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黄昏の私はもう救われない  作者: クンスト
第四章 謎多きかな黄昏世界
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X‘-1 神が示す可能性

「――結論から言おう。御影君を救出するのは不可能だよ」


 ウィズ・アニッシュ・ワールドの管理神はそう言った。

 所詮は位の低い中間管理の神格である。万能なる存在たる世界の創造神の代役ごときでは、できる事は限られる。


「馬鹿ッ。単細胞なバーバリアン共に対して結論から言うな! 迂遠うえんに言って生存期間を長引かせろ」

「よーし、無能な神を滅ぼして人間の時代の始まりよ。火刑にするから皆、松明を持ちなさい」

「永久凍結刑は?」

「電気イスの刑は……倫理的過ぎるから駄目です」

「証拠隠滅用の穴は掘ってあるから」


 四人の温和な顔付きの魔法使い職により、管理神はその依り代となっている大学生ごと処分されかけていた。彼女達の後方にはよりドラスティックな刑の執行を望むエルフ少女が対物ライフルを構えているので、相対的には彼女達は穏健派である。


「待てッ。この無能神に代わって俺に弁明させろ!」


 くちばしのあるペストマスクを被った男は必死に命乞いのちごいを行う。神の言葉を代弁するとはまるで巫女職のようだが、実はただの大学生だ。


「私達は御影救出の答えについて、はいかイエス以外を受け付けないですよ。紙屋先輩」

「最終的に殺すにしろせめて聞いてくれっ。御影の馬鹿野郎が別の世界に跳ばされているのは確定している」

「なら、迎えに行くだけじゃない」

「それが不可能な世界だと、この厄病神は言っているんだ。他世界からの干渉に対して防壁を展開している世界だから、『異世界渡りの禁術』スキルでも到達できないらしい」

「僕からも補足しよう。世界間の移動をさまたげるという事自体がありえない。まず必要性がない。世界を移動するという事自体が稀だからね」


 ペストマスクの男は多重人格者のように口調を変化させて命乞いをしていた。実際は人間の体に居座った管理神と不幸な人間の二人で命乞いをしているだけである。


「……世界を渡った主様にものすごく迷惑をかけられたのだけど?」

「特殊な事例なんだよ。君達が想像するよりも世界の数はずっと多い。当事者にとっては納得しがたいだろうけど、他世界を害する魔王自体が本当にレアケースなんだ」

「……禁忌の大空洞の怪生物共を含めて、そのレアケースが二度も続いているのだけど?」


 命乞いの仕方が悪かったのだろう。レアケースか否かなど当事者には無関係である。

 火属性っぽい魔法使い職が火炎魔法の詠唱を開始。ペストマスクの男の足元に並べた薪に着火しようとしている。


「世界間の移動を妨げる事ができるとすれば、それは世界を管理できる神しかありえない。少なくとも、たった四千年しかキャリアのない僕よりも上位の神様さ。下手すると創造神級。御影君のいる世界の創造神が他世界を拒絶しているとすれば、矮小な僕達が何をしても無駄だろうね」

「ふーん、変わった遺言だったわね。もう良い?」

「この厄病神、二度と喋るなッ!!」


 神は死んだ。ついでに紙も死ぬ。


「誰か、俺の命を助けてくれる有能な神様を連れて来い!」

「我を呼んだか―?」

「地方都市の端っこの土地神は呼んでいない。もっと徳の高そうな神様、俺を助けてくれっ!!」

「……なるほど、別の神。当たってみる価値はある」


 しかし、困った時の神頼みという言葉がある。この言葉はなにも、人間だけに適用される言葉ではない。



「君達の世界の神性に助力を願えばあるいは。少なくとも、僕よりも力ある神なのは間違いない」



 ウィズ・アニッシュ・ワールドの管理神は、人間から階級昇華クラスチェンジしたばかりの新(じん)だ。蟲星に近過ぎる立地ゆえ、将来的に滅びる可能性高し。こう合理的に育てるだけ無駄と判断を下した創造神が育成を諦めた世界を、善意で引き受けただけの元人間、元救世主職である。

 管理神としてのくらいは底辺だ。

 他世界には、より長く世界を育成し、より強い力をたくわえた神がいるだろう。


「私達の世界の神様? アラハバキ??」

「今の名前は分からない。いや、そもそも存在が無かったというのが正しい。禁忌の土地たる君達の世界は創造神が育成を諦めた世界、神無き世界。地球はとうの昔に見捨てられている」

「俺の命がかかっているのだから錯乱さくらんして意味の分からない事を言うな厄病神! 地球が神様に見捨てられているのなら、誰に頼るっていうんだ!」


 神が一切管理していない危険な世界を、各世界の管理神達は禁忌の土地と定めている。整備された村や街に対する未開のサバンナやジャングルといった意味合いだ。

 すべての禁忌の土地が危険とは限らない。全球凍結や隕石落下で知的生命が育っていない世界が大半だ。が、しかし時には、生物が異常な進化を続けて蟲星のような状態にいたる。

 地球も創造神が管理を放棄した世界、禁忌の土地に該当する。

 大切に生命の系統図をはぐくんだ結果、蟲星の怪生物が誕生したとなれば、創造神とて見限りたくもなる。なお、創造神はリセットマラソンなどしない。失敗した世界をそのままに新しい世界を創造する。


「誰が無管理サバンナで育ったバーバリアンで怪生物よ。燃やすわよ」

「地球は蟲星の惨状を隠す内容物偽造……もとい、か細くわずかに存在した未来の姿でしかなかったけど、今は違う。細かい説明ははぶくけど、今の地球は蟲星からのやり直しが確定した後の世界。だから、彼女がいるはずさ」


 けれども、地球が蟲星となる可能性は否定された。御影がある女性を呼び寄せて解決にみちびいている。その後、救世魔王と呼ばれたカンブリア起源種により世界は五億年前へと戻って、現在の地球へといたっている。

 ならば、今もきっと、地球では優しき地母神が子供達を見守っているはずだ。

 子供に優しき彼女ならば、必ず手を貸してくれるだろう。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
 ◆コミックポルカ様にて連載中の「魔法少女を助けたい」 第一巻発売中!!◆  
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない  (絶賛、連載中!!)


― 新着の感想 ―
[良い点] 電気椅子は倫理的! [一言] 神が爪先よりも小さそうなこの辺の世界において救世主職はなくてはならない存在でしょうが、レアケースとは言えミスった時がツラいですね(蟲星、黄昏世界を見ながら) …
[気になる点] 優しいからこそ拒否されないかな 前回は3名洗脳 一匹ゾンビ化 封鎖されてるなら物資もほとんど持ち込めないから足手まといになる可能性の方が高くないかな
[一言] 前回の子捨てを見て知識職エルフを思い出しました 人間性を捨てたら人間族唯一の強みの運を捨てることになるからただの魔族の下位互換 畜生には運は不要ってことなのかな 汝、我が子たれは黒曜の親は淫…
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