新しい政党好きな人、マスコミや政府に不信感 秘密の組織も「ある」

小宮山亮磨

 好きな政党の情報をユーチューブやSNSから多く集めている人たちは、マスコミや政府、専門家、警察などへの不信感が強く、外国人が優遇されていると考えがちだったり、ワクチンへの不信感が強かったりする――。

 朝日新聞と大阪大の三浦麻子教授が、共同で今年2月から毎月実施しているネット意識調査でこんな傾向が浮かび上がった。7月7日までに計8回の調査を行い、計5千人超から回答を得た。

 「一番好きな政党」について尋ねたうえで、社会制度についての考えや信頼度などを聞いた。

 マスメディアについて、「まったく信頼していない(1)」から「完全に信頼している(5)」までで選んでもらったところ、政党助成法上の「政党要件」を満たす10党では、日本保守党を好きだと答えた人で不信感が最も強く、平均1.62だった。次いで参政党1.79、国民民主党2.07、れいわ新選組2.15。全体の平均は2.27で、「どちらともいえない(3)」よりも低かった。

 こうした党を好きな人は、「マスコミは利益のため、意図的に分断を招くような報道をする」「マスコミはみんな悪い」といった考えに賛同する傾向が強かった。好きな政党についての情報は、ユーチューブなどの動画共有サイトやX(旧ツイッター)などのSNSから多く得ていた。

 また、この4党を好きな人たちは、政府や警察、大学教授など専門家への信頼度も軒並み低かった。

「秘密の組織があると思う」にも賛同

 さらに、参政と保守、れいわを好きな人は、「大衆には知らされない、とても重大なことが世界で数多く起きていると思う」「政治的決定に強い影響力を与える秘密の組織があると思う」といった考えに賛同する傾向が強かった。

 米国では、トランプ大統領がこうした秘密組織「ディープステート(影の政府)」があると主張し、解体を掲げて支持を伸ばした経緯がある。

 また、今の日本で「外国人が優遇されている」と思うかを尋ねたところ、賛同する傾向が最も強かったのは保守を好きな人で、平均4.26だった。参政が4.18、れいわが3.65、国民民主が3.62と続いた。平均は3.24で、全体を平均しても、ある程度は「外国人が優遇されている」と感じていた。

 人権問題にとりくむ複数のNGOは「日本には外国人に人権を保障する基本法すらなく、選挙権もなく、生活保護を受けることも法的権利としては認められていない」との声明を出して、こうした見方を否定している。

 新型コロナウイルスのような感染症のワクチンの接種を「推奨すべきでない」と考える人は、保守3.51、参政3.41、れいわ3.28の順だった。この回答の全体の平均は2.89で3を下回っており、「推奨すべきでない」より「推奨すべき」という考えに近かった。

 こうした意識は、好きな政党についての情報をどこから主に得ているかでも、違いがあった。

 参政と保守、れいわを好きな人は動画共有サイトやSNSを多く使っているのに対し、自民や立憲民主、公明、日本維新の会などを好きな人はテレビや新聞から情報を得ている人が多く、これらのメディアに対しての信頼感は高かった。政府や警察、専門家への信頼感も高めだった。

 ただ、国民民主を好きな人は、テレビや新聞から主に情報を得つつも、動画サイトやSNSから情報を得る割合が多かった。

 一方、10党のどの政党を好きな人たちも、親戚や隣人への信頼度は高かった。党による差はあまりなく、多くの人が近しい人への信頼感を持っていることがうかがえた。

社会への不満が「不信」につながった

写真・図版
三浦麻子・大阪大教授=本人提供

 大阪大の三浦麻子教授(社会心理学)の話

 参政と保守、れいわは、イデオロギー的にはまったく違うが、それらの政党を好きな人たちはいずれも、今の社会に不満があり、警察や司法など社会を支えている制度への不信感が強い点で共通している。

 そうした人たちはマスメディアへの不信感も強く、新聞やテレビを見ない。情報は主に動画共有サイトやSNSから得ていて、その結果、制度への不信感を強めることもあるはずだ。

 今の社会を壊してほしいと考える人たちから、特に好かれているのが参政だ。

 参政が掲げる「日本人ファースト」は、今の社会への不満が大きい有権者にとって「あなたたちを大事にします」というメッセージとして響いているのではないか。自分は恵まれていないと感じている人たちに、博愛主義などを持ち出して説得しても届きにくい。

 保守のように「日本の国体を守る」といった強い右派的イメージを打ち出していないことも、受け皿になりやすい理由になっていそうだ。

 一方、自民と維新、立憲民主もイデオロギーはかなり違うが、こうした政党を好きな人たちは、現状にそれほど大きな不満を持っておらず、既存の制度を比較的信頼している。

 国民民主は両者の中間にいる。それぞれを「新興、既存、その真ん中」と考えれば理解しやすい。

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ネット意識と選挙

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この記事を書いた人
小宮山亮磨
デジタル企画報道部兼科学みらい部
専門・関心分野
データ、統計、自然科学、社会科学
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    松谷創一郎
    (ジャーナリスト)
    2025年7月10日8時0分 投稿
    【視点】

    先日の調査も興味深かったのですが、今回も非常に興味深い内容でした。保守・参政は極右思想である一方で、れいわ新選組は基本的にリベラルというか極左です。かように思想的には正反対なのですが、社会不信・レガシーメディア不信が強い層から支持を集めているという点で共通しており、これは非常に面白い現象だと思います。 なかでも「外国人が優遇されている」という質問に対して、れいわ新選組の支持者も非常に高い割合で「そう思う」と回答している点です。排外主義を打ち出すの保守・参政の支持者では意外性はありませんが、れいわ新選組がそれに続いているのは注目に値します。 これは社会不信が強いひとびとがネットメディアで自分の好む情報ばかりを摂取して、インターネットで極端な意見に傾倒していく状況といえます。とてもわかりやすく出ています。 れいわ新選組の山本太郎代表は、元芸能人ということもありSNSや動画の使い方が非常に派手です。それはリベラルの共産党や社民党の生真面目さとは対照的で、耳目を引くプロモーションを展開しています。リベラル側・極左側でポピュリズムを実践している状況です。 記事の後半に「親戚や隣人への信頼度は高かった」とありますが、これはおそらく孤独感の強さを確認するための質問だと推察します。エーリッヒ・フロムの『自由からの逃走』をはじめ、歴史的には孤独感の高さがファシズムにつながる研究結果がありますが、今回の調査ではそうした傾向が見られなかったということでしょう。 ということはつまり、現状における保守・参政(あるいはれいわ)の躍進の要因は、従来のファシズムを生み出した孤独感の問題というよりも、むしろネットメディアとの親和性がその要因だとして捉えるべきだという印象を持ちました。

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  • commentatorHeader
    三浦麻子
    (大阪大学教授=社会心理学)
    2025年7月10日8時0分 投稿
    【解説】

    この共同調査では,日本の有権者が政党や選挙をどう捉えているかに加えて,人口統計学的な特徴(性別,年齢,居住地域など)やライフスタイル,より一般的な考え方についても問うています.2月から5月までに段階的に5000名超の回答者を募集して,その後はその方々に継続して協力を依頼する,いわゆる「パネル調査」を行っています.状況に応じた変化の有無をなるべく高い解像度で捉えるためです. 今回は,7月1日に実施した調査で「一番好きな政党」として選んだ政党を手がかりにして回答者をグルーピングし,周囲への信頼感,陰謀論的心性,今般の社会問題への態度などの特徴が分析されています.周囲への信頼感と陰謀論的心性は,4月あるいは5月にお尋ねしたもので,項目は, 眞嶋良全 日本語版陰謀論的心性質問票の開発と妥当性の検討 https://doi.org/10.14966/jssp.2023-012 に基づいています.眞嶋先生は,陰謀論に関する心理学研究の日本における第一人者です.

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