英国の郵便局で起きた冤罪(えんざい)事件の調査委員会は2025年7月8日(現地時間)、事件に関する報告書の第1弾を公開した。報告書では富士通とポストオフィス(国営郵便局)、英政府に対し、被害者への迅速な救済措置を求めた。3者へ向けて、2025年10月10日までに救済措置の勧告に対し回答を求めた。

 同事件の経緯は以下だ。英国で2015年までに、窓口の現金残高と会計記録が合わなかったとして700人以上の郵便局長らが横領罪などで起訴された。しかし、後に富士通の英子会社である富士通サービシーズが開発した勘定系システム「Horizon」の欠陥が原因の冤罪であると判明した。

 ポストオフィスは2020年に金銭的な救済制度「Horizon Shortfall Scheme(HSS)」を開始していた。2025年4月時点で9437件が請求され、5725件が支払い済みであるという。支払総額は5億700万ポンドに上る。HSSを含め、2025年6月3日までに4種類の救済制度が設置された。一方、報告書では補償の支払いの遅れや金額が不十分な点も指摘し、完全かつ公正な救済を実現すべきだとしている。

 富士通は、「報告書が公開されたことを歓迎し、その勧告への対応について検討する。サブポストマスター(民間受託の郵便局長)の皆さまの苦悩に関与していることについて、今日改めて反省と謝罪の意を表明する。被害者の方々にとって公正な結果が得られるよう早期の解決を望んでいる。最終報告書に向けて法定調査に全面的に協力することを約束するとともに、補償への貢献について英政府と協議する」とした。