「人は宇宙で暮らせない」ガンダム生みの親、富野由悠季氏スペースコロニー否定で会場騒然
一方で富野氏は、移住とは異なる宇宙進出の必要性を説いた。「これからの10年で日本がやるべきことは、低軌道までお客さんを連れて来て、観光旅行できるようにすることではないか」と提案。「観光だけではない。政治家や軍人、宗教者、科学者に低軌道衛星まで上ってもらって地球を見ていただきたい。間違いなく世界観が変わるはずだ」と述べた。宇宙から見れば当然、地球に国境線はなく、実現すれば90分程度で1周できるため、「決して大きくない」ことが実感できるという。「3日間くらい地球を観察して、機内で討論すれば大きな学びになるだろう」と持論を展開した。そして、「子供たちにこの体験をさせてあげたい。そのためには決定的に安全なロケットをつくる必要がある」と話した。
稲谷氏は宇宙進出について、「人が行かないと物語が始まらない。『もっとやれ』になるか『やはり難しい』になるか分からないが、やる手前に止まっていては進まない。若い世代の方には、そういうマインドでやってほしい」と述べた。
■ガンダム、「南北戦争」を参考に
富野氏は手塚治虫の虫プロダクションを経て、さまざまなアニメ作品で絵コンテなどを担当。1979年にテレビで放映された機動戦士ガンダムでは、総監督のほか、原作、脚本、演出などを担当した。それまでの巨大ロボットものとは一線を画し、人型兵器「モビルスーツ」などによる戦争を描いた。宇宙移民による国家が地球連邦政府に宣戦布告するというストーリーで、人間ドラマも高く評価された。
富野氏は8日、産経新聞の取材にガンダムの構想時を振り返り、「私は戦争について何も知らなかったので、いろいろ調べて『風と共に去りぬ』に出てきた(米国の)南北戦争を参考にした」と話した。移民が重要な要素だったことなどが共通しているという。ガンダムは現在に至るまで、富野氏が直接関わらない作品を含めて45年以上、シリーズが続いている。(高橋寛次)