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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第ニ十二章 バハムート殲滅
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22-4 特に理由のない危機がナキナを襲う

「……磯臭いわね。ブラシで擦る前に焼いておく?」

「たわけがっ、小娘!」


 地球で決戦兵器を用意した後、一泊もしないで異世界のナキナまで戻ってきた。

 天竜が憑依している神格戦艦ヤマトは分裂していた艦体を結合させて浮上。ガレー船のオールごとく艦の側面から複数の翼を生やして飛行を開始し、そのまま空を移動してきた訳である。

 神霊現象であるため肉眼でしか姿が見えない。だから、高度を取って移動すれば大丈夫だと思い東シナ海から天竜川を経由して戻ってきたのだが、優太郎から「ニュースになっているぞ」と連絡があった。時間短縮のための尊い犠牲だ。

 まあ、地球で騒ぎになって、異世界でも騒ぎになってしまったのだが。戦艦を知らないナキナの住民達は新しい魔王の襲来だと勘違いされて警戒されまくった。ナキナには皐月達四人を残していたのだが、戦艦に乗って戻ると伝えていなかったのが問題だったのだろう。


貴方ア・ナ・タは事前通告というもの知らないのかしら?」

「まーまー、カルテ。これも竜頭魔王と戦うためだと思って」


 ナキナに戻って早々、喪服のハーフエルフに詰め寄られるのは仕方がない。


「……まーた知らないエルフです」

「御影は記憶を失っている間に現地妻を作り過ぎだよね」


 それはそうと神格戦艦についてだが、動いているとはいえ多少の整備は必要だった。

 ナキナ人を大量動員して船体表面に癒着している汚れをブラシで擦り落とし、森の種族を動員して腐り落ちていた甲板に板を貼り付けていく。


「兄さん、大変。○動砲が付いていない?」

「○動エンジンで動いている訳じゃないぞ、これ」

「でも中身が妙に新しい? 煙突の内側にVLSが見えるけど?」

「あー、それは海中から浮上した時にちょっとした事故で沈没しようとしていた船があったからもらっておいた」


 目聡めざといアジサイは気付いたようだが、この神格戦艦は外と内で構造が二つに分かれている。正確に言うと、長く海中にいて喪失してしまった構造の多くを某国の最新鋭艦で補ったキメラ戦艦なのである。

 そんなフザけた合体が一地方の土地神にどうして可能だったのかという問いに対しては――、


「知らん! できるからできる!」


 ――と実に神様らしいお言葉を頂戴していた。

 神霊現象に理屈を考えても仕方がないのだが、屁理屈を並べれば天竜の神格が高まっているのではないかと考えられる。生前は一つの村でのみ祭られていた神様が、ナキナ周辺でそこそこ知られる存在となっており人々から向けられる信仰――あるいは畏怖――が高まって、神格がランクアップしたのだろう。そうに違いない。


「モンスター食べてスキル吸収するようなドラゴンが前身なんだし、融合合体ぐらいできて当然よね」

「はっ、小娘の嘲笑など耳に入らんな」

「ヌタウナギでヌルヌルしている状態で威張られてもねぇ」

「うげぇほォ?! は、早く取れぇっ!」


 俺は神様であろうとこうして武器として戦線投入してしまう罰当たりな人間なので、問題解決実戦に耐えうるのであればヌタウナギでヌメヌメしていても神様とあがめてみせよう。

 外装をある程度整えたら続いて出航準備だ。

 ナキナから前線のオリビア要塞へと向かい、竜頭魔王に対して決戦を挑む。これ以上異世界を食い荒らさせはしない。



“あー、不味いねー”



 異世界に戻ってきたのだから『神託オラクル』電波の受信範囲に戻ってきている。


「初代さん。何が不味いんです?」

“竜頭魔王がそっちに向かっている。次の目標はナキナの王都みたいだ”


 他人の未来を予知できる初代救世主の警告に間違いはない。ナキナが狙われるのも過去何度もあった事なので今更驚く程ではない。

 ただ、ナキナが襲われるにしてももっと余裕があると思っていた。人類圏の端の端にある小国をあえて襲わなくとも、人類圏中央に人口密集地域はまだ多く残っているはずだからだ。残酷な言い方になるが、おとりとなる都市はまだあると考えていた。

 異世界の連絡手段は限定的だ。連絡が遅れているのか連絡が途絶えているのか判断するまで日数が必要となる。想定以上に被害が加速していても、分かるのは数日後だ。


「いつ!?」

“明日の朝食かな。半日以内”

「ナキナ王都から民間人の退避を開始! オリビア要塞に至急連絡!」


 戦闘装備の搬入はオリビア要塞で行うつもりであったが、向こう側から運んできてもらうしかなさそうだ。




「ぐふぇ。オルドボ商会の高速便のご利用。ありがどうございまずでぇ」


 人間族にしては大柄な怪しい鉄仮面に人員輸送の代金を支払う。迷宮魔王の崩壊で多くの地下空間が崩落したはずであるが、まだ使用可能な隠し販路が残っていたらしい。

 頼りたくはなかったが速度重視でオリビア要塞に残っていたメンバーを運んでもらった。


「僕、また居残りになるのかと思っちゃった」

「森以外での戦いならばお任せください!」


 アイサとリリームの姉妹がまず到着する。


「この巨大な船が飛ぶのか……」

「それで、コイツに乗って俺に何をさせるつもりだ?」


 黒曜とゼナも戦闘要員である。今回は居残り組はいない。次のない作戦に失敗は許されないためフルメンバーにて戦いに挑む。


「自分は商人職、であります! 戦いは職務規定外、であります」

「最近、この私がいなくても皆様直接『神託』されているので寂しいような」


 ヘンゼルとリセリも神格戦艦の搭乗員だ。船は天竜が動かすので人員は多く必要ではなかったが、戦闘は基本的に俺達の仕事である。装備の扱いに慣れている者ならば後方要員であっても容赦なくスタメンとして採用する。



「独断ですまないが配置は決めさせてもらった。応用の利く魔法使い組は艦内で均等に配置。第一砲塔はアイサとリリーム。第二砲塔は黒曜とゼナ。第三砲塔はヘンゼルとリセリ。俺は艦橋より全体を見渡す。以上だ」



 三つある主砲が主な攻撃手段である。

 竜頭魔王を倒す本命は『暗器』で格納している融合魔王の遺骸であるが、魔界まで竜頭魔王をエスコートする主砲にこそ作戦の命運がかかっている。

 45口径の三連砲の直撃であっても竜頭魔王を殺傷するにはいたらない。


「夜が明けるまでに各自装備になれておくように。ただし、主砲を放つのは最後の最後だけ。甲板作業員が退避するまで絶対に撃っては駄目だ」

「作業員がいる状態で撃ったらどうなる?」


 ゼナの質問は良い質問だ。


「衝撃波で作業員が消し飛ぶ。チリ一つ残らない」


 最大射程四万メートルで全長二メートルの徹甲弾を撃ち出す主砲でさえ、竜頭魔王の頬を叩くための道具にしかならない。

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 ◆祝 コミカライズ化◆ 
表紙絵
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 助けたいシリーズ一覧

 第一作 魔法少女を助けたい

 第二作 誰も俺を助けてくれない

 第三作 黄昏の私はもう救われない  (絶賛、連載中!!)


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