日本を滅ぼす研究腐敗――不正が不正でなくなるとき(34) 5章 絶対にあきらめない精神 7
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中京大学と武蔵大学のずさんな研究不正の調査により告発人として精神的苦痛を受けた、という大学訴訟の第5回弁論期日がちかづいた。被告武蔵学園から文書提出命令の対象文書である議事録が開示されるはずが、提出期限を過ぎても届かなかった。「三宅の記述にある債権回収に関するデータは日本学生支援機構が公表したデータを引用したものだ」との趣旨の発言を大内氏がしたと被告武蔵学園は主張する。本当にそんな発言が存在するのか疑わしかった。もし事実なら証拠を出せるはずだ。
いまかいまかと待っていると、期日直前になってレターパックが届いた。薄い。はやる気持ちで開けた。意見書が1枚と書証が1点入っている。意見書には「任意提出した」とある。丙11号証と題された書類はほぼ全部黒塗りで一部だけ読める。そこに趣旨としてこうあった。
「三宅の記述を参考にして質問主意書をつくった。その質問主意書を参考に記述した――」
拍子抜けした。大内教授がこれまで繰り返し言っていた内容とかわらない。「三宅の記述にある回収データは日本学生支援機構の公表データの引用である」と大内氏が発言したことは、ここからはまったく読み取れない。
(なぜこんなものを出してきたのだろう)
奇妙に思って黒塗りだらけの文書をながめた。ふと気がついた。すでに証拠提出している弁明書と体裁がよく似ている。ためしに重ねてみた。ぴったり一致する。私はあきれた。何のことはない、既出の証拠を一部抜き出して黒塗り処理を施し、あたかも新しく提出した書類であるかのようように見せていたのだ。
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