Mrs. GREEN APPLEが「CD聴こうよ。」プロジェクトに込めたメッセージを読み解く

柴那典音楽ジャーナリスト
「MGA MAGICAL 10 YEARS LANDMARK IN MIYASHITA PARK」(提供:ユニバーサルミュージック)

Mrs. GREEN APPLEがデビュー10周年を迎え、アニバーサリーベストアルバム『10』をリリースした。

2025年のBillboard JAPAN上半期チャートにて史上初となる主要部門3冠を獲得するなど、各種チャートを席巻するミセス。約2年ぶりのCD発売となる『10』のリリースにあわせ、「CD聴こうよ。」と題したプロモーション企画を展開中だ。

■CDの魅力を再発見する特別企画

SHIBUYA TSUTAYAでは7月7日から14日にかけて特別企画「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」が開催されている。予約者のみ入場可能の展示に筆者も訪れた。

「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)
「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)

「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」では、「そもそもCDとは?」という導入から、アナログレコードからストリーミングまでの音楽メディアの変遷が解説される。平成31年分のCDランキングを実物で壁一面に展示し、メンバー3人がCDの思い出や"CDあるある"を記すなど、「CDで音楽を楽しむ文化」をテーマにした展示が並ぶ。大森元貴、若井滉斗、藤澤涼架がそれぞれセレクトしたレコメンドCDも展示されていた。

「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)
「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)

また、物販コーナーでは限定コラボグッズとして、かつてTSUTAYAで使用されていたレンタルCD返却袋を模したバッグも販売されていた。

ストリーミングが一般的になった今だからこそ、「CDを手にとって聴く」魅力を再発見できる体験となっていた。

「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)
「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)

「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)
「ミセスとCD聴こうよ。展@TSUTAYA」(提供:ユニバーサルミュージック)

■全国の商業施設とコラボ、JR山手線ジャックも

Mrs. GREEN APPLEはデビュー10周年プロジェクトとして「MGA MAGICAL 10 YEARS LANDMARK」も展開している。こちらは全国の商業施設とのコラボ企画を行い、各都市でポップアップストアをオープンする。

その一環としてRAYARD MIYASHITA PARKで7月7日から13日に開催される「MGA MAGICAL 10 YEARS LANDMARK IN MIYASHITA PARK」にも訪れた。

「MGA MAGICAL 10 YEARS LANDMARK IN MIYASHITA PARK」(提供:ユニバーサルミュージック)
「MGA MAGICAL 10 YEARS LANDMARK IN MIYASHITA PARK」(提供:ユニバーサルミュージック)

同会場ではポップアップストアに加え、遊歩道に代表曲をモチーフにしたモニュメントを設置。アートギャラリー「SAI」にて事前予約制の特別企画「Mrs. GREEN APPLE 10th Memorial Room」を開催し、彼らのキャリアを巨大なビジュアルと共に体感できるような企画が展開されている。

「Mrs. GREEN APPLE 10th Memorial Room」(提供:ユニバーサルミュージック)
「Mrs. GREEN APPLE 10th Memorial Room」(提供:ユニバーサルミュージック)

また、7月3日から7月17日までの期間限定で10周年のロゴをあしらい特別にラッピングしたJR山手線も運行している。この山手線ジャックも「CD聴こうよ。」キャンペーンの一環で、車内の中吊り広告やトレインチャンネルもミセス仕様となっている。

なぜMrs. GREEN APPLEはここまで大々的なプロジェクトを展開しているのか。

これは筆者の推測だが、シーンの最前線に立つ今のミセスは、自分たちの作品をヒットさせることだけでなく、「音楽の楽しみ方」や「音楽の魅力」自体を世に広めることにチャレンジしているのではないだろうか。

かつての渋谷では、CD発売日が"祭り"のような盛り上がりを見せることがたびたびあった。大物アーティストのリリース日にはSHIBUYA TSUTAYAやタワーレコード渋谷店の店頭に特設ブースが設けられ、その熱気が街行く人に可視化されていた。

ストリーミングが普及したことで音楽のリスニングは“個”の体験となった。新作のリリース情報はアプリやSNS経由で伝わることが一般的になった。タワーレコードなどのCDショップは今も健在だが、それでもCDのリリースが大規模な広告展開と共に街全体を賑わせるような光景は、すっかり見かけなくなった。

今は失われてしまったあの盛り上がりを再び生み出すことも、「CD聴こうよ。」や「MGA MAGICAL 10 YEARS LANDMARK」が目指していることの一つなのではないだろうか。

タワーレコード渋谷店の模様(提供:ユニバーサルミュージック)
タワーレコード渋谷店の模様(提供:ユニバーサルミュージック)

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音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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