サカイ引越センターが内部告発した元従業員を提訴 事実を認めて謝罪した件…専門家「スラップ訴訟に近い」

2025年7月9日 19時00分
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 顧客の個人情報約400人分が流出した事実を内部告発して会社の信用を傷つけたとして、引っ越し大手のサカイ引越センター(堺市)が、元従業員ら3人に100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したことが分かった。被告側は「法令順守のために報道機関の力を借りるしかないと思った。公益通報に当たり、訴訟は嫌がらせに近い」と批判、近く予定される第1回口頭弁論で請求棄却を求める方針だ。

◆サカイ側は「会社の信用傷つけられ損害」と主張

 提訴されたのは、サカイの労働組合の元組合員と組合関係者。訴状などによると、2022年3月ごろ、サカイの従業員が川崎市内のごみ集積所に、引っ越し先などの個人情報が記載された見積書の写し406通を半透明のごみ袋に入れて廃棄した。同市にある労組が事実関係を把握。流出した見積書を回収し、会社に伝えた。

内部告発のきっかけになった、集合住宅のごみ捨て場に出されていた「御見積書」などの引っ越し資料(一部画像処理、提供写真)

 サカイ側は、その後に元組合員らが「社会的な評判をおとしめる目的」で東京新聞に情報提供し、会社の信用を傷つけて損害を与えたと主張する。見積書流出については2022年5月、東京新聞を含む複数のメディアが報道。サカイは謝罪文をホームページに掲載した。
 一方、被告側によると、労組から見積書流出について伝えられたサカイ側の担当者が「見積書を持参すればシュレッダーにかける」と発言。隠蔽(いんぺい)されることを恐れ、労組が東京新聞へ情報提供したとしている。

◆男性「3年以上追いかけ回されている」

 元組合員らは低賃金やハラスメントなど労働環境の改善を訴えてきた経緯がある。提訴された元従業員の男性によると、退職後に同社役員と弁護士が突然、自宅を訪れ、「誰が新聞社に持参したか」などと問われた。複数回インターホンを鳴らされたり、ドアをたたかれたりしたことで、男性の妻は、インターホンの音におびえて出ることができなくなったといい、「3年以上追いかけ回され、早く平穏な日々に戻りたい」と訴えた。
 代理人弁護士は「報道と会社の損害との因果関係が全く不明で、会社の意に沿わないことをした者への嫌がらせ的性格が強い不当な提訴だ」と批判した。(竹谷直子)

  ◇  ◇

◆専門家「個人に精神的、金銭的負担をかけるやり口」

 サカイの話 「係争中ですのでコメントは控えさせていただきますが、弊社ではお客様に関わる情報管理は引き続き徹底してまいる所存です」
 内部告発に詳しい淑徳大の日野勝吾教授の話 「(本件は)公益性が高く会社も認めており、真実相当性がある。やむなく新聞社に情報提供した手段も妥当。勇気を持って声を出した個人に精神的、金銭的負担をかけるやり口に見える。スラップ訴訟に近い」

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