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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第ニ十三章 異世界捕食大戦
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23-1 斥候は雑魚

 気絶していた俺とリリームを救助に駆けつけた神格戦艦のクルー達が発見した。土の中に上半身埋めた面白い格好だったようで、大根を引っこ抜くように救助されたらしい。

 最後までヒヤヒヤしたものの、無事、竜頭魔王は頭部の甲殻を残して滅び去った。

 ドラゴンの墓場だった瘴気漂う山々も熱核兵器によって削り取られてクレーターしか残っていない。純粋水爆の爆発だったため放射線量は少ない。ドラゴンの瘴気が消え去った分綺麗になったと言えるが、立ち入りは禁止するべきだろう。


「魔王連合は全滅したな」


 異世界へと流されてたった半年の出来事であったが、随分と忙しい毎日であった。

 魔王連合と戦うと決めて、記憶を失って、一時は魔王化までして、本当に忙しい毎日だった。斜め上を見上げつつ回想する戦いの日々。



 吸血魔王。魔王連合が本格的に活動を開始して最初に討伐した魔王だった。今思えば、最初に倒せるような楽な相手ではなかった。


 寄生魔王。人間に寄生する恐るべきスキルを有する魔王だった。許せない相手だったので黒い海の底に今でも幽閉されている。


 合唱魔王。百の首が再生し続ける神話通りの化物だった。そういえば、こいつは皐月が倒したのだった。


 淫魔王。魔王ではあったが、決して悪い女性ではなかった。女としての性質のままに生きていたなら厄災を呼ぶ魔王となっただろうが、彼女は母として死んでいった。


 山羊魔王。現在でも完全な力を有する真性悪魔だった。人類では行使できない様々な魔法を放ち、古代の戦いを再現可能な悪魔を滅ぼすのは不可能に思えたが、紙屋優太郎の相手ではなかった。


 怨嗟魔王。微少な生物が正体でありながら、その生存戦略は人類にとって真性悪魔以上に悪辣あくらつ。まるで、人類を叫ばせるためだけに進化したかのごとき生物だった。


 墓石魔王。異世界の存続のために動く機械仕掛けの魔王だった。人類が生きた碑石として今も残っている。


 翼竜魔王。面識はあまりない。天竜が世話になったそうなので滅びて損な相手ではない。


 迷宮魔王。魔王連合の盟主だった魔王だ。生き残る事に固執していた魔王であったが、生きる理由を見失った魔王であった。


 竜頭魔王。今しがた討伐し終えた魔王。究極生物、バハムートの討伐完了により異世界からすべての脅威が取り除かれた。



「異世界は救われた……そのはずだ」


 全十柱の魔王が滅びた事により、救世主職としての職務は完遂された。もう戦うべき相手は残っていない。

 異世界のどこを探しても脅威は存在しない。

 だが……背筋の悪寒は強まるばかりである。その証拠として、網膜に映り込むカウントダウンは続いている。


==========

“●カウントダウン:残り五月 → 残り一週間”

==========


 カウントダウンは、加速している。


「天竜! 艦首を教国へと変更してくれ!」

「ナキナに戻るはずではなかったのか?」

「これから起きる事を知っている人物に問いただす。そっちも話があるのだろう、初代救世主!」


 これまで先送りにし続けていた案件を問わねばならない時がきた。

 かつて、原型一班オリジナル・ワンの面々が狂気に陥らなければならなかった絶望の正体を、今こそ開示してもらう。そのために、初代救世主の下へと直接乗り込む。



“そうだね。僕の知っている事をすべて教えよう。急がなくても大丈夫、一日ぐらいは余裕があるはずさ”



 神託により頭に直接響く初代救世主の声。声が届くのならここで言えば良いものを、随分と勿体もったいを付けてくれる。


“大事な事だから、直接話したいのさ”


 教国は、神格戦艦で飛べば半日で到着する距離だ。





 オリビア地方の某所。

 迷宮魔王が討伐されたその場所は事後処理のために封鎖が行われて、一定の兵力が配置されている。迷宮魔王が体内で飼っていた人間族の救出、体内にあるという財宝の回収のために当初はそこそこ忙しかったものの、今はそれほどでもない。

 兵士達の撤収は順次行われる予定となっているそうである。が、人類国家の代表、ナキナ王が不確かな情報ながら警備の必要を有すると勧告したため、二千人近い兵士達は暇を持て余しながらも巡回を行っていた。

 迷宮の瓦礫が堆積するいびつな土地。

 時折、小さなブロック片が山を転げ落ちたとしても、ネズミか何かが通過した振動によるものだ。大きな生物でもせいぜいがゴブリンぐらいなものだろう。魔王連合との戦いを経験している兵士達とって気になる相手ではない。


「こうしている間にも、竜頭魔王の討伐作戦は進んでいるんだろう? 故郷に帰りたいぜ」

「そんな故郷残っていれば良いけどよ」

「酒と食い物さえあればそこが我が故郷だ」


 巡回する二人の兵士達は小石が転がっていく音が聞こえて振り向くが、やはりそこには瓦礫しか存在しない。すぐに忘れ去った。


「これだけ大きな魔族侵攻を生き残ったんだ。俺達の『運』もなかなかだ」

「たった5しかない『運』のどこがだよ」

「世の中、本人のレベルよりも『運』の高い奴がいるらしい。まったくうらやましいぜ。そもそも、どうやったら上がるんだ。腹筋して上がる『力』や『守』と違ってさっぱり分からねぇ」

「聞いた話、人生を楽しんでいる奴ほど『運』が高くなるらしい。俺のじいさんも『運』だけは高かった」


 瓦礫から過ぎ去っていく兵士達。彼等は、瓦礫の中から観察するまなこに気付かなかった『運』により命を救われた。

 穴を通ったばかりで慎重になっているソレとはいえ、近付き刺激すれば攻撃性をあらわにした事だろう。数時間遅く巡回していたならば『環境適応』の済んだ体でソレは動き始めていただろう。

 兵士達は本当に『運』が良かったのである。


「自分勝手な盗賊職の馬鹿共の方が『運』が高いってのかよ」

「それがじいさんが言うには、人間の本質たる善性に沿った楽しみ方をしていないと『運』は上がらないらしいんだ。ちなみに、じいさんは馬鹿真面目で有名な人だったんだが」

「何だそりゃ。デマだろ、デマ」


 瓦礫の合間に隠れたソレ。

 頭のほとんどを占める巨大な眼球はサイクロプスのそれを連想させるが、ソレの眼は昆虫と同じ複眼となっている。眼に多くの機能を取られているため、サイクロプスと同じであまり頭の良い生物ではなさそうだ。

 体長は一メートル。大きくても一メートル三十を超える事はない。魔族と戦い慣れた兵士ならば大きさに恐れえて逃げ出す程ではない。何よりソレは『雑魚』スキルを有するぐらいに脆弱なのである。兵士達でも剣を向けるところまでは可能だ。


「そろそろ交代だ。帰るぞ」

「そうだな。この後は非番だ。せっかくだから街までいこうぜ」

「そうするか!」


 眼と比べて貧相で短い脚で瓦礫に潜り、ソレは観察を続ける。

 そしてソレは気付くだろう。異世界ここに凶暴な捕食者はいない。もういない。豊富な食料、豊富な水、豊富な大気の三拍子そろった新天地を、思うがまま堪能できるのだ。


==========

 ●カンブロパキコーペ系魔王、E757703亜種

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“●レベル:31”


“ステータス詳細

 ●力:551 守:385 速:71

 ●魔:31/31

 ●運:0”


“スキル詳細

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』

 ●カンブロパキコーペ固有スキル『雑魚』

 ●カンブロパキコーペ固有スキル『環境適応』

 ●魔王固有スキル『領土宣言』

 ●実績達成ボーナススキル『異世界渡りの禁術』”

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“『雑魚』、生物として捕食される側としての地位を獲得したスキル。


 他生物より見下されるぐらいに脆弱な生物に与えられるスキル。

 対戦相手のレベルが本スキル所持者よりも高い場合、全パラメーターが二割減される”

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表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

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 第二作 誰も俺を助けてくれない

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