井裕哉) 【図】一目でわかる…強制執行に対する金融機関の対応はこうだった
コンサル側「資金貸した」
スタッシュ社を巡っては、公正証書に基づく4件の強制執行で3億円超を回収したことが判明している。取材に応じたのは、このうち1件に関与した会社で代表を務めるプログラマーの男性。公正証書では、スタッシュ社から9000万円を借りたとされていた。
男性によると、男性の会社はオンラインカジノに絡む詐欺に加担したと疑われ、売上金が入った自社の口座が凍結された。取引先に数千万円の未払いがあり、処理できず困っていたところ、この取引先から「凍結を解除する方法がある」と言われ、スタッシュ社を紹介された。
「あなたに9000万円の借金があることにする」「こういうことは、よくやっているから」。2023年11月、東京都内の公証役場に赴く直前、初めて会ったスタッシュ社の代表からこう伝えられ、公証役場での役回りについても説明されたという。
公証役場では、スタッシュ社の代表とともに公証人と面会し、9000万円の貸し借りがあると述べた。会社の詳細な事業説明を求められた記憶はない。公正証書の案文を確認し、身分証を見せて、手続きは数十分程度で終了した。
同月10日付の公正証書には、男性の会社が9000万円を借りたと記載され、同日までに一括返済できなければ「強制執行に服する」とも記されていた。スタッシュ社は同13日、男性の会社の凍結口座を差し押さえる強制執行を東京地裁に申し立てて認められ、口座から残金の約8000万円が引き出された。
その後、スタッシュ社を紹介した取引先から、8000万円の一部は未払い分に充てたと聞いた。残りはスタッシュ社に渡った可能性があり、男性の手元に資金は戻らなかったという。男性は「警察や銀行と交渉しても口座は凍結されたままだったのに、公正証書があればすぐに解除され、驚いた。未払い金が丸くまとまるのなら、自分の取り分はいらなかった」と話す。