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スーパーロボット大戦30周年企画・ロボアニメレビュー8作目『無敵鋼人ダイターン3』(1978)

 「ザンボット3」を書いたので、次は是非「ボルテスV」をと思ったのですが、その前にまず「ダイターン3」を書きたくなったので、このまま連続で書きます。
さて、「ダイターン3」ですが、私のイメージとしてはやっぱりスパロボシリーズでの財力源として描かれることが多く、資金提供などを万丈が行うことが多いです。
そして外連味溢れる「世のため人のため!悪の野望を打ち砕くダイターン3!この日輪の輝きを恐れぬならかかってこい!」という見得切りも大きな特徴になっています。
そのおかげか、スパロボでは「マシンロボ クロノスの大逆襲」のロム兄さんと並んで絶対的正義の象徴のように置かれることが多く、かなり美化された存在です。

ただし、本作をご覧になった方はわかると思いますが、万丈のそれは全て虚飾でしかなく、スパロボがいかに万丈の表のかっこよさだけを綺麗に表現しているかがわかるでしょう。
また、作品の設定や背骨にあるドラマ、テーマ性はとても重たく黒く、下手すれば前作「ザンボット3」以上に怖い作品ということができるかもしれません。
モチーフとしては「007」シリーズを中心とした様々な痛快娯楽活劇を盛り込みつつ、それらをラストで全てひっくり返して見せるという構造になっているのです。
アプローチは違いますが、実はこの「ダイターン3」もまた「ザンボット3」とは違う形でのスーパーロボットアニメ神話をひっくり返す形になっています。

そのため、本作をスパロボでしか知らなかった私は本作を見た時、その背景にあるどす黒いものに気づいて「こんな作品だったのか」と愕然としたものです。
どうしても伝説の傑作「ザンボット3」やもはや言うまでもないロボアニメ史上最大のエポックと呼ばれる「ガンダム」に比べて本作はやや地味な位置づけになっています。
確かにアニメ史に大きく名を残した作品ではないかもしれませんが、この作品がなければ70年代ロボアニメをきちんとした形で完結させることはできなかったでしょう。
本稿では前作との比較も兼ねつつ、70年代ロボアニメ史において本作がどのような役割を担っていたのかを私なりに分析してみます。

(1)個人事業主の集まり

本作を見た時の第一印象は「非常にドライな作品だなあ」であり、それはOPの主題歌にある「涙はない 涙はない 明日に微笑みあるだけ」という歌詞からも伺えます。
前作「ザンボット3」や次作「ガンダム」は根っこはハードでありながらも割とウェットな人情話であるのに対し、本作はハードな設定を抱えつつも基本的にドライなのです。
万丈たちはあくまでもビジネスライクな「仲間」ですが、いわゆる「心を1つに団結」というような美しい戦隊シリーズの如きチームワークなどでは決してありません。
あくまでもそれぞれがそれぞれに独立した個人事業主の集まりであり、誰一人として万丈の求心力に依存していないという関係性が最後まで貫かれています。

その証拠に万丈はレイカとビューティーという2人の女を侍らせ、さらにはトッポやギャリソンまでいながら、彼らに対して特別見返りを求めません。
万丈が仲間たちを助ける時も、またその逆にレイカたちが万丈を助ける時もあくまでもそれは各自の個人的判断に基づくものであり、義務と考えているわけではないのです。
そういう意味では前作「ザンボット3」の勝平たちがそうであるように、万丈たちもまた公的動機で動いているように見せかけておいて、その実完全な私的動機で動いています
1つ面白いのは本作では司令官が不在であるということであり、万丈がその司令官を兼任しているのですが、いわゆる「007」でいうMのような存在がいません。

つまり本作の正義の味方側がやっていることはあくまでも「全共闘」であり、ダイターンチームは「組織」ではなく「個人事業主の集まり」でしかないのです。
戦隊シリーズだと、これを最初に実現したのが「ゴーグルV」であり、以後「フラッシュマン」「ライブマン」「ファイブマン」「タイムレンジャー」などで実現しています。
これの何が重要なのかというと、この万丈たちが目指した戦いの形は学生運動が目指した「全共闘」そのものであり、本作は万丈をお金持ちの資産家にすることで説得力を持たせているのです。
だから戦いの責任は全て自分たちで負うしかなく、誰もそれを保証してくれるものなどいない、そうなると一々かっこ悪く無様なところを見せることはできません。

万丈にとってあくまでもレイカやビューティたちは「生死を共にする仲間」以上の意味はなく、罷り間違っても「守ってあげなければ」と思うことはないのです。
だから、レイカたちを人質に取られても万丈には全く効かないのですが、それはレイカたちが人質にされた程度で恐るタマではないといえるからでしょう。
また、万丈にはもう1つの隠された黒い事情があるのですが、そういうこともあって万丈は誰にも心を開いていないし、それは他の仲間たちも同じです。
本作にはいわゆるウェットな関係性ではなく、涙はありませんが、かといって愛や情があるというわけでもない、最後までドライな関係性を維持して終わりました。

(2)「鋼人」に隠されたダブルミーニング

(1)で書いた本作のヒーロー側の構造が読めてくると、本作が無敵「超人」ではなく「鋼人」であることの意味も読み解くことができます。
本作における「鋼人」には2つの意味があり、1つが「サイボーグ」、そしてもう1つが「鋼の体で心の弱さを覆い隠している人」という意味です。
その2つが最終的に意味するところは要するに敵組織のメガノイドであり、実は「無敵鋼人」とはダイターン3と同時にメガノイドにもかかっています。
最終話まで見ていくとわかりますが、本作の隠された背景設定にあるのは石ノ森先生の「仮面ライダー」が抱えている「敵も味方も同じ力を使っている」という設定です。

これが前作との大きな違いであり、前作「ザンボット3」のザンボットチームとガイゾックにはそのようなつながりはありませんでした。
しかし、本作ではダイターン3はメガノイドが実験用に作ったものであり、万丈はそれを盗んで反旗を翻したに過ぎず、要は「同族殺し」の話なのです。
これに関しては後述しますが、実は表向きの「世のため人のため」という明るさの裏にそのような愛憎渦巻く昼メロめいた設定が隠されています。
本作はそれをあくまでもサラッとドライに表現することで娯楽活劇に仕立てていますが、やろうと思えば本作はシリアスとして描くこともできるのです。

そして何より本作が「超人」ではなく「鋼人」と名付けている理由は「心が伴ってこその超人である」という逆説的な完璧超人ヒーローへの屈折した尊敬と憧れがあるからでしょう。
前作のザンボット3は「無敵でも超人でもない」、もっというと「超人に「させられてしまった」人たちの物語」であるのに対し、本作は自分たちで鋼人になることを選んでいます。
万丈と親友の話を見ればわかりますが、本作のメガノイドは元人間であり、機械の体を得ることで「超人」になったと思い込んでいる愚か者たちなのです。
これは石川漫画版「ゲッターロボG」に出てくる元学生運動のグループが百鬼帝国に魂を売って機械の体を得てしまったという設定と似たものと言えます。

しかし、そのように強大な力や技があったとしても、そこに「心」が伴っていなければ単なる暴力でしかなく、心も併せ持って初めて「一流」であり「超人」なのです。
万丈たちダイターンチームとメガノイドたちが同じ力を抱えていながらも差を分けたのはそこであり、正にヒーローもののテーゼである「力と心」の関係をしっかり描いています。
またこれは「マジンガーZ」が抱えている「神にも悪魔にもなれる」というテーゼを本作なりに読み替えたものといえ、換骨奪胎として成り立っているのではないでしょうか。
ここが見えてくると、本作は更にとんでもなく黒い背景が見えてくるのです。

(3)トッポという子役に設けられた意味

個人的に本作を語る上で最も印象的だったのがトッポという子役であり、彼はいわゆる兜シローや早乙女元気などのレギュラー子役と言ってもいいでしょう。
そんな彼がダイターン3をEDで人形として操っていたり、あるいは武器を持ってカチコミを決めようとするシーンが描かれたりしていることに大きな意味があります。
彼は単なる賑やかしや狂言回しというだけではなく、ある意味では子供という存在の残酷さ、そして本作の面白おかしさもまた象徴しているのです。
これは私が愛読している有名な富野ブロガー・グダちん氏もまた触れていることです。

ダイターン3を操っていた破嵐万丈自身も「メガノイドを殺す」という自動思考に囚われた機械仕掛けの超人に過ぎなかったのでは?という残虐なラストになる。

後述するラストにも繋がっているのですが、本作で描かれる娯楽活劇のスタイル、様式美は全て富野監督たちにとっては滑稽なブラックジョークの対象でしかありません。
それを表すようにEDではトッポがダイターン3を傀儡として操り、「おいらの呼ぶ声聞こえたら地の果てから地の果てから飛んでこい」などと偉そうにトッポは言うのです。
トッポ視点で描かれたあのEDの歌詞とアニメーションが意味するものは「ヒーローなど所詮は子供の我儘を都合よく実現した存在でしかない」ということでしょう。
要するに「マジンガーZ」をはじめとして多くのロボアニメ、またヒーローフィクションというものは子供が憧れる「かっこいい」を満たしたものなのです。

それを逆手に取って、本作の製作陣はダイターン3や万丈ですらも所詮はトッポにいいように操られた傀儡でしかないという捻りを効かせたのではないでしょうか。
この辺りは前作「ザンボット3」とは真逆の手法であり、前作が一見ロボアニメのスタンダードを悉く破壊するアンチロボアニメから寧ろ丁寧に「ロボアニメとは何か?」を再定義しました。
本作はその逆に一見正統派の王道ロボアニメの体裁を取っていながら、その実はアンチヒーローもののキャラクター造形と作劇という二重にも三重にもパンチが効いた構造になっています。
それを象徴するものとしてトッポを象徴的に機能させているところにあり、本作はキャラクターの使い方にまるで無駄がありません。

(4)ラストの「同族殺し」が意味するもの

さて、ここまで本作の構造を読み解いていくと、ラストの「同族殺し」の結末が意味するものが何だったのかも見えてきます。
本作は最終回まで見ていくと「破嵐万丈による一族への復讐」であるというどす黒い構造が見え、また破嵐万丈も「完璧超人の皮を被った復讐鬼」であることが白日の下に晒されるのです。
そう、完璧超人の仮面の下に人間を改造して銀河へ羽ばたこうとする身勝手な家族への復讐を万丈が果たす、壮大な親子喧嘩を銀河規模のスケールでやっていることが明らかになります。
前作がミクロな視点からマクロな視点へ話を広げているのに対して、本作はマクロな視点からミクロな視点へと逆にどんどんターゲットが絞られていくのです。

そしてそんな万丈がドン・ザウサー=破嵐創造の成れの果てとコロス=万丈の母の成れの果ての象徴である2人の原動力にあるものが「」であると理解します。
ここで第一話の最後でダイターン3の周りを女性たちがハートマークで囲っていたことが皮肉な伏線として機能し、無条件に「善」の象徴とされていた愛が寧ろ「悪」の象徴になるのです。
敵側がまさかお互いの愛故にお互いに執着し、そして愛故に人をサイボーグにするというとんでもないことをしてしまったことを知ります。
そしてそんな彼らを憎しみ敵対していた自分もまた、そんなメガノイドと本質的に同じ「復讐のみに執着し、他者との関わりが見えなくなっている存在」だと万丈は気付いたのでしょう。

「僕は……嫌だっ!」

まさに前作の勝平同様に万丈もまた自らが信じていた正義の拠り所を失ってしまい、それまで「復讐」を「世のため人のため」で理論武装していたにすぎない己の中のメガノイドに気づいたのです。
この「完璧超人を装った復讐鬼」というのは昭和ヒーローには多く見受けられたもので、次作「ガンダム」のシャアが正にそんな万丈の造形を受け継いでいるとも言えます。
また戦隊シリーズで言うならば、「ジェットマン」のレッドホーク/天堂竜や「ギンガマン」の黒騎士ブルブラックもそのような存在であるといえるのではないでしょうか。
そんな万丈が最後に己の心を破壊されてしまい、レイカたちの前から姿を消して世捨て人になってしまう、ある意味では「逆襲のシャア」でアムロがシャアに対して指摘した言葉通りです。

「世直しのことを知らないんだな、革命はいつもインテリが始めるが夢みたいな目標をもってやるからいつも過激なことしかやらない」「しかし、革命のあとでは気高い革命の心だって官僚主義と民衆に飲み込まれていくからインテリはそれを嫌って世間からも政治からも身を引いて世捨て人になる」

この言葉通り万丈も、そしてシャアも気高い夢のような目標を持って過激なことをし始めながらも、結局「強さ」だけに固執し己の「弱さ」と向き合おうとしませんでした
だからこそ力に飲み込まれてしまい、世捨て人になって厭世的になってしまったことがラストに示されており、おそらく万丈は自分の拠り所すら失ってしまったのでしょう。
そしてこの結末は同時に「マジンガーZ」の兜甲児から連綿と続いていた完璧超人の主人公像を破壊した瞬間でもあり、ここでもう完璧超人の主人公を視聴者は必要としなくなりました。
だからこそ次作「ガンダム」では全く完璧でも超人でもないアムロ・レイという内向的な新世代の主人公が台頭してくることになるのです。
その意味では万丈という主人公、そして本作の立ち位置そのものが「70年代ロボアニメの終焉」を意味したのではないでしょうか。

(5)「ダイターン3」の好きな回TOP3

それでは最後に「ダイターン3」の好きな回TOP5を選出いたします。

  • 第5位…17話「レイカ、その愛」

  • 第4位…30話「ルシアンの木馬」

  • 第3位…37話「華麗なるかな二流」

  • 第2位…20話「コロスは殺せない」

  • 第1位…最終話「万丈、暁に消ゆ」

まず5位はレイカとの関係を通して本作の仲間達のビジネスライクな関係性についてしっかり定義した回です。
次に4位はメガノイドが抱える悲惨な背景設定についてしっかり突っ込んだ回でした。
3位は万丈と親友のエピソードを通して本作の正義と悪がどこで別れているのかをしっかり定義しています。
2位は万丈の完璧超人の仮面の下に隠れているおぞましき復讐鬼としての冷酷な本性を浮き彫りにした名作回です。
そして堂々の1位は文句なしの最終回、この最終回が「70年代ロボットアニメの終焉」を司りました。

本作は単発回によって出来に差がありますが、その中でもこの5本は突出して優れている、というものに絞って選べばいいので楽ですね。

(6)まとめ

前作「無敵超人ザンボット3」とは真逆の手法を用いながら、本作もまたロボアニメの構造を逆手に取って70年代ロボアニメを破壊した作品だと言えます。
完璧超人と思わせながら復讐鬼の顔をラストで剥き出しにし、己の中のメガノイドと向き合った時に足場をなくしてしまい世捨て人になる万丈。
ある意味では一番悲惨な結末を迎えてしまった主人公かもしれません、戦い続けて目標を果たした先に何も残らなかったのですから。
だからこそラストでは仲間たちもまた離れていくのですが、これがなんとなくどんどん富野監督から離れていく優秀なサンライズスタッフの関係性にも見えます。
とにかく、やるべきことはしっかりやった上で次作「機動戦士ガンダム」への下地を完璧に整えたA(名作)といえるのではないでしょうか。

  • ストーリー:B(良作)100点満点中70点

  • キャラクター:S(傑作)100点満点中100点

  • ロボアクション:S(傑作)100点満点中95点

  • 作画:B(良作)100点満点中75点

  • 演出:A(名作)100点満点中85点

  • 音楽:S(傑作)100点満点中100点

  • 総合評価:A(名作)100点満点中88点

 評価基準=SS(殿堂入り)S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)X(判定不能)

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