都内タワマン13階から住人が飛び降り→物件オーナーが借主の相続人に「損害賠償564万円」を請求…裁判所が下した判決は【弁護士が判例解説】
裁判所が下した「妥当な損害賠償額」
3.賃借人の自殺と賃貸人の損害との相当因果関係 本件では、賃借人の自殺と賃貸人の損害との相当因果関係、および具体的な損害額の算定が問題となりました。 賃貸人側は、以下の2点を損害として主張しました。 (1)新たな賃貸借契約が締結されるまでの間の空室期間6ヵ月分の全額(23万5,000円×6ヵ月=141万円) (2)新賃貸借契約の賃貸期間である4年間については、新賃料との差額((23万5,000円-15万円)×48ヵ月=408万円)の損害 ■上記(1)の損害について これに対し、裁判所はまず上記(1)については以下のように判断し、3ヵ月分のみを損害と認めました。 「原告が賃借人募集を開始したのは本件賃貸借契約が終了してから約1ヵ月が経過した令和2年10月末であり、本件自殺の有無にかかわらず原状回復工事期間中に新賃借人が入居することは考えられないことからすれば、上記1ヵ月の空室期間は本件自殺とのあいだに相当因果関係があるとはいえない(なお、本件自殺の態様に照らし、通常よりも長期間の原状回復工事を要したとは考えられない)」 「また、一般に、入居希望者が現れてから実際に賃貸借契約を締結して入居するまでは一定期間を要するものであり、特に、新年度の4月から入居することを希望する者は、前年度の2月頃に物件探しをして物件を決め、4月1日からを契約期間として契約することが多いこと(公知の事実)からすれば、令和3年2月中旬頃に新賃借人が現れてから同年4月1日から入居するまでの間の約1ヵ月半の空室期間についても、本件自殺とのあいだに相当因果関係があるとはいえない」 「そして、本件建物が利便性の高い地域に存在するマンションであり空室率は低いものであったことを考慮しても、通常、一定程度の賃借人募集期間は必要であるから、本件自殺と相当因果関係のある空室期間は3ヵ月とするのが相当であり、次のとおり70万5,000円が損害額である」 ■上記(2)の損害について 次に、上記(2)の点について、以下のように述べて、3年間30%の減収が見込まれ、それが損害になると認めました。 「本件建物の従前賃料は月額23万5,000円であり、これは相場に照らして相当なものであったこと、本件建物は利便性の高い地域に存在するマンションであり空室率は低いものであったこと、亡Aが死亡したのは本件建物内ではなく、賃借人の心理的抵抗感は本件建物内で死亡した場合に比べれば低いと考えられること、 本件建物は東京都心部のタワーマンションの1室であり近隣との人間関係は希薄であると考えられること、原告から依頼を受けた仲介業者は従前賃料から30%を減額した月額賃料16万4,500円で募集をしていたことなどの事情を総合考慮し、新たな賃貸借契約が締結された令和3年4月分から、本件自殺の3年後である令和5年8月分までの29ヵ月分の賃料について、従前賃料額の3割の範囲に限り相当因果関係を認める」 以上の判断の結果として、賃貸人の損害は、空室期間の損害70万5,000円と減額分204万4,500円を合計して274万9,500円が相当因果関係のある損害であると結論づけられました。 本件は、飛び降り自殺という形態や都心部の大規模マンションという事情を踏まえ、損害期間や減額率に上限を設けた点において、参考になる事案といえるでしょう。 ※この記事は、2025年2月19日時点の情報に基づいて書かれています(2025年6月24日再監修済)。 北村 亮典 大江・田中・大宅法律事務所 弁護士
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