図書館から、ありがとうをこめて—勤労奨学生・小河原直樹さんのラストブックフェア
人文学部日本文化学科4年 小河原直樹さん
明星大学図書館で、7月18日(金)まで開催されている「勤労奨学生によるブックフェア」。第6回となる今回は、「知ってた?世界で活躍する明星大学の教員」がテーマです。
この企画の立案やPR文の制作を担当したのは、人文学部日本文化学科4年の小河原直樹さん。図書館の勤労奨学生として3年間の経験を活かし、教員にスポットを当てた新しい切り口のブックフェアを形にしました。
「数多の大学が居を構える学園都市・多摩。そこに燦然と輝く明星大学の教員たちには、知られざる過去があったー」
これは、ポスターに掲載された小河原さんが考案したPR文だ。
「大学とは、学生だけでなく教職員がいてこそ成り立つ場所だと思います」。そう語る小河原さんは、教員の著書に焦点を当てることを提案した。PR文の制作では言葉選びに苦戦しながらも、「明星」という言葉から着想を得て、企画の軸となる表現をひねり出した。
「勤労奨学生によるブックフェア」は、図書館で働く勤労奨学生たちが企画から選書、運営までを担う学生主体のプロジェクトである。
勤労奨学生とは、明星大学独自の給付型奨学金制度のひとつ。この制度は、明星大学の教育理念である「体験教育」や「実践躬行」を具現化するものであり、図書館やアドミッションセンターなど学内の部署における実務を通じて、社会性や責任感、コミュニケーション力を養うことを目的としている。
今回のフェアで小河原さんが選書の際に意識したのは、学生にも業績が伝わりやすい教員を選ぶこと。
たとえば、経営学部の客員教授・有賀明美先生の著書(『ウェディングストーリー 大切な人に会いたくなる結婚式の物語』 ダイヤモンド社、2012年)は、ハウスウエディングの先駆者として業界に新しい価値を築き、芸能人やスポーツ選手など様々な結婚式をプロデュースした実績があることから、「学生にも実社会とのつながりを感じられる内容が親しみやすい」と感じたので選書した。
小河原さんが特に推薦したいのは、評論活動では「村上湛」の名で知られる、日本文化学科の田村良平先生の著書『すぐわかる能の見どころ 物語と鑑賞139曲』(東京美術、2007年)である。講義の臨場感がそのまま詰まったような一冊であり、能に詳しくない人でも楽しめる内容とのことだ。
また、昨年度定年退職された、同じく日本文化学科の前田雅之先生の『なぜ古典を勉強するのか: 近代を古典で読み解くために』(文学通信、2018年)も、「日本人を語る上で欠かせない名著」として強く推していた。
図書館で勤労奨学生として過ごした3年間は、小河原さんにとって大きな成長の時間でもあった。
「昔は内向的で、グループ活動では影が薄かったんです」。そんな彼が、今では授業や就職活動のグループディスカッションで音頭を取るまでになった。オープンキャンパスで訪れた高校生に説明をする機会も増え、「自分は明星大学を代表する存在だ」という自信が、勤労奨学生としての図書館での経験を通じて育まれたという。その姿に憧れて図書館勤労生を志した後輩もいるとのことで、「感無量です」と語っていた。
この図書館での経験は、就職活動でも大きな力となった。面接では「どんな役割を担ったか」「どんな工夫をしたか」といった質問に対し、ブックフェアの企画立案やPR文の制作、教員との連携、後輩への指導など、実践的なエピソードを交えて具体的に語ることができ、志望していた業界の企業から内定をもらう事もできた。
所属する日本文化学科では、古典からサブカルチャーまで幅広く学び、能楽やミュージカルの鑑賞、地域文化研究など、実践的な学びも豊富である。卒業論文では、昭和歌謡の村下孝蔵氏をテーマに執筆予定とのこと。音楽と言葉への深い愛が伝わってくる。
趣味は競技クイズ。サークルでは「食べ物クイズの権化」として知られ、いつか“食べ物限定企画”を開くのが夢である。最初は他大学のクイズサークルに参加していたが、明星大学にも念願のクイズサークルを設立することができた。
休日はクイズ問題を作成したり、昭和の映画を鑑賞したりして過ごすことが多く、カラオケでは鶴田浩二氏の『傷だらけの人生』など、昭和の名曲を好んで歌うことが多いそうだ。セリフ入りの楽曲を披露すると家族や友人からも好評とのことである。渋めの選曲ながら、どこか温かみのある時間が流
れているように感じられる。
『図書館の勤労奨学生』としては10月末まで。勤労奨学生は年間での実務体験時間が決まっており、今のペースだと一足先に8月の終わり頃にはその時間に達する見込み。
「本当はまだまだ勤労奨学生でいたいけど、後輩たちに思いを託して図書館を去ります」。少し寂しそうに語った。
3年間の思い出が詰まった図書館での時間。「正直にいうと、明星大学は第一志望ではなかったけども、今は本当に明星大学に入って良かったと思っているし、明星大学でなければこれだけの経験はできなかった。感謝しかない」としみじみ語る小河原さんの言葉には、感謝と誇りがにじんでいた。
実際にインタビューをして感じたのは、小河原さんの持つユニークさと、その奥にある誠実さである。平成生まれでありながら、昭和のカルチャーに強い関心を持ち、能や古典、昭和歌謡といった世界に自然と惹かれている点が非常に印象的であった。
話していると、知識の豊かさだけでなく、場の空気を和ませるユーモアや、仲間を大切にする温かさも感じられた。
一人ひとりの学生には、それぞれの背景や興味、歩んできた道がある。小河原さんのように、自分の「好き」を大切にしながら、大学生活を丁寧に積み重ねている姿に触れると、学生たちの個性の面白さを改めて実感する。
次回は、本企画でポスター制作を担当したデザイン学部3年の青山周永さんの、”ものがたり”に続きます。
