「遺族感情に配慮を」 日弁連の「定番」死刑反対声明に座間事件被害者弁護士が異例の批判

日弁連の会長声明を批判する米田龍玄弁護士ら=6月27日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ(星直人撮影)
日弁連の会長声明を批判する米田龍玄弁護士ら=6月27日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ(星直人撮影)

神奈川県座間市のアパートで平成29年に男女9人を殺害し、強盗強制性交殺人などの罪が確定した男の死刑が執行された6月27日。東京・霞が関の司法記者クラブで、ある記者会見が開かれた。登壇したのは、事件で遺族の代理人を務めた弁護士ら。そこで飛び出したのは、日本弁護士連合会(日弁連)が同日出した「死刑反対」を訴える会長声明に対する、異例の批判だった。

「提言向き合わず」

「遺族の気持ちを考えて苦しんで出しているならまだよいが、そうは受け取れない」

座間事件で白石隆浩元死刑囚=執行当時(34)=の死刑執行を受けて、会見に臨んだ遺族の代理人を務めた柴田崇弁護士は、この日公表された日弁連の会長声明について、こう批判した。

《死刑執行に対し強く抗議し、直ちに全ての死刑執行を停止し、世界的な廃止の流れに沿った死刑制度廃止の実現を求める会長声明》

こう題された声明では、白石元死刑囚への死刑執行を引き合いに、死刑は「近代人権思想の中で残された、もっとも苛烈な刑罰」と断定。さらに、日弁連の呼びかけで発足した「日本の死刑制度について考える懇話会」の提言に向き合わずに刑を執行したとして、「大変遺憾」と不満をあらわにした。

「遺族に追い打ち」

日弁連や各地の弁護士会が死刑執行に合わせてこうした声明を出すのは、もはや定番となっている。

過去には、オウム真理教による一連の事件で死刑が確定した元教祖の麻原彰晃元死刑囚(本名・松本智津夫)=執行当時(63)=らに刑が執行された際などにも声明が出されてきた。

会見に登壇したある遺族の元代理人弁護士は、このタイミングで声明が出ることで、「被害者は(弁護士全体が)白石元死刑囚の刑執行そのものに抗議している、と受け止めてしまう」と指摘。

かけがえのない家族を失い、悲しみの中で生きる遺族に追い打ちをかけてしまう恐れがあるとして「(個別の刑執行に)異議があるような言い方はしないでほしい」と訴えた。

「どんなことをやったかを半分無視」

日弁連や各地の弁護士会は、有志が集まる団体ではなく、弁護士法に基づき弁護士の加入が義務付けられているものだ。脱退すれば、弁護士業務はできない。

もちろん、日弁連が掲げる「死刑廃止」という主張に反対する弁護士もおり、「全弁護士が反対している」かのように声明が出ることについて、不満もくすぶる。

会見に出席した「新全国犯罪被害者の会(新あすの会)」の事務局長を務める米田龍玄弁護士は、声明は弁護士の総意ではないとし「日弁連は加害者とか被告人の人権をいうが、被害者の保護や支援をするのは人権活動ではないのか」と、率直な疑問を口にする。

同会は、自身も妻を殺害された遺族で、犯罪被害者の権利確立に尽力した岡村勲弁護士(2月に死去)が設立に携わった「全国犯罪被害者の会(あすの会)」の後継団体だ。

米田氏は「遺族は、自分の愛する家族がこの世にいないのに、なんで殺した奴が生きているんだと思ってしまう」と説明。「死刑が確定したら執行してもらいたいという思いをずっと抱えている」と明かす。

その上で、声明について「どんなことをやった上で死刑になっているのかを半分無視したような格好で、廃止ばかり訴えるのはおかしい」と語気を強めた。(星直人)

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