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スーパー戦隊シリーズ第42作目『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018)

スーパー戦隊シリーズ第42作目『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』は名前からもわかるように「戦隊VSシリーズ」の極致として、「ゴーカイジャー」とは別の意味で豪華な作品です。
宇都宮Pと香村脚本ということは「ジュウオウジャー」のコンビだったのですが、正直な話最初の段階では全く期待していないどころか、むしろまた大ゴケするのではないかと危惧していました。
というのも初メインの「ジュウオウジャー」があまりにも物足りない出来だった上、前作「キュウレンジャー」が息巻いた挑戦を掲げながら目も当てられない醜態でしたからねえ…。
しかも東映自ら「偉大なるマンネリを打破する」みたいなことを言い出した時は「そんな自信満々の啖呵切って大丈夫なのか?」と正直思ったので、危険視はしていました。

結果から言えば、久々に戦隊シリーズで「驚き」を得られたと同時に香村氏の脚本を初めて「作家」として高く評価できるようになり、「やるじゃないか」と思ったのです。
タイミングや環境などいろいろなことが重なったのもありますが、何せあのプロ脚本家の三谷幸喜氏のような人の目にまで留まるほどでしたから、話題作ではありました。
ただまあタイトルからもわかるように、本作は系譜としては小林女史が手がけた名作「タイムレンジャー」や荒川氏の良作「デカレンジャー」と同じ警察モチーフの作品です。
さらに、その敵対する相手がボウケンジャーゴーカイジャーのようなピカレスクタイプなので、要するに「地球の運命」を賭けた戦いではない、本格的な「クライムアクション」となります。

そのため、大きなお友達人気はともかく子供人気の方が心配であり、案の定作品人気はかなり得られたけど玩具売上は大きく下がるといった結果だったようです。
これはもちろん「タイムレンジャー」の時にもあったことなのですが、本作はその過ちを繰り返すことになってでも起死回生の一手に出たのではないでしょうか。
同時に、それまでどこか自分に枷をかけていて良心的な部分のあった宇都宮Pもその枷を取っ払って「死なば諸共」の覚悟で勝負に出たことが作品を見ていると伺えます。
そうした作り手の並々ならぬ覚悟と決意は作品のクオリティに反映されており、ここまで画面に漲る気迫を感じたのはかなり久々です。

もう正直「スーパー戦隊シリーズは終わりかなあ」なんて思った私をまたもやシリーズに引き戻してくれるのですから、私はたとえ何があろうと今後スーパー戦隊と運命を共にしていくのでしょう。
行ったり来たりを繰り返しながらも、なんだかんだ「スーパー戦隊は好きだなあ」と思わせてくれた、そういう大きな「」を私の中に確実に芽生えさせたのが本作です。
そこまで評価させるくらいの作品であり、本作については是非真正面からしっかり論じていきます。

(1)「外的(=公的)動機」の極致VS「内的(=私的)動機」の極致

まずスーパー戦隊シリーズをとても真剣に深いところまで見ているファンならお気づきだと思いますが、本作のタイトルは単なる警察VS怪盗という凡百のクライムアクションものではありません。
本作のサブタイトルに隠されている真意は「外的(=公的)動機」の極致VS「内的(=私的)動機」の極致であり、私が初期から示唆してきたスーパー戦隊シリーズの本質を実に鋭く突いているのです。
スーパー戦隊シリーズとは基本的に「チームワーク」にあるとされていますが、戦いの動機は大きく分けて「外的(=公的)動機」と「内的(=私的)動機」の2種類があることを語ってきました。
そしてシリーズを追うごとに両者の動機は複雑化していき、時に両方の動機が等価値になることもあれば、逆に内的(=私的)動機の方が優先されることもあるということがあったのです。

たとえば職業軍人戦隊の「ゴレンジャー」「サンバルカン」「チェンジマン」「ジェットマン」「オーレンジャー」などは基本的に外的(=公的)動機、すなわち「人類は今何をしなければならないか?」で動いています。
逆に「ゴーグルファイブ」「フラッシュマン」「ライブマン」「タイムレンジャー」「ボウケンジャー」「ゴーカイジャー」などは内的(=私的)動機、すなわち「自分は今何をすべきか?」を動機としているのです。
そしてその両者のハイブリッドである「ファイブマン」「ギンガマン」「ゴーゴーファイブ」「シンケンジャー」「トッキュウジャー」は双方を等価値にした上で「両方を満たすにはどうすればいいか?」と向き合いました。
そうした様々な歴史の蓄積の中で本作が辿り着いたのは両者を思いっきりコントラストで対比させ、「外的(=公的)動機」の極致であるパトレンジャーと「内的(=私的)動機」の極致であるルパンレンジャーで対比させるのです。

これは一見したところナショナリズムとミーイズムの対比に見え、国家権力の象徴であるパトレンジャーの方が正ししそうですが、しかしこの頃に入るともはや国家権力や警察の権威が信用を失いつつありました
さらに「ONE PIECE」の海賊と海軍の関係性がそうであるように、国家権力であるはずの海軍が必ずしも正しいとはいえず、ならず者の海賊が間違いだともいえないくらい正義や善悪の境界が曖昧だったのです。
だからこそ本作はどちらが正しいのか、どちらが間違いかという永遠に決着がつかないであろう難題に真正面から1年をかけて取り組み、それ相応の答えを出すことに成功しました。
その答えが完璧かどうかは時の試練を経ないとわかりませんが、それくらい普遍的な要素に作り手が真剣に挑んだということであり、だからこそスーパー戦隊に興味がないプロの方の注目も集めたのでしょう。

実際、最終回まで見ても果たしてルパンレンジャーとパトレンジャーのどちらが正しいのかは全く決着がついておらず、作り手もあえてどちらが正しいのかという言及は避けています。
もちろん話の都合でルパンレンジャーの方がやや贔屓気味には描かれていましたが、年間の話をトータルで見るとルパンレンジャーとパトレンジャーの真の決着はついていません
これはおそらく、モデルにしたと思われる「タイムレンジャー」「デカレンジャー」「ボウケンジャー」「ゴーカイジャー」、そして「ONE PIECE」への配慮もあったでしょう。
しかし、真の目的はそこにはなく、あくまでも視聴者である我々に改めて「正義とは何か?」「戦隊とは何か?」「どちらが正しいのか?」を考えさせることにあったのだと思われます。

(2)両者を自由に行き来する男・高尾ノエル

そんな風にナショナリズムとミーイズムの極地である両者をただ対比させるだけではなく、もう1つの仕掛けとして両者を自由に行き来する男・高尾ノエルの存在が描かれています。
この男は警察と怪盗の二面性を持ち合わせ、話の都合や局面に合わせて使い分けるという、まあ誤解を恐れずいえば両刀使い(バイセクシャル)みたいな人物です。
相容れないはずの2つの要素をその場に応じて使い分けるのですが、これだけだったら単なる人格分裂症ないし「都合のいい男」という風になっていたでしょう。
しかし、本作ではそうではなくやはりノエル自身の正体や最終的にどちらにつくのかといったことを厳しく問い続けるように話が作られているのです。

ノエルの正体は後述するドラグニオの因縁とも関連しているのですが、異世界の住人の末裔であり、ある意味ルパンレンジャーともパトレンジャーとも所縁がありません
しかし、大きく判明しているのは彼が両者を行き来しつつ動いているのはあくまでも全くのミーイズムであるということであり、どちらかといえばルパンレンジャーに近いでしょう。
だから、心の底からの信用・信頼を築くという点においては怪盗側の人間であるといえ、この辺りもまた本作がルパンレンジャー贔屓であるともいえる理由です。
ただ、ノエルに関してはぶっちゃけた話、個人的には「詰めが甘いキャラクター」であり、結局どっちつかずのまま中途半端に終わってしまった感じがあります。

彼に関しては言ってみれば「タイムレンジャー」でいうところのタイムピンク・ユウリをさらに捻った感じで、本作の実質のラスボスであるドラグニオとの因縁を深く持った男でした。
そしてそのキャラクターの結末に関してはぶちゃけ実質の最終回である#44で結実してしまっていて、そこから先を開拓できなかった印象さえあります。
ここは先達であるユウリを超えられなかった部分であり、ユウリが当初の目的を果たせずドルネロが死んだ後一旦腑抜けになりましたが、それでも竜也との恋愛が残っていました。
だからこそ、終盤では自分の判断で竜也へ最後の思いを伝えるために大消滅を止めに20世紀へと飛ぶ決断をするのであり、そこが動機となっています。

しかし、ノエルに関してはドグラニオの逮捕以降でうまくその先の道を確立できなかった印象があり、変身前・変身後共にキャラクターを100%完結できなかったきらいがあります。
タイムレンジャー」はその辺り、各個人のキャラクターのドラマを最初から用意周到に仕込んだ挙句、警察としての任務が完了しても決してそこで終わりにはしませんでした。
一方本作のノエルやパトレンジャーに関してはその辺りの「最終的にどういう姿になるのか?」の結末が見えないまま終わってしまった感じがあります。
その部分はルパンレンジャーの魁利が代表として担ったのでしょうが、どうせなら小林女史のように満遍なく扱って欲しかったところです。

結局こういうわずかな差、しかし決定的となる最後の詰めの部分の差で香村氏が今一歩小林女史を追い越せないのだなというのを実感します。

(3)ドグラニオの造形とその末路

さて、本作最大の強敵といえる存在はドグラニオだったわけですが、個人的にはこのドグラニオがどうしても完全なドルネロの下位互換にしか見えなかったのですよね。
タイムレンジャー」の評価では語り損ねましたが、ドルネロは一見ドライに見えながら、その実身内のことは実の親のように可愛がる繊細な親分でした。
組織経営も抜群でしたし、最後まで決して話のコマに成り下がることなく脅威として立ちはだかり続け、ユウリの復讐を満たさせるようなことはしていません。
彼の末路はそうした非情になりきれない甘さが仇となって、完全にトチ狂ってしまったギエンに殺されてしまうことになったのです。

万が一、ここでドルネロがギエンを蜥蜴のしっぽ切りで損切りしていたら死なずにリラのように生き延びられたかもしれませんが、彼はそうなりませんでした。
ドグラニオはその点ドルネロほどの器がないやつとして描かれており、最終的にパトレンジャーが逮捕できるレベルの犯罪者として描かれているのです。
そのため設定に無理はないのですが、個人的にはどうも「ジュウオウジャー」のジニス様に続く失敗をまたしてしまったという印象があります。
つまり、最初から逮捕できるレベルの敵として、ハードルを下げて設定されており、「そりゃそんな敵逮捕できて当然」と思わせてしまいました。

だから、どうしてもドグラニオの逮捕に至る流れは今ひとつしっくり来ず、もっとドルネロレベルの大物として描いて欲しかった印象があります。
どちらかといえば、ドグラニオの造形はドルネロよりもゼイハブや血祭ドウコクのような「身内以外には冷酷」という感じの造形でした。
まあジニス様よりはボスとしての格という部分で圧倒的強者のオーラやカリスマ性があって、好きだったのですけどね。
だからこそ、もっとその辺りをきちんと描けていればうまく行ったのではないかなあと思いますが、ここは無い物ねだりになってしまうか。
何れにしても、闇の皇帝ゼット以来の個人的ヒットだっただけに、もっと脅威を描き切ってくれればよかったとは思います。

(4)「スーパー戦隊シリーズとは何か?」を考える作品

そんな本作ですが、作品全体を通して問うていたのは「スーパー戦隊シリーズとは何か?」だったのではないかということです。
どうしても、スーパー戦隊シリーズというと「地球の平和を守るために、チーム全員が決断してみんなでGoする作品」と思われています。
しかし、本当にただそれだけのシリーズだったら40作以上も続くわけがなく、本当にただの「団結」「地球の平和を守る」シリーズかを問うたのです。
結果としてルパンレンジャーもパトレンジャーも、立場が違うだけであり双方に正しく、どちらも疎かに扱ってはいけません。

集団主義かつ組織の外力に屈してしまいがちな私たち日本人はついつい外的(=公的)動機で動くパトレンジャーが正しく見えがちです。
しかし、だからといって義賊として動いているルパンレンジャーが本当に間違いであるといえるのでしょうか?
その辺りを決して疎かに扱わないために、本作はバランスとしては贔屓になってもルパンレンジャーを贔屓気味に描いています。
この辺りはシリーズ全体の蓄積が可能にした部分ですが、改めて戦隊ファンの私でさえも深く深く考えたことです。

もちろんルパンレンジャーは世間的には悪党とされる存在であり、それは本人たちは決して否定していません。
しかし、だからといってパトレンジャーが国家権力を笠に着て無自覚に人を裁くようなことをしていいわけでもないのです。
デカレンジャー」のジャッジメントシステムに対して私が覚えた違和感をようやくここで解消してくれました。
だからこそ14年越しに荒川氏の弟子筋である香村氏が「どちらも大事である」ことをいってくれたのは大きいのです。

決着はつきませんでしたが、それでも「ギンガマン」「ゴーゴーファイブ」とは別の形で「外的(=公的)動機」と「内的(=私的)動機」に向き合ったのは大きいでしょう。
本作はその意味でシリーズがないがしろにしていた部分と丁寧に向き合い、現段階で出しうる答えを出すことには一定の成功を見たと私は思います。
だからこそ本作は改めて「スーパー戦隊シリーズとは何か?」を我々に考えさせるほどの迫力を画面に持ち得たのではないでしょうか。

(5)「ルパパト」の好きな回TOP5

それでは最後にルパパトの好きな回TOP5を選出いたします。

  • 第5位…#37「君が帰る場所」

  • 第4位…#15「警察官の仕事」

  • 第3位…#32「決闘を申し込む」

  • 第2位…#21「敵か味方か、乗るか乗らないか」

  • 第1位…#44「見つけた真実」

まず5位は4クール目の入りとして、ルパンレンジャーとパトレンジャーの双方にとって大事な「居場所」をはっきり明示しため異変です。
次に4位は「パトレンジャーとはどんな戦隊か?」を定義した回であり、特にパトレン1号のキャラが固まった名作回でした。
3位は警察と怪盗が果たして本当の意味で信頼や信用を築けるのかどうかを真正面から膝下えい描いてくれています。
2位はノエルの初登場回として、かなりの胡散臭さとともに戦隊史に残る爪痕を残してくれた傑作回でした。
そして堂々の1位は本作の実質の最終回といっても過言ではない傑作回であり、もうここで番組を終えてくれても満足の逸品です。

こうしてみると、山場の盛り上がりはしっかりできており、よくできていますね。これでラストのまとめ方さえ完璧だったらなあと。

(6)まとめ

本作は前作の大失敗から、改めて「スーパー戦隊シリーズとは何か?」を問いかける大胆な挑戦に1年をかけて取り組みました。
結果として玩具売上は伴わなかったものの、文芸的にはかなり深いところにまで切り込んだ作品です。
また、「ジュウオウジャー」では「物足りねえよ!もっと爆発させろ!」と思った不満も本作では見事に爆発させています。
ラストのまとめ方がイマイチ個人的にしっくりこないものだったのですが、実質の最終回はあるので、納得いく出来でした。
総合評価はA(名作)、シリーズ全体にしっかりと再考を迫ってみせた力作であることは間違いありません。

  • ストーリー:A(名作)100点満点中80点

  • キャラクター:A(名作)100点満点中85点

  • アクション:A(名作)100点満点中85点

  • カニック:C(佳作)100点満点中65点

  • 演出:S(傑作)100点満点中95点

  • 音楽:A(名作)100点満点中80点

  • 総合評価:A(名作)100点満点中82点

評価基準=SS(殿堂入り)S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)X(判定不能)

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コメント

1
ゆっちー
ゆっちー

結構Xなり掲示板で言われている感じですが、香村氏の場合作家性として「悪役の独自の美学や信念」というものに否定的な側面というか「そういうのを全て剝ぎ取った上で惨めな末路を迎えさせる」という傾向があるかと。
↓これは某掲示板で挙げられていた主な脚本家のスタンスに対する分析
・悪人の最期にやってしまったことのケジメをつけさせるのが井上敏樹
・悪人の最期に自分がやってきたことでは本当に欲しかったものが手に入らないことを悟らせるのが小林靖子
・悪人の最期に誇っていた矜持や美学を一切否定した上で全てを奪って地獄を味あわせるのが香村純子

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