【日本郵便「不適切点呼」問題】現場の局員が明かす形骸化する点呼の実態「アルコールの異常値が出ても“信用しているから大丈夫”と放置」「基準値になるまで水を飲み続けた」
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配達員の酒気帯び状態での勤務を見逃してきた日本郵便の「不適切点呼」問題。全国の郵便局で違反が常態化していたことを受け、国は日本郵便の運送事業許可を取り消す処分を下した。実はこの重い処分続き、さらなる処分の可能性が取り沙汰されているというのだ──。
「基準値になるまで水を飲み続けて…」
国土交通省関東運輸局が日本郵便に対し、一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す処分を出したのは6月25日。これにより同社は、集配の拠点間の輸送や大規模局での荷物収集を担う約2500台のトラックやバンが5年間、使えなくなる。 〈郵便物および荷物(ゆうパックなど)のサービスについては、ご利用いただいているお客様にご迷惑をおかけすることのないよう、引き続き確実かつ適切に提供してまいります〉 処分に先立って日本郵便はこんなリリースを出したが、現場の局員の見方は異なる。愛知県内の郵便局で働くA氏はこう話す。 「私が働く郵便局では乗務後の点呼でアルコールの異常値が検出されても『信用しているから大丈夫』と問題視せず、放置されていました。点呼の未実施、記録簿の改竄が常態化していた。基準値になるまで水を飲み続けて何度も検査を繰り返すこともあったと聞きます。人手不足が深刻化するなか、上の人間は点呼の形骸化を完全に黙認してきた。今後も適切な郵便サービスを提供できるとは思えません」 日本郵便の調査では、全国の75%にあたる郵便局で不適切な点呼があった。さらに問題発覚後の5月も全国の郵便局で計29件の酒気帯び運転が確認されており、郵便局の変わらない体質が明るみに出た。
処分はこれでは終わらない
現場を知るA氏はさらなる処分を心配する。 「今後、配達用の軽自動車(軽バン)の許可まで取り消されると、郵便業務が成り立たなくなる恐れがあります」(A氏) 日本郵便は荷物運送サービスの「ゆうパック」を支える配達用の軽バンなど3万2000台を保有するが、A氏が指摘する通り、これらの車両にも処分が広がる可能性が取り沙汰されている。 「国交省は軽バンの点呼についても監査を続けており、不適切な点呼が確認されれば、使用停止などの罰則が科されることになるでしょう」(社会部記者) 国交省「令和5年度宅配便(トラック)取扱個数」によると、宅配便のシェアは最大手がヤマト運輸の宅急便(46.7%)で、以下に佐川急便の飛脚宅配便(27.9%)、日本郵便のゆうパック(20.5%)が続き、大手3社で全体の95%に至る寡占状態となっている。 その一角を占める日本郵便に対する今回の処分の影響は、日本の物流網全体に及ぶだろう。 関連記事《【摘出レポート】日本郵便「不適切点呼」問題での重大処分は「ゆうパック廃止」への布石か 財務省・日本郵政・郵便局長会の利害が一致、狙いは物流業からの撤退による赤字削減》では日本郵便への重大処分を「ゆうパック廃止」の布石にするべく政府、財務省、日本郵便、郵便局長会の利害が一致した内実、それが消費者にどのような不利益をもたらすのかについて詳しく解説している。 ※週刊ポスト2025年7月18・25日号
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