自民党の鶴保庸介参院予算委員長は、8日に和歌山市であった参院選和歌山選挙区の公認候補の個人演説会で、2024年1月の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言した。9日に急きょ記者会見を開き、「失言だった」として謝罪し、発言を撤回した。
鶴保氏は会見で責任の取り方を問われ、「皆さんの気持ちが収まることであれば、どういう形であってもやぶさかではない」としたが、議員辞職や離党については「現状では考えていない」と否定した。
被災地からは「復興に水を差す」などと鶴保氏の感覚を疑う声が上がっているほか、身内からも批判が出ている。
鶴保氏は8日の演説会で、地方から都市部への人口流出に対する危機感を語り、両方を行き来する「2地域居住」を推進すれば、地方の関係人口創出につながると主張。
能登半島地震をきっかけに、被災者が居住地以外で住民票の写しを取得する手続きが容易になったとの話題に触れた際、「運のいいこと」と口を滑らせた。
鶴保氏は党の「二地域居住推進議員連盟」の会長を務めている。
9日の会見では、「被災地への配慮が足りなかった。言葉足らずであったと同時に、被災地のご苦労を考えると例示として出すにも適当だったかどうか。深く考えなければならない」と反省の弁を述べた。
「おおばかもんが」。石川県穴水町で事務用品店を営む吉村扶佐司さん(77)は憤りをあらわにした。能登半島地震では自宅と店舗が被災。会長を務める穴水商店振興会は、地震前に営業していた40軒のうち約半数が再建したにすぎず、町外に転出する人も後を絶たないという。
「先行きが見えない中、これから新しい仕事を興そうとするところに、今回の(鶴保氏の)発言だった。政治家は地元で頑張ろうとしている人の足を引っ張るのではなく、しっかり現場を見て苦悩に耳を傾け、応援してほしい」と求めた。
馳浩・石川県知事も9日、「(鶴保氏の)発言は、県民の心を深く傷つけるものであり、被災県の知事として到底容認できない」とのコメントを発表した。
参院選和歌山選挙区は改選1議席を巡って新人7人が立候補。自民公認で二階俊博元幹事長の三男伸康氏(47)と、伸康氏との公認争いに敗れ無所属で出馬した前和歌山県有田市長の望月良男氏(53)が激しい保守分裂選挙を演じている。
伸康氏の陣営関係者は「文脈を考えると(鶴保氏が)伝えたかった趣旨は分かるが、発言のダメージは大きい」と険しい表情。県連関係者も「被災者の気持ちを考えたらおわびのしようもない。厳しい選挙で心労をかけている支援者にも申し訳ない」と語った。【駒木智一、加藤敦久、中尾卓英、竹中拓実】