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誰も俺を助けてくれない  作者: クンスト
第ニ十二章 バハムート殲滅
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22-1 孤独(ひま)を持て余した融合魔王


「迷宮魔王の討伐を成したのだ。称えられるべき功績であるのは間違いない。……それで、『記憶武装』の回収はどうした?」


 一仕事終えて、崩壊する迷宮からも無事脱出したというのに、俺はなにゆえ正座となり、全身タイツの女忍者に説教を受けているのだろうか。

 いや、分かっている。大事な任務を完全に失念していたからである。


「……はぁ。抱える程度の数でしかないが忍者衆の別動隊が回収している。それを使え」

「さすがはナキナ忍者衆っ! 助かった!! イバラこそが救世主だ」

「ええいッ、おがむな。これもすべてナキナのためだ」


 次の戦いで必要となる必須アイテムの回収を忘れていたのだから仕方がない。迷宮で俺達に同行していたイバラ達がきっちりと回収してくれていたお陰で、どうにか皮一枚で希望が繋がった。

 迷宮魔王を倒したばかりであるが、既に次の戦いが決まっている。

 世界の空を飛び回る究極生物、竜頭魔王との生存をかけた戦いが俺達を待っている。



「――たった百粒では足りない、であります」

「えっ?」

「要求する武器のイメージが複雑過ぎる、であります」



 元々、被害甚大であった竜頭魔王による食害であるが、活動活発化して一か月、いよいよ無視できない規模になってきていた。


「竜頭魔王の前では最前線も後背地もありはしない。目に付く人口密集地帯が襲われるだけだ」


 主要国家の都市が次々と溝と化し、被害を受けていない国は元々悲惨な状況にあったナキナぐらいなものである。

 人類全体の一割しか被害が出ていないと数字上では言い張れるかもしれないが、民間人も含めた一割の被害は想像を絶する。

 しかも被害が都市部に集中しているのも非常にマズい。都市というの他の都を繋ぐ中継点でもあるため、物流が停止してしまった。一部地方では食料輸送が不能となって飢饉が起きているらしい。


「人類国家の代表として要請したい。御影よ、一日も早く竜頭魔王と討伐してくれ」


 アニッシュに頭を下げられてしまったが、残念ながら準備がまったく整っていなかった。



「武器がまだなぁ……。被害を気にしなくてもいい場所の選定も終わっていない」



 何せ使用する武器が人類の負の遺産である。向こう数十万年、数百から数千キロの範囲が立ち入りできなくなるのだ。事を起こす前に十分以上に悩む必要がある。


「場所ならばある程度目星を付けておるぞ」


 ……と思っていた既に候補地が絞られていたらしい。

 人類圏から遠く、今後も利用する目途も機会もない土地を獣の種族が発見していた。


「御影の従僕からの情報じゃ。魔界に住む我等もあんな奥地まで進出した例はない」


 ジャルネいわく魔界の一角に瘴気が渦巻く呪いの土地があるようだ。山に囲まれた険しい地域で近づく事さえ困難。人間族以上のタフネスを持つ獣の種族でさえ遠くからそれらしい場所があると眺めるだけで接近を諦めたぐらいの辺境である。


「天竜、どんな場所なんだ?」

「あそこはただの廃棄処理場でしかない。死んだドラゴン族の骨が層を成し、腐肉から滴る汁で大地が汚染されておる」


 本来は翼竜魔王の一派が使用していた墓らしい。サバンナの一角には象の墓場があると噂されるが、そのドラゴン版が魔界の奥地に存在する。


「いいのか? 墓なんだろ?」

「はっ、ドラゴンに死者をとむらう風習はないわ。ただ、他の種族に死骸を利用されるのもしゃくゆえ、一カ所に集めて野ざらしにしているだけに過ぎん」


 ドラゴンゾンビが自然発生する魔境と化してしまっているため、核で汚染されてもそんなに変わらないと天竜は語った。

 天竜本人が許可するのであれば戦場として使わせてもらう。


「そうなると、やはり武器がなぁ……」


 『記憶武装』で熱核兵器を再現するつもりだったが、地球の最凶兵器は簡単に作り出せない。精密機械の塊であるため部品が多く、回収できた『記憶武装』では全然足りなかったのである。

 迷宮魔王の亡骸を再探索しているものの、迷宮が完全に埋まってしまっているため期待はできない。


「禁忌の土地には実物があるのであろう? 世界の危機だ。すまないが盗ってきてはくれぬか?」

「核軍縮しているとはいえ、地球には地表を数千回焼き払うだけの保有量があるらしいが。……いやいや、いくらアニッシュの頼みでもこればかりは。最悪、俺達の世界が危機にひんする」


 熱核兵器は人類を死滅させる危険な兵器である。竜頭魔王により異世界が滅びようとしているからといって利用してはならない。そのように人類の理性に対して、神様がうったえているのが現状なのかもしれない。


「我は土地神だが、そんな事言った覚えはないぞ?」

“僕も僕もー”

「ええいっ。神様共め、うるさい」


 熱核兵器以外の方法で浮遊大陸染みた竜頭魔王に打撃を加えられるとは思えない。が、用意できない武器をねだっても仕方がない。竜頭魔王退治は改めて作戦から検討し直すべ――、



『――もしもし、凶鳥? スマフォって僕達には使い辛いね』



 ――スマートフォンから着信音が鳴ったので、アニッシュ達に失礼と言って電話に出る。

 仮にも人類の代表と成ってしまったアニッシュを差し置いて電話に出るなど失礼極まりないかもしれない。ただ、異世界でスマートフォンを使用する人物は全員俺の関係者であり、重要人物だ。世間話で使用されるケースが八割であるものの、まあ、温厚なアニッシュだから待ってくれるはずだ。


『耳が引っかかるけど、どうにかならないかな?』

「アイサか。迷宮魔王戦に連れて行けなくてすまなかった。埋め合わせじゃないけど、夜には時間が取れるから夕食は一緒に食べるか」

『ほんと!? 僕と凶鳥の二人っきりだねっ!』

「あ、あーいや、居残り組だった黒曜やゼナも一緒なんだけどね」


 電話の内容を推察したアニッシュに肩をつつかれる。世界の危機を後回しにして女とイチャイチャするのは流石に不味かったか。温厚なはずのアニッシュが青筋立てているから早めに要件を聞こう。


「それで、アイサ。何か急用だったのか?」


 アイサを含めた居残り組には拠点にしているオリビア要塞で待機してもらっていたが、アイサは特殊な眼を持つため彼女にしか頼めない仕事をいくつか頼んでおいた。



『融合魔王の『鑑定モノクル』結果だけど、純粋水爆って何かな??』



 仕事の一つは、魔界で回収した融合魔王の遺骸の『鑑定』である。


『融合魔王の種族は蠱毒こどくっていう器が正体だったよ。毒素を体内で濃縮するスキルを有していたみたい。ただ、融合魔王の場合は重水素? や、三重水素? を集めるのに特化していて、外の結晶体は毒を濃縮させるためのフィルターであり封印かな。でも、どうして体内を加熱圧縮する自滅魔法が付与されているのか僕には分からない。凶鳥なら分かるかな?』


==========

 ●融合魔王

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“●レベル:5089”


“ステータス詳細

 ●力:10 守:9 速:9

 ●魔:0/65535

 ●運:0”


“スキル詳細

 ●レベル1スキル『個人ステータス表示』

 ●蠱毒固有スキル『濃縮』

 ●蠱毒固有スキル『呪術』

 ●蠱毒固有スキル『医学』

 ●蠱毒固有スキル『猛毒』

 ●魔王固有スキル『領土宣言』

 ●実績達成ボーナススキル『歩行』

 ●実績達成ボーナススキル『自爆準備(純粋水爆)』”


“職業詳細

 ●蠱毒(Aランク)

 ●魔王(Dランク)”

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“『蠱毒』、非常に強力な呪術の一種。

 毒を有するカエルやヘビや虫を一つの壺に入れて封印し、共食いによって一種類になるまで競わせるバトルロワイアル。毒が濃縮される事により様々な効果を発揮する呪いへと昇華するが、基本的に毒により相手は死ぬ”


“≪追記≫

 融合魔王の場合は誤って壺の中に重水素と三重水素を混入させてしまったのが運の尽き。壺の中は異界となっており、半減期がやって来なかった事も原因。

 融合魔王を仕掛けた呪術師はとうの昔にこの世を去り、魔界のどこかに忘れ去れていた。が、最後まで残った水素の同位体がなかなか決着を付けないため、経年により壺が魔族化。更に五千年ほど時間をかけて待つ事に飽きて歩き出した頃に魔王化した。

 待ちぼうけした分、最終的には盛大に爆発してやろうと壺だった己に特殊な圧縮魔法をかけて『魔』を充填し続けている。いつかくる蟲毒の完成を待ち望む”

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