米国に「なめられてたまるか」 関税交渉難航、石破首相の透ける焦り
石破茂首相が参院選の遊説で、日米関税交渉でトランプ米政権に強い姿勢で交渉に臨む決意を強調し始めている。腹心の赤沢亮正経済再生相による関税交渉の合意の見通しが立たない中、トランプ米大統領は7日、25%の相互関税を日本に課す方針を発表。首相の言葉には、与党にとって厳しい選挙情勢が伝わる中、難航する交渉が選挙戦で与党にさらなる打撃を与えかねないとの焦りも透けて見える。
「これは国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」。9日、千葉県船橋市のJR船橋駅前。首相は街頭演説で、こう語気を強め、「私たちは言うべきことは、たとえ同盟国であっても、正々堂々、言わなければならない」と続けた。
日本の首相が同盟国の米国相手に「なめられてたまるか」などと激しい口調で語るのは極めて異例だ。首相は発言の意図について、10日に出演したテレビ番組で、安全保障や食料などをめぐる日米関係に触れて「いっぱい頼っているのだから言うことを聞きなさいということだとすれば、それは侮ってもらっては困りますということ」と説明した。
3日の参院選公示後は、首相が遊説で関税交渉を取り上げる機会は少なかった。しかし、トランプ米大統領が7日に日本に8月1日から25%の相互関税を課すと書簡で通知した後、積極的に関税交渉に言及し始め、米政権に対し強気の言葉が目立つようになった。
党幹部も同様だ。自民党の小野寺五典政調会長は8日、党会合で「手紙一枚でこのような通告をするということは、同盟国に対して大変失礼な行為だ。強い憤りを感じている」と述べ、トランプ氏を公然と批判した。
官邸幹部の一人は首相発言について、「選挙情勢が与党にとって厳しい中、米国とちゃんと交渉していることを強調したい気持ちがある」と解説する。首相はもともと選挙戦で「高関税措置の回避」を実績としてアピールする思惑だった。だが、報道各社の情勢調査で、首相が勝敗ラインとした「非改選も含めて与党で過半数」の獲得が微妙と伝えられる中、難航する関税交渉で与党がさらなる窮地に追い込まれかねない状況にある。
実際、野党は攻勢を強める。立憲民主党の野田佳彦代表は9日、青森市での演説で「ゴールが遠のいていく。ハードルが高くなっている。交渉がうまくいっていない証拠だ」と強調。国民民主党の玉木雄一郎代表も8日、米側の通知について「日米間で人間関係が築けているのか。それすら疑われるような内容だ」と指摘した。
野党側が批判する中、首相は9日の演説で「お互いが国益をかけて正面から交渉をしている時、国内からああだ、こうだと足を引っ張って、どうして国益が実現するんだ」などと牽制(けんせい)した。確かに関税交渉はこれまで「国難」への対応に野党の協力を取り付け、政権批判を封じる政治カードだった。だが、すでに局面は様変わりした。ある立憲の幹部は「この状況で首相に抱きつかれているように見られると、我々まで信頼をなくしかねない」と首相を突き放した。
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- 【解説】
この記事における石破総理の「米国に舐められてたまるか」発言の扱いには強い疑問を覚える。この発言は選挙対策「程度」にとどまるものなのだろうか。記事においても「極めて異例」とあるが、どう「異例」なのだろうか。記事からは、単なる一選挙を超えた、戦後保守政治の根幹を揺さぶる異例の発言かもしれないという緊張感が伝わってこないのだ。この発言を政局でしかみられていないのは明らかに萎縮であり、世界をみていない。石破総理は翌10日のBS番組で「米国依存から自立するよう努力しなければならない」とさらに踏み込んだ発言をしている。石破総理の「焦り」の一言一言は、これから独り歩きして日米同盟を揺るがすことになる。野党ならともかく、与党のしかも総理大臣がこうした発言をすることの政治的、歴史的により深いアプローチを期待したい。
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- 【提案】
トランプ大統領や支持者たちは、長年にわたって米国が同盟国を守り、国際秩序を維持してきたにもかかわらず、同盟国は感謝もせず、製品を米国に売りつけて貿易赤字を作り出してきたと感じている。このため、トランプ大統領は同盟国の製品に関税をかけるとともに、防衛費や米軍の駐留経費負担の増額を求めている。書簡で関税率を通告するやり方は一方的だが、日本を「なめている」わけではない。米国の同盟国に対する不満は一定程度正当であり、日本はその不満を理解し、共感を示した上で交渉に臨む必要がある。参院選の最中に書簡を送りつけられ、反発せざるを得ない事情はわかるが、日本政府が米国の不満を理解する姿勢を示していたなら、このような事態は回避できたのではないか。
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