日本アニメ体験、配信2強が力 世界同時視聴で売り上げ増、北米イベント盛況

 日本のポップカルチャーを紹介する北米最大級のイベント「アニメエキスポ」が米ロサンゼルスで開かれた。会場で目を引いたのが、日本アニメを世界に急拡大させている「ネットフリックス」と「クランチロール」のネット配信2社だ。リアルな場の交流やグッズ販売も組み合わせ、さらにファンの裾野を広げる。

 ■グッズや制作者との交流、「つなぎとめ」期待

 出版やゲーム、アニメ制作に関わる日本企業が多数出展。ファンらはキャラクターと記念撮影したり、仲間とゲームで対戦したりして楽しんだ。

 家族4人で海賊アニメ「ワンピース」のコスプレ姿で来場したキャメロン・レイズさん(15)は、両親と弟にもキャラクターになりきるよう頼んだ。ジブリ作品をきっかけに日本アニメに夢中に。「ここでは自分が作品の中にいる気分。クール!」と話した。

 会場の熱気は、日本発のアニメ市場の拡大を物語っている。内閣府の今年3月の資料によると、アニメの海外売り上げは2023年に約1兆7千億円で、10年前の6倍に増えた。

 立役者が「配信」だ。10年代以降、日本で放送されたアニメが世界でほぼ同時配信できるように。単発作品だけでなく長編シリーズも視聴できるようになり、海外のアニメファンが増えた。

 アニメ配信の2強が、いずれも米国発のネットフリックスとクランチロールだ。2社で世界シェアの8割を握るとの市場調査もある。

 映画やドキュメンタリーにも強いネットフリックスは、世界190カ国以上で配信するのが強み。独自コンテンツの制作にも力を入れ、人気を博したワンピース実写版がこれまでアニメを見なかった人を引き込むなど良い循環を作っている。

 アニメに特化するのがサンフランシスコ発のクランチロールだ。日本アニメを素早く世界に配信することで、有料会員数をこの4年で4倍の1700万人に増やした。

 エンタメを重視するソニーが21年に買収したが、日本国内での配信はしていない。

 世界のアニメ関連市場は、今後も伸びると予想されている。しかし、配信サービスは無料体験後に解約されがちで、会員のつなぎとめが課題だ。

 カギになるのがエキスポのような「体験」。

 クランチロールは会場で、「鬼滅の刃」をアピールし、刀を持って3D写真を撮るコーナーなどを設けた。参加型イベントに熱心な同社が狙うのは「ファンのコミュニティー化」だ。

 新作映像を披露し、制作スタッフへの質問も受け付けた。ファンは制作者の思想や制作過程にも関心が高く、リアルな結びつきで作品への愛着を深めるという。

 ネットフリックスもブースで、独占配信する「サカモトデイズ」のグッズ販売やゲームで遊べるコーナーを設置した。

 ファンとのふれあいで得た声を企画段階から取り入れ、ヒット作につなげることもある。ある制作会社関係者は「作品づくりの体験も売る時代になった」と話す。(ロサンゼルス=奈良部健)

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